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こちら、人外対策部です  作者: 焼きだるま
第一部 前日譚
29/60

第二十八話 いつも待っています

この作品は一話ごとに登場人物や時系列、舞台が変わります。それをご理解の上でお読み下さい。


 雑居ビルの一階にある小さな喫茶店――中は、木の暖かさを感じる落ち着いた雰囲気だった。

 客は数人、店長と店員の一人ずつで店を回していた。


 珈琲を啜る。香り、苦み、その全てが素晴らしい。ここに来て正解であったと、満足そうな顔をしたのは、昼休憩にここへ訪れた――和田一秋(わだいちあき)であった。


 珈琲カップと、受け皿のカチャンという音がする。その数秒後に、店員によって運ばれてきた。アイスと生クリームが乗ったチョコレートワッフルが、和田の目の前に置かれる。


 フォークで刺し、ナイフで切る。生クリームとアイスを乗せ、それを頬張る。


「いつもお昼はそれですね」


 大学生をしているらしいその女店員は、笑顔で和田の方を見てそう言った。


「昼はあまりお腹が空かなくてな。ここのワッフルの量もちょうどいい、昼休憩にはピッタリなんだよ」


 和田には、それ以外にも目的があった――この女店員だ。


「いつもありがとうございます。人外を退治して下さる隊員様のお役に立てているようで、光栄です」


 すると、和田は笑いながら言った。


「やめてくれ、俺なんてまだまだ数年のペーペーだよ」


 ふふふっ――そう笑う店員の顔は、人々を魅了してしまうものがある。


 昼食を終えると、店を出て歩き出す。和田にとって、この仕事はあまり好きではない。

 元は、学のない彼がなれる仕事だったから始めた仕事だ。その為、やり甲斐は感じていなかったが――彼女と出会ってからは単純なもので、自然と仕事にやり甲斐を感じてしまう。


 気分良く、巡回ルートに戻ると、突如――通信が入り、オペレーターから人外事件発生による出動命令が出る。

 その場所は、先ほどまで居た喫茶店であった――



 和田は、大急ぎで通報にあった喫茶店へと向かう。通報の主は女性の声であった、恐らく彼女だ。彼女は逃げて通報した。そう信じて喫茶店へと入る。


 木の暖かさは、血の冷たさへと変わり。先ほどまでくつろいでいた窓際の席は、くつろぐ場所がないほどに破壊されていた。


 店の中央に立っている人外は、サラリーマンの姿をしていた。


 変形は少なく、亀裂は少し確認できるが、変形の遅い個体なのだろう。

 男の左半身は変形を始めており、腕付近からは赤黒くなっていた。角はまだ生えていない。寄生官を持つ尻尾は短く、生え始めている。


「……テメェ」


 和田は怒りのままに、自身の武器を抜刀する。

 刀のようなそれは、別世界との融合により発生した異物から作られた、特殊な金属でできている。


 人外の顔は、怯えていた。人外に人の意思はない。あっても――それは人の真似事だ。


「一丁前に人のフリしてんじゃあねえ!!――」


 和田は人外の前頭葉目掛けて刀を振おうとする。

 しかし、人外は左腕でその刀を受け止めた。刃を受け止める。それも、正面から片手で。


 しかし、受け止められた刀は――冷気を放つ。次第に人外の左腕は凍りつく。


「アホが、それは特別性だ」


 凍りついた左腕を、人外は動かせない。左腕しかまともに変形していない人外は、対抗手段を失った。

 すると、和田は左手でナイフを――抜刀の勢いで人外の左腕を斬りつける。


 抜刀されたナイフは炎を放ちながら、人外の凍った左腕を溶かしながら焼き切る。


 異物である炎熱石を使用したナイフ。摩擦により、その一瞬のみ発火するが、熱で傷口を塞ぐことから多くの隊員は普通のナイフを使う。


 しかし、凍らせる刀との相性は良く、和田は好んで使っていた。


 焼き切られた人外の左腕は床へ落ちる。

 和田はそのままの勢いで、刀を人外の前頭葉に向け斬撃を放った――


 人外は活動を停止した。辺りに生存者は居ない。店長も死んでいた。


「あいつは!?」


 和田は彼女を探すが、店の死体には居ない。バックヤードへと入る。

 そこには――腹に穴を開け、スマホを片手に血を流しながら壁に腰掛け死んでいた彼女が居た。



 喫茶店は無くなり、和田は行きつけの店も、好きな女に会うこともできなくなってしまった……

 町を巡回しながら、オペレーターに向かって呟く。


「やっぱり……俺、この仕事にやり甲斐感じねえわ」


 和田は、あの店を、あの女を知る前の彼に戻っていた。

 オペレーターが言う。


「俺が知ってる限りの良い女のオペレーターに担当代わろうか?」

「どうせ上に話しても、そんな理由で担当は代わらないだろう」

「だろうね」


 和田は溜息を吐く。


「お前が知っている限りの、良い店を紹介してくれ。できれば食べる量は控えめのな」

「探しとくよ」


 やり甲斐を感じないこの仕事を――和田はこれからも続けていく。

 あとがき

 どうも、焼きだるまです。

 この回を書いている時、私は修正地獄に追われているでしょう。

 みなさん小説を書く時は、小説を書く時のルールを調べましょう。じゃないと私みたいな地獄を見ますぞ。さて、こんな後書きを書いている暇があるのなら、私は修正に戻ります。では、また次回お会いしましょう。

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