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こちら、人外対策部です  作者: 焼きだるま
第一部 前日譚
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第四十一話 いつもの五人

この作品は一話ごとに登場人物や時系列、舞台が変わります。それをご理解の上でお読み下さい。


 人外対策部の隊員に、俺たち五人は憧れた。小学校から、俺たちは散り散りにならずに高校生になった。


 いつも五人で、苦楽を共にしてきた。家族以外で会うのはいつも、この五人だった。


 俺たちはある日、人外事件に巻き込まれた。俺たちは力を合わせて、他の人に怪我人が出ないようできることをした。


 メンバーの一人が、人外に襲われそうになった。その時、人外対策部の隊員が俺たちを助けてくれた。


 人外と戦うその姿を見た時。俺たちは、人外対策部の隊員になることを決めた。


 人外対策部になるには、専門知識を学び、戦闘訓練と試験を経て、人外対策部の隊員となれる。


 試験は二つある。オペレーター試験と、実戦での試験だ。勿論俺たちは前線で戦う隊員になるため、実戦試験を受けることにした。


 みんな、無事に試験まで辿り着くことができた。今まで散り散りになったことなんてない。悲しいことに、試験の場所はそれぞれ違ったが、これも一時的なもの。今回もみんなで隊員になれるのだと、思っていた――


 ◇◆


 試験が終わると、俺たちは気付いた。一人、居ないのだ。


 実戦試験は、隊員が側についているがそれも死なない訳ではない。この試験では少なくとも、毎回一人以上は犠牲者が出ていた。


 犠牲者リストの中に、あいつの名前があった。


 ◇◆


 隊員となって3ヶ月。俺たちはそれぞれ違う場所に分けられた。そして、その日俺は、メンバーの一人が死んだことを聞かされた。


 これで、残りは三人。バラバラになることなんてなかった俺たちは、簡単にバラバラになり、二人も失った。これが現実なのだと、俺たちは気付き始めた。


 五人の中で唯一の女であったあいつは、この仕事を辞めた。


 残り二人となり、久しぶりにあいつと再会した。最近は会えていなかったが、元気そうだった。あの頃の話をした。だけど、もうここには二人しかいない。


 幸い、俺たちはバディとなった。半年しか経っていない隊員同士でのバディは、人外対策部でも珍しかった。それだけ、俺たちの実力が認められたということだ。


 ある日の出動。俺たちはいつも通り人外と戦い、事件を解決していた。一度本部に戻ると、俺たちはあいつが死んだことを聞かされた。


 隊員を辞めたあいつは、今日人外事件に巻き込まれて死んだと。人外は、今も逃走中だと。俺たちは悲しんだ。俺はまだマシだ。あいつは、ずっと片想いだった女が死んで気が狂いそうだったろう。


 それでも、無慈悲にも仕事は俺たちを待ってくれなかった。休む間もなく、俺たちはまた人外事件の通報を受け、出動することになった。


 あいつの心はまだ、完全に立ち直れてはいなかった。車で向かい、いつも通り人外と戦う。だけど、予想とは違い、人外はエリート隊員でなければ太刀打ちできない相手であった。


 俺は一度、その場を退散しようとした。だけど、あいつは逃げなかった。その人外が、あいつの仇であったからだ。


 俺は気付かなかったが、あいつは分かっていたらしい。あいつは立ち向かった。だけど、すぐに肉片となって俺の下に戻ってきた。


 俺は、尻餅をついた。何も考えれなくなった。これが現実なのだと。いつも五人だった俺たちは、気付けば一人になっていた。


 全てが終わった。俺ももうすぐ終わると思った。


 ◇◆


 俺は死にきれなかった。あと少しのところで、エリート隊員によって命を拾われた。拾われたところで、俺に残っているものは何もない。


 俺たちは、いつまでも夢を見ていた。心は子供だった。子供のままだった。現実はこれだ。これが現実なのだ。全てが終わり、何も残らない。


 俺は、仕事を辞めた。


 酒を飲んで、路上に座っている。仕事をする気にもなれなかった。親に寄生しているだけの……寄生……そうか……俺は、そういう意味だけなら人外になってしまったのだ。


 ◇◆


 こんな生活を、いつの間にか俺は10年も続けていた。親も、いつの間にか俺を見放していた。


 迎えは、まだ来ない。いつも五人なら、みんな一緒に死ねれば一緒だっただろう。だけど、俺は一人だ。


 路上に横たわった。人は居ない。月明かりだけが、俺を照らしてくれていた。


 足音が聞こえた。俺の前に、ワンカップを置き女は言った。


「お前も、一人なんだな」


 聞いたことのある声だった。それは――あの時、俺を助けたエリート隊員の声。俺は、女の顔を見た。


 俺を助けたあの時は、まだ30代だったろう。となると今は40代。なのに、それを思わせないほど若く、美しい人だった。


「誰も……迎えに来ないんだ」


 俺は、枯れた声で言った。


「私もだ……どうしてだろうな。今でも昔の自分が愚かであったと、強く後悔している」


 女は、俺の隣に座り、ハイボールを飲み出した。


「その酒は墓参りようなんだが、今日はお前にやるよ。久しぶりの、再会の証だ」


 女は、俺のことを覚えていた。その人は、隊員だった頃何度か行動を共にしたことがあった。


 俺は、涙が溢れた。俺たちはいつも五人だった。それは、仲が良いからだが、他に居ないからでもあった。


 初めて、家族以外で、五人以外で俺のことを覚えていてくれた。話を――聞いてくれた。


 ◇◆


 俺は、人外対策部の隊員に復帰した。羽田さんは、隊員を辞めてエリートオペレーターになっていた。悲しいことに、担当オペレーターは違った。というか、普通級の隊員にエリートオペレーターが付くことは少ない。でも、今でも時々、一緒に飲みに行く。


 俺の周りには、五人は居ない。だけど、たまに騒がしい仲間と、時々恩人が居てくれた。


 羽田さんの他にも、何人か席に居た。一人の男が、羽田さんと二人きりの飲みではないことに涙していた。


 確かに羽田さんは美人だが、こいつは年齢を知らないのだろう。まだ若いのに……でも、不思議と笑いが出る。俺も、昔惚れた女が50代だったことがあった。美魔女は居るものだ。こいつもそれを今後知っていくのだろう。


 夢はない。今、この小さな楽しみが続くことだけを――ただ祈っている。

 あとがき

 どうも、焼きだるまです。

 書いててすんごい懐かしく感じました。1ヶ月半も前になるのか……早いなぁ。何が1ヶ月半も前になるんだって?まぁ、そこは考察してくれよ。多分簡単だから。では、また次回お会いしましょう。

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