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こちら、人外対策部です  作者: 焼きだるま
第一部 前日譚
49/60

第一話 帰ってこない 裏

この作品は一話ごとに登場人物や時系列、舞台が変わります。それをご理解の上でお読み下さい。


 ベッドの上で、僕は今日も新しい朝を迎える。


 アラームに起こされ、僕は起床する。朝は嫌いじゃない。朝は、僕がまだ生きていることを証明してくれる。


「なんか長くなりそう」


 ◇◆


 歯を磨き、顔を洗い朝食を取る。焼いた食パンには、苺のジャムを塗る。冷蔵庫にある牛乳は、そろそろ無くなりそうだ。


「買い足さなきゃな」


 そんなことを思いつつ、朝食を取ると僕は支度をする。牛乳は飲むと、身長が伸びるらしい。伸びた試しはないけど。オペレーターにはバカにされた。


「……まだ伸びしろは……ある……はず」


 ◇◆


 ――職場に就くと、午前八時丁度に仕事を開始する。


 僕の担当区域は、住宅街が多い。そして、一人での巡回が許可されている。オペレーターも固定だ。


「おーい」


 オペレーターからの一言で、僕はハッとなって返事する。


「何?」

「いや、なんか考え事でもしてた?」

「あぁ、ぼーっとしてた」

「眠いの?」

「いや、うん眠いかも」

「珍しい」

「西米はよく、あくびをしているね」

「俺は相手が決まってるからね。あくびをしていても、叱られることはない」

「上司には叱られるんじゃないの?」

「残念ながら、今日は休みだ」

「じゃあ、僕が叱ってもいいかな?」

「瑠花の怒る感じは、あんまり怖くないからいいよ」

「キレそう」


 ――瑠花と呼ばれた隊員は、不満そうな顔をしていた。


 髪は短く童顔で身長も一四○センチに届くかどうか。公安の隊服に黒のコートを羽織っており腰ベルトの左には片刃のナイフ、右にはオートマチック式の拳銃ともう一本のナイフが装備してあった。


 空は晴れている。瑠花は今日も、人外対策部エリート隊員としての仕事を続ける。


 ◇◆


 今日は特にこれといったこともなく、まもなく僕は退勤時間となる。


「瑠〜花ちゃ〜ん! 今日飲みに行かない?」


 本部へと戻ろうとするのを引き止めるように、八島陽咲(やつしまひさ)が凭れかかるように僕に絡み付いてきた。


「遠慮しておきます。明日も仕事がありますから」

「え〜、ケチ〜」

「そうだぞ、瑠花は俺と飲みに行くんだぞ」

「西米〜、お前が飲みに付き合え〜」

「遠慮しておきます。明日も仕事がありますから」

「急に瑠花ちゃんみたいになるのやめなよ」


 ロングの赤い髪に、一七○センチほどの身長。黒のニットに、明るめな茶色のジャケットを着ている。デニムのショートパンツの下は、モデルのような長い足が目立つ。


 八島の服は、隊服やスーツでもなく、人外対策部の隊員でありながら私服だ。


 実を言うと、私服の隊員は何人か居る。病院などの巡回に当たる隊員は特に多い。八島も、例に漏れず病院巡回の一人だ。いつもの時間に仕事を終えては、僕の帰り道に現れる。


「も〜飲む気分だったのに、いつ死んでもおかしくない身同士なんだから、楽しめる時に楽しまなきゃ損だよ?」

「では、楽しめる時に飲みましょう」

「じゃあ!」

「今日は違います」

「ぶー」


 八島の飲みには、相応の覚悟が必要だ。明日を潰す勢いでないと、こちらが死んでしまう。


「仕方ないな〜、じゃあ私はもう帰るよ」

「? 本部には行かないのですか?」

「実は今日、少しだけ早くあがることになってね? 先に本部行って退勤してからここに来たの」


 すると、通信先の西米が言う。


「ここに来るよりも寝た方が有意義でしょ、それ」

「西米くんも瑠花ちゃんと話すの楽しいでしょ? だから私もわざわざ来たの」

「それはどうも、是非お帰り下さい」


 僕は笑顔でそう言うと、八島はしょんぼり顔で諦めて立ち止まり、帰路の方を向いた。


「仕方ないから大人しく帰るわ。どっかのタイミングで飲みましょ〜」


 背を向けたまま、八島は手を軽く振っていた。


「考えておきます」


 僕も手を振るが、その姿は届いていないだろう。


「驚いたな」

「何が?」

「今日はなんだか、長くなる気がしたんだ。無理やりにでも飲みに誘われるかと思ったけど、すんなり諦めてくれた」

「瑠花の勘は当たるからなぁ。勤務時間ギリギリで仕事が舞い込ん――」


 西米の声が途切れる。


「西米?」

「瑠花の勘はやっぱ怖いわ」


 その一言で察した。


「人外事件?」

「うん」


 やっぱり、今日は長くなりそうだ。


 ◇◆


 ――特察課からの情報を頼りに、僕は住宅街へと戻る。僕のところに指令が来たのは、ちょうど担当区域に人外化したと思われる男性の家族が居るからであった。


「特察課は早いね〜」


 西米がそう言う。


「たまたまだよ。多分、身元が分かるってことは余程の初期段階で襲われているね」

「小川さんって人も、運がないね」

「仕方ない。いつどこで人外が発生しても、決しておかしくはないから」


 そんな会話をしていた時、空から雫が落ちる。


「……まいったな。晴れって聞いてたから、レインコートなんて持ってきてないのに」

「もう十一時だしね〜」

「もうそんな時間なのか……」


 しばらくすると、雨は本降りになる。瑠花は諦めて、巡回を続けた。


 十一時四十分、向こうから、一人のサラリーマン姿の男が走ってくるのが見えた。


 僕は、通信機に向けこう言った。


「対象を確認。黒のスーツに、黒の手提げカバン。三○代前半で、身長は一八○センチほど。髪は黒で、血が付着している。こちらに走ってきている。額左側に亀裂を確認。爪は伸びているが、まだ完全体では無い模様。攻撃の許可を」


 西米からの許可が出ると、僕はベルトの右側から、一本ナイフを左手で取り出し構える。


「人は居ないと思うけど、万が一を考えて下手に発砲はできないな、仕方がない」


 早く終わらせて帰りたい。長引いては風邪を引きそうだ。

 あとがき

 どうも、焼きだるまです。

 第一話を見直しながら書いていたんですけど、修正かけてもキリがないくらい酷い書き方ですねw

 近いうちに、第一話も更に読みやすくできるよう加筆修正を加えたいですね。では、また次回お会いしましょう。

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