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こちら、人外対策部です  作者: 焼きだるま
第一部 前日譚
24/60

第二十三話 人間か人外か

この作品は一話ごとに登場人物や時系列、舞台が変わります。それをご理解の上でお読み下さい

 人外だから、人間の敵である。それは、人類全体の共通認識だ。

 事実、人外による被害は、数え切れないほど世界で起きている。そう思われても、おかしくはない。いや、それが事実なのだ。

 ならば、私達は人間の敵なのか?私達は、人間なのか?抑えられない衝動は、何処へ向ければ良い?


「よっす!赤塚!何処行ってたの?」

 ソファに座りながら、頭を後ろに倒して陽気な女が一人、赤塚と呼んだ女に話しかけている。陽気な女は、髪は黄色のポニーテールで身長は低めだ。

「ちょっとコンビニに行ってただけだよ」

 赤塚と呼ばれた女は、名前とは違い、髪は蒼くロングである。

「何買ってきたのー?」

「酒とつまみ」

「あー!そーいえばタッキー誕生日か!」

「あぁ、酒で構わんだろ」

「いいね!じゃあ私もなんか作るかなー!」

「中山、お前料理できたのか」

「全然?」

「だよな、お前が料理してるとこ見たことない」

「でも簡単なものなら作れるっしょ!やってみるよ!」

 そう言うと、中山と呼ばれた女は、キッチンへと向かった。

 その時、赤塚のスマホが鳴る。

「もしもし?」

「赤塚、人外が発生するぞ」

「場所は何処」

 赤塚は場所を聞くと、コンビニ袋を机に置いて、中山の居るキッチンへ向かう。

「どしたの?」

「滝流からだ、人外が発生するらしい」

「私も行こうか?」

「あぁ、上手いこと周辺の住民を避難させてくれ」

「任された!」


 人外の中にも、人間を捕食せず、繁殖もしない者達が居る。その数は少ないが、彼らは人間でありたいと願っている。

 ヒューマン、それが赤塚達が所属するグループだ。

 指定された場所へ、二人は向かっていた。

「タッキーさ、赤塚のこと好きなんだって」

 中山が走りながら、そう言った。

「知ってる。分かりやすい」

「だよねー!今日、告白されちゃうんじゃない?」

「どうだろうね」

 そんな会話をしていると、目的地に着く。滝流と合流すると、

「確かに寄生されてたのか?」

「あぁ、あれはもう人間じゃなくなってる」

「敵対?」

「だね」

 人外は、相手が人間か人外かを、見ただけで判別することができる。

 同じ人外に対して、繁殖(寄生)しない為の能力なのであろう。

 そのお陰で、私達は人間の為に戦える。

「中山、いつものやつで上手いこと、周辺住民避難させて」

「あいさ!」

「滝流は、適当に武器見つけてきて、私と一緒にやるよ」

「了解」

 そう言うと、三人は別々に動く。

 赤塚は、人外が入っていった雑居ビルへと向かう。

 雑居ビルに人外以外の気配は感じない。幸い、ビルの中に人は居ないようだ。

 赤塚は、周辺住民に上手く避難を促す。

 その時、スマホに通知が鳴る。どうやら、もう一人のハッキングができる仲間が、上手く周辺に居る住民のスマホに、避難通知を出したらしい。

「よし」

 赤塚は、人外の居る雑居ビルへと戻る。しかし、ビルの前には一人の男が居た。

「!」

 赤塚は驚きながらも、男に言う。

「ここは危ないから早く離れた方が良い」

 しかし、男は何が何やら分からないと言った表情だ。

「兎に角、どっかに行け!」

 男を両手で押す。男を来た道へと戻すが、その時、大きな爆発音がする。

「クソ!」

 赤塚は時間が無いと悟り、手を引くと走り出した。

「人外事件だ!知らされてなかったのか!?」

 男は首を振っている。そして、赤塚に問う。

「あなたは、誰なんですか?」

「私は…今はどうでもいい!兎に角、離れないと!」

 すると、爆発のした建物から、人外が飛び出してくる。

「人外対策部は何をしているんだ」

 男がそう言う。

「まだ到着していない!」

「到着していない?君は隊員じゃないのか?」

「なんだって良いだろ!てか、あの人外追いかけてきてるぞ!」

 人外は、猛スピードでこちらへと迫ってくる。

 そこへ、横から現れた滝流が、人外に向かって鉄パイプで攻撃した。攻撃された人外は、ターゲットを男に切り替える。

「何をしてるんだ!」

 滝流がそう言う。

「一人だけ避難できてなかった!」

「…俺が時間を稼ぐ!逃げろ!」

 そう言うと、滝流は人外と戦闘を始めた。

 滝流を信じ、私は男の避難を優先した。

「知り合いなの?」

「そう、取り敢えず今は後。命を大事に!」

 二人は、向こうへと走っていった。


 滝流は、周りに人が居ないことを確認すると、自身の両手を変形させた。

 人の姿をしているが、それは確かに人外であった。

 相手の人外は、よく見ると、腰にもう一本右腕が生えている。

