第二十四話 ゼロの記憶
この作品は一話ごとに登場人物や時系列、舞台が変わります。それをご理解の上でお読み下さい
アスファルトの上、血に染まった惨状。髪はボサボサとなった少女は、真ん中でポツンと、ただ座っていた。
何も考えられない。何が起きたのか、理解が追いつかない。
人外対策部の隊員が数名、現場へと来る。
「…?君、大丈夫か?」
男の隊員が、恐る恐る近付く。
「…何が…」
少女は、放心状態のまま、ただ座って隊員の方も見ずに答える。
「怪我は無いか?両親は?」
「…何が…」
「…名前は分かるか?」
少女の白いワンピースは、紅白の新しいワンピースへと変わっていた。
「…誰…?」
隊員はしゃがみ込むと、こう返す。
「俺か?俺は真山、人外対策部の隊員だ」
「人外…対策部…?」
「あぁ、君を助けに来た。もう安心していい。ここで何があった?人外はどこへ?」
「どこ…かな…」
「…大丈夫か?頭を打ったのか?」
「…分か…らない…」
「救急車が、もうすぐ来る。大丈夫だ、すぐに良くなる」
他の隊員は、周辺に散らばる死体を確認していた。
すると、一人の隊員が、真山に言う。
「生存者は…その子一人ですね…」
「あぁ、何か思い出したくないか、記憶を失うほどに酷い有様だったようだな」
真山は、再びしゃがみ込むと、少女に話を続けた。
「何か、思い出せることは無いか?何でもいい」
「…分からない…」
「…そうか…誰かと一緒に居た?」
「…誰?…」
「…誰かは知らないさ、何も思い出せない?」
「…うん…」
「一人?」
「…迷子」
「迷子か…じゃあ、両親も君のことを探しているね。きっと、君が無事なのを見たら安心するよ。そしたら、君も何か思い出せるかもしれない」
「思い出す…?」
「あぁ、俺にも、記憶喪失だった頃がある。でも、家族に会ったら、案外すぐに記憶が戻ったんだ」
「…そう…」
「だから、誰かに会えれば、いつもの日常に戻れるよ」
「…誰?」
「…それを探そう」
「…誰?」
「…?真山だ」
「…私は、だれ?」
その時の、真山の担当オペレーターが聞いていた内容は、ここまでだ。
あとがき
どうも、焼きだるまです。
今回は、かなり短めのお話となっております。少し、物足りないという方も居られるかもしれませんが、たまにはサクッと読める箸休めといった感じで、こういった回も楽しんで頂ければなぁと、思っております。では、また次回お会いしましょう。




