表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちら、人外対策部です  作者: 焼きだるま
第一部 前日譚
38/60

第三十六話 人と人外

この作品は一話ごとに登場人物や時系列、舞台が変わります。それをご理解の上でお読み下さい。


 「役立たず」そう呼ばれたのが、俺の人生だ。


 生まれた時から俺は、大した才能も無ければ努力もできなかった。親にも罵られ、友人には陰口を。俺に居場所はなかった。


 恨んだりもした。だが、それよりも俺は逃げ出すことを優先した。それでも、俺はどこに行っても役立たずであった。


 気が付けば、ゴミ箱を漁り食べられるものを探す日々。人生なんてどうでもよくなっていた。ビルの隙間に居る、ただの浮浪者。それは、俺の人生そのものを表していた。



 ――その日は、やることもなく河川敷を歩いていた。あわよくば、食べれる雑草でも見つかれば良い。


 ジャンパーが無ければ、冬の寒さには耐えられなかった。これを見つけたのは、最近では一番のラッキーだ。


 冬は食べられる物も少ない。夏場であれば、食べ物はそこいらに落ちている。世の中の人間は、虫だと言って嫌うが、俺にとっては貴重な食料だ。


 しかし、それも冬場では見つからない。ノビルなどは見つけられたが、収穫はその程度だ。


 そのまま俺は、橋の下へと辿り着く。そこは、俺が休憩に使っていた場所だった。だが、そこには――弱った少女が体を丸めていた。


 段ボールを下に敷いて、ワンピース一枚のみ。まだ幼いそれは、こちらを死んだような目で見つめる。


 ろくでもない浮浪者なら、相手がガキだろうとおもちゃにしたかもしれない。どうやら、訳ありの雰囲気だ。弄んでもバレはしないだろう。


 だが、俺が取った行動は、ジャンパーをかけることだった。


「……え?」


 少女は目を丸くしていた。見れば、体は傷だらけのボロボロだ。俺も、子供の頃は体がボロボロだった。だからか、放っておけなかったのだろう。


「風邪引くぞ」

「……おじさん、私を殴らないの?」


 どうやら、ろくでもない目に遭ったようだ。


「家出か?」

「……違う」


 ならば捨て子か?と聞いたが、それも否定されてしまった。


「ならばお前はなんなんだ?」

「……お父さんとお母さんは死んだ」


 親が死んで一人?ならば、本来引き取る人間が居るはずだ。それが居ないとは?


「そうか、どうして一人で居る?」

「一人で居ないと……怖い人たちに殺されちゃう」

「怖い人たち?」


 すると、少女は言った。


「うん、人外を殺す怖い人たち」


 少女が何を言っているのか、俺には理解できなかった。薬でも飲まされたのだろうか。


「人外対策部が?あいつらは人間を殺さねえよ」

「違う」


 少女は立ち上がる。


「私は、人外なの」


 その時、少女の左腕が変形する。だが、俺は怯みもしなかった。


「そうか、俺を殺すのか?」

「怖くないの?」

「役立たずの人生に未練はない」


 俺の人生に価値はない。あるとしてそれは、初めて役立たずでなくなった時だけだ。


「……そう」


 少女の腕は変形を止め、元に戻る。それを見て俺は気付く。


「お前……寄生虫に乗っ取られてないのか?」

「……分からない……私は……なんでこうなっちゃったの?」


 そもそも、ここまでボロボロなのも謎だ。


「体の傷は人外対策部につけられたのか?」

「ううん、怖いお兄さんたちに虐められた」

「そうか」


 この少女は、命の危機でも人を殺さなかった。どうやら、俺の知っている人外とは違うらしい。すると――少女のお腹の虫が鳴く。


「……」

「腹が減ってるのか?」

「うん……」

「……人外は、普通の食べ物は食べるのか?」

「食べれるよ」


 どうやら、自分を食わす必要はないらしい。俺は、さっき取ったノビルと、カップラーメンを取り出した。


 俺も、丁度昼食を取ろうとしていたところであった。ゴミ箱から見つけた、奇跡のカップラーメン。久しぶりのご馳走は、この少女に取られる。


 火を起こし、川の水を軽く濾過してから沸騰させカップラーメンに入れる。


 俺はノビルを火で炙り、そのまま齧り付く。ノビルはネギの仲間だ。焼くだけしかできなかったが、食べれる物には変わりない。何も入らないよりマシだ。


 そんなこんなで、カップラーメンが完成する。箸は、近くに生えていた木の枝を貰った。苦味はなかったので毒ではない。


 出来上がったカップラーメンを、少女に渡す。


「おら、食え」

「――!!」


 少女は辛抱たまらんといった表情で、箸を手に取りラーメンを啜り出す。少女の顔は、幸せの絶頂といった表情をしている。


「うまいか」

「おいひい!」

「そうか」


 そう言うと、俺は残りのノビルを食べる。


「おじさん、食べないの?」

「俺は草でいいよ、菜食主義なんだ」

「おじさん嘘つき、それならカップラーメンなんて持ち歩いてない」


 勘の鋭い少女だ。冗談だから仕方ないが、それでも悪くはない。


 少女は箸の持ち手を俺に向けた。


「おじさんも食べないと、お腹空くよ?」

「だから今、草食べてるだろ。それに子供はちゃんと食わ――」

「おじさんだってガリガリだよ?」


 確かにその通りだ。ここ最近、まともに食べ物なんて食べていなかった。だから、カップラーメンを見つけた時は喜んだものだ。


 それでも――俺はその箸を受け取らなかった。


「いいから、俺の分まで食――」


 その時、口の中にラーメンを掴んだ箸を突っ込まれる。少女は真剣な眼差しであった。


 不本意だが、ここまでされれば啜るしか選択肢はなかった。


「……美味いな」


 そう言うと、少女は先ほどよりも笑みを強めていた。人外とは、到底思えない。いや、恐らくは人に近いのだろう。


「名前を聞いてなかったな。なんて名前だ?」

「名前ない」

「あ?親居たんだろ?戸籍だって」

「私のこと、秘密にしてた」

「……だとして、名前がないというのもいかがなものか……」


 俺はしばらく頭を悩ませた。そして、一つの結論に至る。


「分かった、俺が決めてやる。お前の名前は――赤塚蒼(あかつかあおい)だ。赤塚は俺の名字。蒼はお前の髪の色だ」


 すると、少女はその名前を大変気に入った。赤に蒼と、矛盾した名前だがそれも良いだろう。


「おじさんの名前は?」


 俺は立ち上がり、自身の名前を名乗った。


赤塚栄一(あかつかえいいち)、役立たずの男だ」


 こうして、人外の少女と浮浪者の奇妙な関係は始まった――

 あとがき

 どうも、焼きだるまです。

 今回は戦闘シーンありませんでしたねー。たまには、こういう平和な回?も良いでしょう。

 物足りない人は、是非時系列や謎を考察してみて下さい。意外と面白いかもですよ。では、また次回お会いしましょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