第十三話 隕石落下
この作品は一話ごとに登場人物や時系列、舞台が変わります。それをご理解の上でお読み下さい
隕石落下以降、人外と呼ばれる化け物が現れた。人に寄生し、体を変形させ人を襲うそれは文字通りの人外となるそれに、人外対策部を設立した人類は未だ、その正体を突き止められてはいなかった。
人外対策研究所、そこは人外についての謎や人外を使用した武器などを作成している政府公認の研究機関である。
そこに所属している女性の歴史学者、久我谷学美は人外の起源について研究していた。
椅子に座り資料を読み漁っていると、少し上を向いて考える。その数十秒後。
「あ!!」
何か分かったかのように大声を上げる彼女の側には、耳を塞ぐ研究者が一人。
「研究所で大声出さないで下さいよ久我谷さん」
呆れたように言う男は「で?何か分かったんですか?」と聞く。
「人外は、地球に落ちてきた隕石と共に現れたと資料には残っているよね」
「そうですね。爆心地はアメリカのテキサス。隕石の落下時には幸い、数名の被害者が出ただけで大惨事にはならなかった」
「でもおかしいと思わないかい?いくらあの時代とは言えど、隕石の落下を予測できなかったなんて」
「落ちる予定は無かったとか?」
「いや、そもそも記録によれば隕石は突然現れたという」
「そんなまさか、隕石は突然現れたりしませんよ」
「そうだね、だから隕石の存在を確認できなかったのはミスだとして、それが今も真実だと思われている」
「実際そうなんでしょ」
「納得ができるかい?」
「あの時代ならそういうことも…」
「あると思うかい?」
「…そりゃ、無いと思いますけど」
「だろう?」
「だとして隕石が突然現れたりはしませんよ」
「そこを今から説明するのさ」
「…?」
「まず、あの隕石は地球由来の物であるとね」
「…は?」
午後3時、久我谷はさぞ当たり前のようにポケットから麩菓子を取り出すと、良い音を出しながら食べ始め話出す。
「まず、人外化する原因である寄生虫、これ自体おかしいと思わない?」
「何故ですか?」
「人には寄生するのに、他の生き物には寄生しない。ということさ」
「確かに言われてみればそうですけど、何か人間に寄生するメリットがあったんじゃないですか?」
「確かにその可能性は否定できない。でも、かと言って寄生された報告例が人間しか無いのも異常だ」
腕を組み考える男に、久我谷は続ける。
「そもそも、地球外生命体が産まれてくるのが卵というのもおかしいとは思わないかい?」
「何故?」
「地球外生命体の時点で地球の生き物には当てはまらないはずだ、卵以外の増殖方法を持っていてもおかしくはない」
「確かにそれは思いますけど、卵から産まれるというのが宇宙全体の基礎的なものなのではないですか?」
「地球にだって、卵以外で産まれる方法はある。ならば、地球外に生命が居た場合もっと他の方法があってもおかしくはないはずだ」
「うーん…仮にそうだとして、それが何故隕石が突然現れた理由になるんですか?」
「先程言ったろう?隕石は地球由来の物だと」
「隕石なんて落ちておらず地球に既にあった?」
「それは無い、だとしたらもっと昔から被害が出ている」
麩菓子が無くなってしまった。と久我谷が両手を上げると、仕方なくコーヒーに手を付け始める。そして続ける。
「隕石は、別世界線の地球から送られてきた物である。それが私の仮説だ」
「あなたがぶっ飛んでいるのは知っていましたが、遂にオカルトに手を染めましたか…動画でも上げたらどうです?人気になれますよ」
「こらこら、私を科学的根拠の無い奴らと一緒にするな」
「実際根拠も何も証拠が無いでしょう」
「証拠は今言ったことが証拠だ」
「仮にそれが証拠だとして別世界線から飛んできたってなんですかそれ、どうやってやるんですかそんなこと、それに仮にそうだとして何故向こうの世界の人間はこっちにこんな物送ったんですか」
