表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋ふぅみ  作者: かみもと
7/11

努力を決意する立花美香

 私はあれから学校を休んでいた。ずっと寝込んでいた。前のズル休みと違って、熱も出た。15年間信じてきたものが崩れ落ちたのだ、こんなことになっても仕方がないだろう。

 そんな私を前に進ませたのは、親友を思う心だ。昨夜、菅沼天に頼まれたことを、引き受けてあげねばならない。親友として。


********************************************************


 スポンッ

 寝込んでいた私は、このスマホの通知音で目を覚ました。

 目を細めながら、スマホを覗く。

 誰だ、こんな真夜中にに……ってまだ20時か。寝すぎて時間の感覚がおかしくなっているようだ。

「っと、天からか」


『体調大丈夫か? 突然なんだけど、井上先輩の友達が美香のことちょっと気になってるっぽくて、私に美香を紹介してもらいたいみたいなんだけどいいかな??』


 はあ、めんどくさ。なにそれ、その男私に見合うほどの男なの? そんなことより、私に心配のlime毎日ちゃんと送ってきなさいよね。栞を見習ってよね!

 いやまてよ、井上先輩の友達ならかっこいいかもしれないな。イケメンはイケメンを呼ぶと古くから言うしな(言わない)。口元が自然と右上に上がる。


 フッ、親友の頼み事だ、引き受けてやらんこともないな。

 しょうがない、しょうがない。あー、しょうがない。

 口元のにやつきを抑えながら、スマホの画面をタップするのだった。


**************************************


 衝撃の真実を知ってから約一週間が経った。いや、本当に衝撃だった。私の人生映画化できるでしょこれ。


『全米が震撼……! 15年間明かされることのなかった衝撃の真実を見逃すな!!』


 これは売れる。間違いないね。

 くだらないこと考えてないでそろそろ学校に行きますか。

 玄関を出ると、白く暖かい光が私を包んだ。

 晴れやかな天気。大体一週間ぶりに外に出る私には、日差しが肌に刺さる。


 親友(そら)のためにも、今日は行ってやらなきゃな。放課後の井上先輩の部活が終わった後、先輩の友達と会うことになっている。

 決してイケメンのためではないんだからね…!

 ふんっ、とすかしたように鼻を鳴らす。


 そんなことを、考えているうちに学校に着いた。

 なんか長期間休んだ後に学校行くと、緊張するな。スクールバックの持ち手を握り締める。

 校門の前で止まっていると、何かがすごい勢いでこちらに向かってくる音が聞こえた。

 振り向こうとしたその瞬間、何かに抱きつかれた。


 何々、すごい鼻息。

 めっちゃ、ふごふご言ってんだけど。

 待てよ。この行動、とても計画的とは思えない。きっと私のあまりの可愛さに、自我を保っていられなかったんだわ……!

 なんだ、やっぱり私って可愛いんじゃん。きっと、天の言ってたことは何かの間違いなんだ。


「お、おい、栞離れろ」

 天の声が聞こえたと同時に、私から何者かが引きはがされる。

「って、ふごふご言ってたの栞かい!」

 振り返って見ると、天と栞がいた。

 なんだ、じゃあ天が言ってたのはやっぱり間違いじゃないのかも。ううっ


「美香ちゃん! お帰り!」

 栞が、半べそで声を震わせながら言う。天の拘束を離れ、もう一度私に抱きついてくる。

「8日と13時間12分42秒も会えないのはつらいよぅ」

「秒単位は流石にきしょい」

 私の胸元にうずまる栞を引きはがそうとするが、ふごふご言いながら離れる様子はない。。

 まあどうやら、栞にはずいぶん寂しい思いをさせたみたいだ。

 でも私の匂い嗅ぐの止めよ? 恥ずかしいから。


「栞、美香を見つけた途端、私でも追いつけないスピードで走って行ったんだよ」と天が笑う。

 その表情のまま、天が言葉を続ける。

「美香、お帰り。放課後、いい出会いだといいな」

 ん? 天の表情と、この声色、まさか、天は私のために、井上先輩の友達を紹介しようと……? 

 いや、天はわざわざそんなことしないか!

 って、栞の鼻水で、制服びちょびちょなんだけど!

「ほら、もうちーんして」

 私がティッシュを差し出すと、栞は勢いよく鼻をかんだ。

「ごめんね、汚しちゃって。あ、そうだ! 栞の制服と交換しよっか? そうすればお互いwinwinだよ!」

「いや、いいです」

 栞の提案に、真顔で拒否する。

 栞にとって何がwinなのだろうか、私には分からない。


「デュフ。お嬢さん、小生がその制服言い値で買いましょうか」

「いや、お前誰だよ!」

 急に現れたやせ型のチェックシャツを着た男に、思わずビンタをする。

「デュフ!」と声をあげながら、男が吹っ飛ぶ。


 私たちは顔を見合わせる。

 目で「こいつ知ってる?」「いや知らない」というような会話をして、逃げるようにしてそこを去ったのだった。

 まじで、誰だったんだよ!!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