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こちら、人外対策部です  作者: 焼きだるま
第一部 前日譚
14/60

第二話 楽しむ者 裏

この作品は一話ごとに登場人物や時系列、舞台が変わります。それをご理解の上でお読み下さい

 小さい頃、エリート隊員だった母に憧れた。

 父親は離婚、シングルマザーだった母は、私を大切に育ててくれた。私が追うべき夢は、人々を救う人外対策部のエリート隊員だった。

 羽田桐花、それが私の名前だ。


 私がまだ中学生だった頃、母に自身も人外対策部のエリート隊員になるという夢を話した。

 母の仕事だ。きっと、応援してくれる。そう思っていた。でも、結果は反対。

 いつ命を失ってもおかしくはないこの仕事に、母は私を遠ざけたかったらしい。

 高校生に上がっても私の決心は揺るがず、母はせめて前線へと出ぬようエリート隊員をやめ、オペレーターへと転職した。

 しかし、私はオペレーターにはならない。エリート隊員になる。そう決めたからだ。

 試験に合格した私は公安へ面接に行った。しかし、結果は不採用。

 問題があった訳じゃない。母が裏で手を回したのだ。

 母を恨んだ。夢を追いかけることを否定する母を、私は恨んだ。

 追いかけていたはずの夢に妨害され、私は自棄になり、民間の人外対策部へと入る。

 勿論母には反対されたが無視し、家を出て修太郎と出会い、民間人外対策部として行動を共にすることとなった。

 母はエリートオペレーターとなり、私も仕事に慣れてきた頃。一件の人外事件の通報が入った。

 夢とは何だったのか、自分のやっている仕事に適当さすら現れるが、修太郎にこの仕事を何故やっているのかと聞かれ、腹が立ったので舌を出してやった。

 分かっている。私は、人を助ける隊員に憧れたからこの仕事を選んだんだ。たとえ、望んだエリートじゃなくても。ここから成り上がってやる。

 修太郎は正面から向かい、私は後ろから挟み撃ちのように不意打ちで仕留める。そんな作戦で行こうと言い、人外が発生した方へ回り込むように向かう。


 時刻はまだ朝の6時半。眠気に襲われながらも目的地の裏側へ辿り着く直前だった。

 私は異変に気付く。ビルに囲まれている人気の無い場所のはずだ。そこには大量の血痕と、死体があった。

 悪寒が走る。しかし、立ち止まる訳にはいかない。覚悟を決めると、私は路地へと入っていく。死体は誰も損傷が激しく、苦しんで死んだのであろう顔をしていた。

「なんで…人外が捕食じゃなくてこんな殺し方をしているの…?」

 どの死体にも捕食痕が見当たらない。それは異常なことであった。

 五体目の死体に近付いた時、後ろから人外が現れる。

 それは私の不意を突くように、後ろから遅いかかる。

 私は咄嗟に、自身の武器である鉄の棒を勘を頼りに後ろへ突く。

 すると、人外に当たったようで、何とか私も体勢を立て直し人外と向き合う。

「尻尾は無く、亀裂などが確認できる基本的な人外…いや、尻尾が無い?それはおかしい」

 寄生菅を持つ尻尾が無ければ、人外は個体数を増やすことはできないはずなのだ。

「特殊個体の例は今までもあるが、こいつもそれなのか?」

 しかし、修太郎はどこへ?

 人外が見つからないならば、ここへ来るはず。そんなことを頭の中で回転させていると、人外が動き出し、桐花へと攻撃を仕掛ける。

「あぁもう!いいわ!あたし一人であんたなんて十分よ!」

 そう言うと、鉄の棒を右手で回転させる。鉄の棒の両端から、遠心力により刃が現れる。

 それを桐花は、人外目掛けて投擲した。

 投擲された鉄の棒は、人外の前頭葉を破壊。人外の活動はすぐに止まった。

 呆気なく終わり、安心した桐花は鉄の棒を回収に向かう。その時、口に手を覆われると同時に巨大な爪が、桐花のお腹を後ろから貫いた。

「ッッッンンンッーーーーーーー!!!?」

 痛みに泣き叫び暴れる桐花だが、人外に抑えられている上彼女の武器は今、倒した人外の付近に転がったままだ。

 しかし、彼女の絶望はまだ終わらない。きっと、修太郎が助けに来てくれるはず。そんな希望は虚しく、彼女の前に現れたのは先程倒した人外と同じ姿をした。大量の人外であった。

 人外達は桐花の四肢を一つ一つ暴れないように持つと、もう一体が腹を割いた。

 ビル街に悲鳴が木霊する。しかし、助けは来ない。

「ーーーーーー痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいもうしませんもうしませんもうしませんゆるしてくださいゆるしてくださいゆるしてください助けてお母さんお母さんお母さん怖い痛い痛い痛い痛い修太郎助けて痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い」

 暴れるも無意味。腸が引き摺り出される。四肢の骨を折られ、千切られる。

 穢れを知らない体は、血によって汚されその機能を失う。

 段々と、言葉にならない叫びを上げるようになった彼女の声は小さくなっていく。

 意識が無くなる。目を開いたまま、その光を失う。


 数十分後、自体の解決がされないことを公安は感知すると、何か異常があったのだろうと、付近に巡回していた隊員を何名か偵察に送り込む。

 すると、偵察に行った隊員から状況が判明した公安だが、その時には被害が拡大しており、エリート隊員も不在であった為。仕方なく隊員を総動員しての作戦に出た。

 その時、彼女の母である羽田梨花は出張で東京におらず。その自体と彼女の死を知るのは、事件発生から少し後となった。

 出動を命じられた坂本隊員が見た光景は、悲惨と言わざるを得ない程に、町は血に濡れていた。

 この時の人外無差別爆破事件は、エリートクラス、もしくは厄災であろうと言われ、尻尾持ちが居なかったことと、その場に居た人外が全て同じ特徴を持っていたことから、本体はまだ何処かに居ると考え、人外の捜索が行われた。

 しかし、見つかることはなく。その事件は幕を閉じる。


 だが、3年後の夜。事件は繰り返されることを、隊員達は知らなかった。

 あとがき

 ども、焼きだるまです。

 今回は第二話の別視点のお話となります。是非、第二話もご覧になって下さい!それではまた次回、お会いしましょう。

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