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こちら、人外対策部です  作者: 焼きだるま
第一部 前日譚
17/60

第十六話 デュラハンの永雨

この作品は一話ごとに登場人物や時系列、舞台が変わります。それをご理解の上でお読み下さい

 ビルの屋上。稀に見る豪雨の中、白銀の髪の少年が剣を背負って空を見上げている。

 白のコートに緑のバンダナ、髪はショート。

 屋上の扉が開く。

「ユウト、こんな雨の日にも屋上に居んのかよ」

 そう言ったのは茶髪の男だった。ユウトと呼ばれた少年と比べれば、背は高く。それは、ユウトの身長が小さいとも言える。

「豊崎、違和感を感じないか?」

 豊崎と呼ばれた男は、首を傾げる。

「空だ」

「空って、分厚い雲に覆われて雨降らしてますけど、そんなに違和感あること?傘もレインコートも無しに豪雨の中、空見上げてるやつの方が余程違和感あるけど」

「雲が動いてない」

「動いてないように見えてるだけじゃ?」

「動いてないんだ」

「そんなこと起きてたら気象庁が黙ってないでしょう。しかしまぁ、予報なら今頃過ぎ去ってるはずなのになぁ」

「…なぁ、過去に天候を操った人外は居たか?」

「なんだそれ、そんなの厄災級だろ……まさかな」

 豊崎は何かを思い出したように、汗を一つ。

 町は豪雨により、靴が浸かってしまいそうになるほど、水に溢れていた。


 同時刻、管制室にて。

「上空に人外と思しき者が、空を飛んでいると通報が入っています」

「場所は?」

「新宿スクランブル交差点の真上とのことです」

「特徴は」

「大きな翼を持っており、両手には石化した槍と、頭の無い人型とのことです」

「厄災級…デュラハンの永雨」

「どうしますか?放っておけば、東京が雨によって水に沈みます。エクストラは現在、大島春男隊員が東京への帰路に就いており、時間にして20分はかかるとのことです」

「…羽田ユウト特別隊員と、豊崎士郎特別隊員を向かわせろ」

 特別隊員。それは、人外としての能力を持ちながら人間である、選ばれた人間の隊員である。

「了解」

 すると、エリートオペレーター丸井英俊が二人を担当する。

「人外事件が発生した。場所は、新宿スクランブル交差点。人外の特徴と、この豪雨から司令部はこれを、厄災級 デュラハンの永雨 であると決定。エクストラ隊員である大島春男が現場へと向かってくれているが、出張からの帰還途中だった為、到着が遅れる。お前達二人でデュラハンを討伐、もしくは時間を稼いでくれ」

 二人は「了解」と言うと、ユウトは先に行ってると言い、その場から幻のように姿を消した。

 豊崎はビルを降りると、緊急車両に乗り込み目的地へと向かう。


 先に現場へと着いたのは、羽田ユウト特別隊員であった。

 デュラハンは、動く気配が無い。

 ユウトは、デュラハンの背後に姿を現すと、自身の武器である剣を手に取り、デュラハンに向かって渾身の斬撃を放つ。

「喰らえ!」

 しかし、デュラハンには届かない。剣がデュラハンへと届く前に、目の前に現れた大量の水の塊によって、ユウトは海流のように後ろへと押し出されてしまったからだ。

 デュラハンは動かない。そして、近付くことすら許さない。

「クソッ…!そもそもこいつの弱点は何処なんだ!オペレーター!」

「そいつの弱点は今のところ分かっていない!最初から頭も無ければ、尻尾すら持っていないんだ!神出鬼没の上常に空に浮いている。今日こうして現れたのも何年ぶりか!」

「なら過去の事例ではどう対応したんだ」

「そんなものない!やつが出没した場所はみんな水に沈んで壊滅した!あいつはその場所が水に沈むまで、そこから消えることはない!」

 弱点も無ければ、今まで勝った記録すら残っていない。

 厄災級、その強さは伊達ではない。

 その時、豊崎も現場へと到着した。既に上空では、ユウトがデュラハンと戦っているが、水の塊がユウトの邪魔をしてデュラハンに近付けない。

 豊崎もまた、彼は空中に飛ぶといった能力は持ち合わせておらず、できることはその場の時間の流れを遅くすることだけだった。

 1分ほどしか、時の減速をしたところで変わらないであろうが、無いよりかはマシだ。

 東京の地面は既に、水によって埋まっていない場所は無く。膝まで来るのも時間の問題であった。

 見上げることしかできない豊崎は、戦いの行方を見守るしかなかった。

 すると、ユウトの姿が突如として消える。

 その時、ユウトはモノクロの、自分以外の生き物が居ない空間に居た。

 ユウトはそこを異空間と呼んでおり、任意のタイミングで入り込むことができる。そして、異空間の場所からは敵の位置が分からず、敵を切ることもできないが自身の場所は現実とリンクしている。それはつまり、