「変な姿してんな、被害が出る前にその存在を消してやる!」

 そう言うと、滝流は人外へと突撃する。

 右手の爪を、人外の前頭葉目掛けて振るう。しかし、三本腕の人外は、滝流の右腕を掴み、それを阻止する。

 そして、左腕で滝流の頭を握り潰そうと掴みにかかる。しかし、滝流も負けじと掴みにかかる手を左手で阻止する。

 互いに掴み合い、滝流は持ち上げられるように、足が地面から離れる。

 腕の数は向こうが上、塞がった二つの腕、相手は腰から生えている腕で、滝流の顔に今度こそ掴みかかる。

「クソ!」

 すると、滝流の体が大きく変形する。先程の腕だけとは違い、全体が変形する。

 皮膚は硬く、並の武器では傷を付けられないその姿。人外は滝流の頭を掴むと、力一杯に握り潰そうとする。しかし、滝流の頭は潰れない。

 人外は3本目の腕を前へ出す為に、屈むような体勢となっていた。人外の目の前には、変形した滝流の足がある。

 答えは一つだった。

「腕が足りねえなら、こっち足だァァ!」

 滝流は右足で、人外の前頭葉を破壊する威力で、強烈な蹴りを一つ入れた。

 硬質化した足による蹴りは、人外の前頭葉を確実に破壊した。

 人外は活動を停止する。しかし、滝流の人外化は解かれない。

「…クソ…早く…人の居ねえところに行かねえと…」

 その時、一人のスーツ姿の男が、目の前に現れる。男は腰を抜かし、動けなくなっていた。

「…ッ!バカヤロオオオオオオオオオオオオ!!!」


 赤塚が戻ってくると、そこには人間を捕食している滝流の姿があった。その姿は人外、人間ではなかった。

「滝…流…」

「どうして…どうして…こうなっちまうんだよ…どうして…俺は…殺したくなんて…なかったのに!」

 滝流は涙を流している。しかし、捕食をやめない。

 5分後、滝流の姿は人へと戻った。

 完全化、完全な人の姿をしている人外は、捕食行為や繁殖行為を抑えることができる。

 しかし、力を解放する為に体を変形させ、完全体となると、捕食行為や繁殖行為を抑えることが、できなくなってしまう。

 一度変形させると、戻ろうとする意思が生まれてから、10分が経過しないと、人の姿へと戻れない。

 一部を変形させるくらいであれば、なるべく抑えながら瞬時に戻すことすら可能だが、完全体とは違い変形させた部分以外、人間ベースの為あまり強くはない。

 今回は運が悪く、避難ができていなかった一人の人間が目の前に現れたことで、滝流は衝動のまま殺害し捕食した。本人の意思とは関係がない。


 その日は、星空が綺麗だった。丘の上、赤塚と滝流はそこに居た。

「ここなら、いいよね」

 赤塚がそう言う。

「人も居ないしね」

 滝流は、悲しそうな表情をしている。

「どうして…こうなっちゃうんだろ…今までこんな衝動は無かったのに…」

 男は、頭を抱えていた。

「どうせ、私達は人外ってことなのさ」

 人間時に衝動は無くとも、一度完全体となれば、その衝動は現れる。

「殺してくれ…君の手で殺されるのなら、俺は安らかに眠れる」

「本当に…良いのか?」

「あぁ、人殺しでは居たくない」

「好き…なんだろ…?私のこと…」

「だから、残酷だけど君に殺して欲しいんだ」

 滝流は涙を流していた。

「…あんたは、立派な一人の男だったよ」

 赤塚の手のひらから、そこには無いはずの短刀が現れる。

「俺…人の役に立てたかな」

「あぁ、立ててたとも、仕方がなかったんだ」

 そう言うと、赤塚は短刀で滝流の頭を両断した。

 風が冷たい。

 側には死体が一つ。夜空には輝く星々。赤塚は、静かに泣いていた。


「結局、誕生日パーティーできなかったね」

 中山がそう言う。

「…今日の人外事件のせいで、公安がこの近くを彷徨いてる。ここも、そろそろ離れるべきなんだろう」

 赤塚は、酒を飲みながら、つまみを雑に口に入れては食べていた。

「次は何処へ行く?東京とか?」

「東京はそれこそ危険だろう。もっと田舎のところかな…」

「まぁ、楽しいとこなら何処でも良いよ」

 二人は、パーティー用に買ってきた酒やつまみを、一夜で全て使い果たした。

「どうして、こうなっちゃうんだろうな…私達はただ…普通の人間で居たいのに」

 昔、同じような仲間が二人、公安に助けを求めた。結果は、殺され、実験体にされただけであった。

 彼らも元は人間だ、どうしてこうなってしまうのか…何故、寄生されても尚、人間としての意思があるのか。

 何故、人外などと言う存在が、この世に生まれてしまったのか。

 答えは返ってこない。

 あとがき

 どうも、焼きだるまです。

 誰だって、こうでありたかった、こうなりたかったってありますよね。私も、そう思うことがよくあります。

 しかし、叶わないことも、世の中にはあるのです。今の自分を楽しんで、これからも生きていこう。では、また次回お会いしましょう。

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