第十五話 仕事
この作品は一話ごとに登場人物や時系列、舞台が変わります。それをご理解の上でお読み下さい
「人外発生!人外発生!」
昭和63年。アメリカで発生した隕石落下以降の、人外発生は日本でも確認されていた。
世界では、人類全体に関わる重大な問題として、人外対策部なるものを設立したいだの、そう言った話が出ているらしい。
現在の日本では、警察が人外の対応に追われている。
基本は拳銃や刺又で対応することになっているが、特異人外(後に覚醒人外と呼ばれる者)には、かなり手子摺らされる。
被害も毎回出ており、人外の発生数も増加している。
綿鳥寿郎、当時(25)巡査。私は人外発生を受け、その場所へと向かっていた。
当時はバブル期真っ最中。日本は金に塗れていた。
中学校のグラウンドに、人外は居た。
昼頃だった、昼食を食べていた生徒は食べることや避難するよりも、グラウンドの人外に釘付けであった。
教員達はグラウンドに集まっており、刺又で人外に対抗していた。
相手は幸いにも特異人外ではないらしく、教員でもある程度対応ができていた。
私がグラウンドへと入ると教員達を下がらせ、人外に拳銃を向ける。
しかし、外れた銃弾が何かの間違いで市民や生徒に当たるかもしれない。
簡単に拳銃を使うことはできない。
すると人外は動き出し、私の方へと向かってくる。選択の余地はなかった。
私は発砲し、人外の額を一発で撃ち抜いた。
私の射撃の腕は元より高く、失敗はあり得なかった。
終わってみればあっさりなもので、白熱した戦いを期待していた生徒は、つまらなそうに窓から顔を引っ込める。
つまらなくなんてない、人の命が懸かっている現場で、何故目をキラキラさせていられるのか。
自身の命の危険すら感知できないのか。
呆れながら後処理を行った。
新聞紙には、見飽きるほどの人外についての話題が取り扱われていた。
「未知なる地球外生命体!日本にも発生!?」
「人外についての秘密を暴く!」
「人外など存在しない!?」
陰謀論だらけの新聞紙よりも、現実を見た方が余程マシだ。
今分かっていることは、人外の急所は額であり、人外には元となる人間が居るということだ。
恐ろしい世の中となってしまった。
そんな私も今年で56歳。人外被害はあの頃よりも増加していた。バブル崩壊前、日本にも人外対策部が設立され、少しずつ人外による被害は抑えられていった。
しかし被害は抑えても、その数は増えていく一方だった。
私は、今も変わらず警察としてこの国に尽くしている。
人外と戦うことは少ないが、時に必要な場合もある。未だ私の腕は鈍っていない。
発砲許可が出れば、一瞬で人外の前頭葉を破壊する。
人外対策部の隊員となれば即戦力かもしれない。だが、私はこの仕事を辞めるつもりはない。
仕事にはそれぞれ、やるべきことがある。
私がやるべきことは、法に従い、国民を守ることである。
人外と戦うのが、我々の本来の仕事ではない。
人外対策部が設立された今、その仕事は専門家にあるべきなのだ。
しかし人外は、仕事がなんであれ我々の前に現れる。その時だけは、私も国民を守る為に戦おう。
あとがき
どうも、焼きだるまです。
前回が少し長くなりすぎたので、休憩回として書いたのですが今度は極端に短くなってしまうという…。
多分、次回からはバランスの良い量になってると思いますので、お楽しみに。また次回、お会いしましょう