「ここだああああああ!!!!!」

 ユウトは現実世界に姿を現す。それは、デュラハンの真後ろ。距離にして先程とは違い20センチ。

 下から切り上げるように、剣でデュラハンの翼を切断する。

 突如として現れたそれに対応できず、デュラハンは翼を失った。

「やったか!?」

 オペレーターも確信していた。しかし、デュラハンは動かない。空から落ちてくることもない。

 先程と同じように、海流のように水の塊によって後ろへ押し出される。

「何故落ちない!?」

 ユウトも意味が分からなかった。

 豊崎も下から見ていた。

「飾り?いや、ならば元から翼なんて必要無いはず。ならばどうして?」

 もう一度、異空間を経由した急接近による攻撃をしようとしたその時、

「ダメねぇ。よく考えれば分かるじゃないの…翼が飾りなんじゃない、飾りなのはあれ自体よ」

 豊崎の隣には、いつここへ来たのか、筋肉があり、バズーカのようなものを持ったオカマが、そこに居た。

「大島…春男隊員!?」

「やめてちょうだい!私を下の名前を呼ばないで。私はただの、通りすがりのオカマよ!」

 すると、バズーカからロケット弾が発射される。

 それは、デュラハンを素通りし、真上の雲へ向かって飛んでいく。

「ユウトちゃん!水の塊から、守りなさい!」

 すぐに承諾すると、飛んでくる弾をまるで防衛するかのように現れる水の塊を切りまくる。

 小さい内は剣で切ることで、飛び散るように消え去る。

 そして、ロケット弾が雲の中へ入っていったその時、爆発音が聴こえた。

 その瞬間、デュラハンが何かを失ったように落ちてくる。

 豊崎がトドメを刺そうとするが、大島隊員に止められる。

「それはデコイ、ただのお飾りよ」

 そう言うと、空から血と肉片の雨が降る。

「デュラハンの本体は雲の中。操り人形を空から垂らして、そこへ攻撃を集中させてたのね」

 全員が納得する。確かにそれならばデコイに注目が集まって、雲の中に本体が居るという発想に至らない。

 空から降りてきたユウトが言う。

「だから、頭と尻尾が無かったんですか?」

「そういうことじゃない?でも、人外に確定したことは無いから。頭や尻尾が存在しない人外が現れても、おかしくはないけどねっ」

 大島隊員はウインクすると、分厚い雲が動き出す。

「さっ帰るわよ。私お腹ペコペコなの、何か美味しいご馳走が待ってるわよね?」

 オペレーターが答える。

「無いです。町がこんなことになっているので、すぐには用意できないかと」

「あらやだ」

 そう言うと悲しそうに、豊崎が乗ってきた車へと乗る。

「歩いてきたんですか?」

「走ってきたのよ」

 その会話を聞いたユウトは笑い出した。

「何かおかしいことでもあった?」

 大島がそう言う。

「いえ、エクストラ隊員と聞いて、堅苦しい人なのかと思ったけど、案外そうでもないんですね」

「特別隊員こそ、人智を超えた力を持ってるのに普通の人間よね」

 運転席に座る豊崎が言う。

「私達は人間ですよ」

 ふーん、と返す大島とユウトを乗せて、車は公安へと戻る。

 途中、大島がユウトに言った。

「あんたの母さん、何処に行っちゃったのかしらねぇ」

 窓の向こう側を二人は見ながら、ユウトは答える。

「俺の母親は俺を捨てた。どんなやつなのかも覚えてないけど、今更会いたくもない」

「本当にそうなのかしらねぇ」

 運転をしている豊崎も言う。

「特別隊員達は皆、親が分かりません。何処から産まれてきたのか謎なままです」

「本当にぃ?」

「少なくとも私達はそう聞いています」

 雨は、まだもう少し過ぎ去りそうにはない。

 大島は知っている。人類で初めて人外の能力を持っていながら人間であった少女のことを。

 それ以降、人外の力を持つ孤児が度々発見されたが、ユウトの姿を見ていると、そうは思えない節を、大島は感じ取っていた。

「元気にしているかしら」

 そんな声が、大島から聞こえた気がした。

 あとがき

 どーもー、焼きだるまです。

 アクセスPVも増え、私も自信が湧いてきました。

まだまだ未熟ではありますが、成長していきますのでこれからもよろしくお願いします。

ではまた次回、お会いしましょう。

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