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こちら、人外対策部です  作者: 焼きだるま
第一部 前日譚
20/60

第十九話 協力

この作品は一話ごとに登場人物や時系列、舞台が変わります。それをご理解の上でお読み下さい

 電車の中、人は10人くらいだろうか、電車に揺られ座席に座っている制服の少女が一人、何をすることもなく鞄を膝に乗せながら降りる駅を待っていた。

 髪は黒くショート、童顔の中学生である。無表情のまま、向かいの窓を見つめている少女の鞄には、茶色いクマの、小さな人形が電車に揺られていた。

 窓の向こう側は、夕焼けも近くなってきた空に、大小様々な大きさの四角い建物が、バラバラと並んでいる。

 すると、席は他にも空いているというのに、少女の隣に一人の男が座る。少女は特に反応はせず、変わらず向かいの窓を見ている。

「君」

 男が喋り出す。

「ここら辺に最近、女子生徒を狙った人外事件が起きているのは知ってるかな?」

 唐突に話し出す男に、少女も口を開く。

「そうですか、それがどうかされましたか?」

 少女は男を見ない。男も少女を見ない。

「君に依頼したい。その人外を駆除してくれないか?」

「私は中学生です」

「エクストラ隊員 松原加奈 そう言えば良いかな?」

「…あなたは誰ですか?」

「私は、この近くで探偵をしている者だ。君のことも、しっかりと調べ上げている」

「そうですか、私はただの中学生です」

「11歳にして、覚醒していた人外にまともな武器も無しに単独で挑み勝利。その後は、人外対策部にその才能を買われ、現在は学業と隊員を両立している」

「知らない人ですね」

「常に鞄には小さなクマの人形を付けており、黒い髪をしている。スリーサイズは」

「うるさいですね、警察に通報しましょうか?」

「協力してくれる気にはなったかな?」

「そもそも、そういうのは人外対策部に協力要請してくれませんか?」

 松原は少し睨みながら、男を見る。

「警察は誘拐事件とし、証拠も無いことから人外対策部も人外と疑っていない」

「何故、あなたは人外の仕業だと分かるのですか?」

「最近、人外化する薬が裏で出回っている。そして、この付近でその取引があったそうだ」

 少女は念の為、通信機をオンにする。

「取引のあった場所を考えると、薬を打った、もしくは打たれ人外化した者がこの辺りに居てもおかしくはない。それどころか、2日前男性も一人行方不明となっている。これまでの傾向を見るに、犯人は欲望の為に女子生徒を狙っていたはずだ、しかし男性も犠牲となっている」

「別の犯人では?」

「警察はそう考えている。だが、栄誉にする為に男を襲ったとしたら?」

「なら、何故女子生徒だけを狙うんですか?その人外は」

「手を組んでいる者が居る、もしくは人としての意思がある」

「人外に、人としての意思は無い」

「人外の力を手にしている少女が、存在するのにか?」

「あまり踏み入り過ぎますと、公安に怒られますよ」

「無いにして、手を組んでいる者が居る。それは確実だ」

 電車は駅に着く。

「バカらしいですね、次私に会いに来たらストーカーの容疑で通報しますよ」

 松原はそう言うと、電車を降りる。

「君の友達や、同級生が被害に遭ってもおかしくはないぞ」

 そんな男の声が、聞こえた気がした。


 翌日、帰路に就いていた松原の後ろには、同級生の女の子が同じ道を歩いていた。

 その子は、同じ駅までいつもは行く。だが、信号待ちをしていた時、ふと、後ろを振り返ると、さっきまで居たはずのその子が居ないことに気が付く。

「…」


 翌日、学校からの帰り道。松原は駅から学校までの間を、夜になるまで歩いていた。路地に入ったりもした。

 時刻は午後7時。路地を歩いていた松原は、そろそろ帰ろうとしていたその時。後ろから人外によって、口を押さえられる。すると、前から来た男に頭を殴打された。


 目が覚めると、電球一つの恐らく地下室に閉じ込められていた。手は後ろに縛られ、足も縛られており、松原は地面に横たわっている。

 目の前には、男と人外が一人。そして、壁には趣味の悪い飾り(死体)が掛けられていた。

 手足の無い裸体、生首、切り取られた陰部、胸部、子宮、臓器、傷の無い死体。

 見ているだけで自然と、目から光は消える。だが、絶望もしていなかった。ただ憐れむように、死体を見ていた。

 目の前の男は、人外に対して喋っている。どうやら、あの探偵の予想は合っていたらしい。男と人外は、協力関係にあった。

 すると、男は切り取った左腕を人外に差し出す。どうやら、隠れ家を提供するといった理由で、人外も協力をしているらしい。

 あの人外相手に協力関係を結べる交渉力は、尊敬すら覚えるが、話は聞いていて吐き気がする。

 すると、男が口に出した。

「昨日女もそろそろ解体するか、十分楽しんだし、ストックもできたし!」

 恐らく、彼女はまだ生きている。それで十分だ。人外は喋る。

「数ヲヤリスギタ、ソロソロ勘付カレルゾ」

「大丈夫!どうせ警察しか動かない!」

「オ前ノコトモバレレバ、コノ協力関係モオワリダ」

「…まぁ、そうだな。そろそろ場所を変えても良いかもしんねー。あーあ、ここら辺、美少女多いのにな。ま、何かの間違いが起きる前に、さっさと解体して処理して場所変えますかぁ」

 松原は、袖に隠してあるナイフを器用に取り出すと、縄を切った。

「既にお前は間違えている。存在もそうだが、何より私の服は、脱がせた方がよかったな」

 すると、反応する隙も与えないまま、人外の前頭葉をナイフで刺す。

「…は?」

 男は口をポカーンと開けている。

「ねぇ、あの壁の飾りは何?」

 男は、段々と顔が青ざめていく。

「私にも、やらせて?」


 警察により、松原の同級生は保護された。無事とはいかないが、少なくとも生きている。

 彼女が精神的に復活できるかは、彼女次第だ。

 電車に揺られて、眠気が松原を襲う。その隣に、男が一人座る。

「私の予想は当たっていただろう?」

「囮はもうごめんです」

「しかし、一人の命は守られた」

「あなた、本当は探偵じゃないですよね?」

 男は少し黙ると、口を開く。

「私は、ただの成り損ないさ」

 すると、座っていた男は幻のように消えた。

 通信は入れておらず、その事実を知っているのは松原だけだ。

「次、私に会いに来たら、ストーカー容疑と人外として殺しますよ」

 松原は毅然として、向かい側の窓を見つめている。

 ガタンゴトンと、電車は音を鳴らしながら、次の駅へと向かっていた。

 あとがき

 ども、焼きだるまです。

 最近はエグめな内容が多いですね、そろそろ癒しが欲しくないですか?そんなあなたの為に次回は、更に内容をブラックにしたいと思います。嘘です。いや、嘘かは知りません。私の気分です。

 また次回、お会いしましょう。

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