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第1話 どうせ何も判りなどしないのだ

「何だと! アンタ何言ってんのか分かってんのか!? 」




天井が高くてただっ広い食堂に大声が響き渡る。




ここはローザネイ王国の首都カルディナの貴族街の一角。


冒険者パーティ『カルディナの盾』に与えられた屋敷。






この国では、国がその功績を認める冒険者パーティーには


国王陛下直々にパーティー名が与えられ、


王都にパーティー専用の屋敷が与えられる。




その中でも俺達『カルディナの盾』に与えられた屋敷は


一番大きく、たった5人の所帯に対して


聖騎士団30名ずつが詰める騎士団宿舎の一棟と


同じ広さを誇っていた。




それだけ、このパーティーに対する国の期待は大きいという事だろう。


その事も俺に違和感を抱かせる一つの要因だったのだが。




とはいえ、そんなパーティーに所属している栄誉を、


自分から抜けようというのだ。


それはイグルドが大声を出すのも仕方ないのかもしれない。




先程より少し声を張って、俺はずっと言いたかった言葉を口に出した。






「もう一度言う。俺はパーティーを抜けさせてもらう」






パーティーの治癒術師で『聖女』とも呼ばれているラノアは


突然の状況に対応できず、オロオロとしている。






先ほど大声で怒鳴ったパーティーの最年少、イグルドは


相変わらず全く意味が分からない、とでも言いたそうな


呆れたような顔つきで先程と同じように叫んだ。




「おいおい、考えろよ?王国お墨付きの冒険者だぜ? 


 この豪邸も自由に使えて報酬もたんまり貰える。


 その上もうすぐバルゴさんが聖騎士として叙勲を受ければ


 名実ともに王国一の冒険者パーティーだ!!


 そこらの金持ち貴族なんぞよりずっと上なんだぜ? 


 この平民や下級貴族出身の集まりの俺らが、だぜ? 


 それを蹴ってまでパーティーを抜けたいなんて


 いったい何が不満なんだよアンタは?」




損得だけで物事を考え、自分に利をもたらすと信じて疑わない


パーティーの中心人物・バルゴには一生ついていくと豪語し、


そのバルゴと同い年で同じパーティー創設期からのメンバーである


俺の事は「アンタ」と呼んで憚らないこの血気盛んな少年には


自分の苦悩と葛藤など話しても伝わらないだろう。




話しても無駄だ、と重い口を開くべきか迷っていると


隣に座っていたルビィが先に口を開いた。




「イグルドの言い分には全然同感はできないけど、


 何が不満で抜けたいって言ってるのかぐらいはせめて


 教えてくれても良いんじゃない?


 何かが上手くいってないから、抜けたいって事なのよね?」




そう言われて、話すべきか言葉に詰まった。




確かに、このパーティーは傍目には上手くいっている。






軍隊での集団戦闘にしろ大型モンスターの討伐にしろ


全身を重装備フルアーマーで固めた前衛の聖戦士が敵の攻撃を受け止め


後方から魔法や矢を放ちまくって敵を殲滅する戦い方を


最も重視しているこの国においては、


このパーティーの戦術はまさに理想形と言っても良かった。




聖戦士でパーティーリーダーのバルゴが戦線を維持し


ラノアが治癒術と加護の魔法でそれを支える。


そのスキをついて後衛の3人が敵を切り崩す。




そうやって帝国軍の侵略からも大型モンスターや魔物の群れからも


勝利を積み上げていく姿に人々は酔いしれ、俺たちをこう言った。




『聖騎士バルゴと聖女ラノア率いる、グルド地方の守護者』




そして名声が積みあがるうちに『地方の守護者』の看板は


『王国の守護者』となり『王国の盾』となり


国王陛下からの庇護を受けるまでになった。


来月にはバルゴが冒険者としては前例のない


『聖騎士』としての叙勲を受け、爵位持ちとなる。


誰が聞いたとしても間違いないサクセスストーリーだ。




だがその影で起こっている事など、誰が気付いているだろうか?


一緒にやってきたパーティーメンバーでさえも。




この俺が、どんな思いでこのパーティーを続けてきたのか。






真っ先に敵の隙を切り崩しにかかる役目の俺に


どれだけの身の危険が降りかかっているのか。






きっと、わかりなどしないのだ。

初投稿作品としての短編になります。


書き方など誤記がありましたら教えていただけると嬉しいです。


また応援や感想などいただけましたらとても励みになります。


どうぞよろしくお願い致します。


※機能など分かっておらず昨日、連載予定を一話完結として

投稿してしまいまったため再掲載です。評価頂いた方には

大変申し訳ありません。

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