「実験なんじゃない?」
「はぁ?」
「この寄生虫が人間に、どのような影響を与えるのか実験する為に送ったとか?」
「仮にそうだとして、どうやってその結果を見るんですか」
「漫画やアニメみたいに世界を見れる望遠鏡ではないけど何かそう言った方法があるとか?」
「ぶっ飛びすぎですよ」
「別世界から飛んできてる時点でぶっ飛んでるんだから有り得なくはない、それかもしくは…」
コーヒーを一口啜ると、久我谷は続けた。
「この世界には、その結果を見る為に送り込まれている、別世界線の人間が居る…とか?」
少しだけ鳥肌を立てながらも、そんなことあり得ないですよ。と冷静に振る舞う男に久我谷は、
「有り得なくはない、事実そうとしか考えれない。人外は地球由来のものであり、何者かによって仕組まれたことである。これを学会に提出したら嘸かし度肝を抜くだろうね」
「度肝を抜くでしょうね、あなたのオカルト具合に」
「まだ信じてないのか」
「そりゃそうです。あなたのは非現実的すぎます」
「人外の存在自体が非現実的だ。私の仮説は合っていると思うけどね」
「もしそうだとして、人外を放った利点はなんですか?何の価値があれにあると?」
「人外に適応した少女のお話、君も聞いたことあるよね」
「日本に現れた戸籍不明の少女?」
「あぁ、少女も特に何かを覚えてはいないらしいが、そんなものが誕生している時点でおかしいと思わないかい?」
「人外と子作りしたやつが居るとか…?」
「そんなやつが居たらとっくに襲われている。あ、意味深な意味じゃなくてね?」
そんなこと分かってるわ!と自分も大声を出している男に、久我谷は話を続ける。
「恐らく、その子が向こう側の人間達が求めていた答えの一つなんじゃないかな」
「人外と適応した人間を作る…?」
「まぁ、それを作ったとして向こうは何をする気かは知らないけども、少なくとも人智を超えた力を手に入れられることは分かる」
「ならば自分達の世界でやれば良いじゃないですか。他人の世界をこんなことに」
「こんなことになるから自分達の世界ではやりたくなかったのさ」
「…」
「まぁ、こんなこと言っても信じる人間は居ないんだろうね」
コーヒーを飲み終わると、久我谷は椅子から立ち上がる。
「調べたいことが山程ある。私は当分研究所には戻らないよ。後のことよろしく」
「ちょちょ!いきなり何言い出してんすか!」
「うん?私の立てたこの仮説を証明する旅に出るのさ」
「旅って、金とかどうするんすか!」
「生憎と実家が富豪なものでね、金には困ってないんだ」
「脛齧りですか…」
「使わなきゃ勿体ないだろう、それどころかこの仮説を証明できれば世界が私に注目するし、人外についての謎や世界の謎の一つが解明される」
「…ほんとにぶっ飛んでますね」
「研究者は皆ぶっ飛んでる。ぶっ飛んでることを研究して証明するから研究者なんだ」
そう言うと、久我谷は研究室を出る。
残された男の前にある、久我谷のデスクの上は資料で散らばっている。
「せめて、片付けてから行ってくださいよ…久我谷さん…」
久我谷自身、自分が立てた仮説が本当であるかの自信は五分五分であった。
それでも久我谷は歩き出す。ぶっ飛んだことを研究して証明する研究者に、彼女は憧れたからだ。
外は明るく、少し肌寒い秋の季節が顔を出している。
久我谷は迷わずに、最初の目的地へと向かう。久我谷の、人外の正体を暴く長い旅が始まる。
あとがき
どうも焼きだるまです。
昨日ですが第十二話の時点でPVアクセス500を超え、1日のアクセスも初めて100に到達できました!本当にありがとうございます!これからも頑張らせて頂きますので応援と、人外をよろしくお願いします!では、また次回お会いしましょう!