第四十八話 研究所
この作品は一話ごとに登場人物や時系列、舞台が変わります。それをご理解の上でお読み下さい。
記録
二〇三一年、八月十四日。
午後 十一時 四十分頃、研究中の被験体Nが実験室から逃走。職員の制止を振り払い、研究所から脱走。行方を晦ます。
八月十五日。
午前 八時、捜査を打ち切る。公表はせず、この事件は研究所と一部の対策課のみに知れ渡る。
八月十六日。
実験環境に問題があったことを受け、厳重な警備と施設の強化を促される。孤児院組に知れ渡らないよう、施設のメンテナンスと称して、その日のうちに工事が始まった。
八月二十四日。
内通者が居た可能性が、ある研究員によって明かされた。内通者は、既にこの仕事を辞めていた。調べたところ、戸籍諸々全てが偽造されたものであったことが分かった。しかし、そんなものをこの施設に通すわけがない。まだ、この施設には他の内通者が居ると思われる。
八月三十日。
事故で、記憶を失った少女の人外化に成功。後天的な人外化実験の成功は、今回が初めてだ。貴重なデータとしようとしたが、一人の研究員のミスによって孤児院に送られることとなった。その研究員には処分が下された。一度決定したことは取り消せない為、あの少女は監視するだけの身となった。
二〇四二年 記載
あの少女が孤児院から脱走した。彼女は自由を求め、私の背中を求めた。
しかし、歩む道は違うだろう。ヒーローとは、勝者が名乗るものである。私は、あの時既に、敗北者となっていたのだ。少女が追い求めるものは、その対極となる。いずれ、この時代を変えるだろう。
この記録は、決して誰に当てたものではない。私自身の、私だけに閲覧が許される。自己満足の記録でしかないのだ。
しかし驚いた。上からの指示で、記録などは全て処分することが決定していたはずだ。それなのに、前任者の記録が残ったデータがあるとは。それほどまでに、昔から変わらずこの研究所は杜撰な管理体制だったのだろう。聞いて呆れる。
あとがき
どうも、焼きだるまです。
昨日、今年初めての蝉の鳴き声を聞きました。夏が始まった合図がしましたね。ずっとクーラーの効いた部屋の中に居たいです。では、また次回お会いしましょう。




