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恋ふぅみ  作者: かみもと
4/11

なんだかんだ優しい菅沼天

 グラウンドから、気合の入った掛け声が聞こえてくる。野球部、陸上部、そしてサッカー部。それぞれ、大会に向けて頑張っているのだろう。井上先輩頑張ってるかな。

 春風が私の少し熱くなった頬をなでる。


「ちょっと、天ちゃん。しっかり」

 栞が私の両肩を強くゆする。目の前には白目むき出しの美香。


「そ、そうだった! これどうすんの!? 救急車? 生き返れよ美香!」

 人が目の前で倒れる(しかも友達)という事態にパニック状態に陥る。

「落ち着いて、天ちゃん。これ多分寝てるだけだから」

「で、でも白目!」

「美香ちゃん、小さいころから目開けてよく寝てたから」

「でも、いきなり倒れて」

「この前もこんな感じだったから」

 そういえば数日前、私が井上先輩と帰った後、美香が倒れたんだっけ。それで、栞が美香を家まで届けたんだったな。


「前に倒れた時、おんぶして美香ちゃんの家までに送ったんだけど。柔らかかったなあ美香ちゃんのおっぱ」

 ん? なんかこいつ最後に言ったか。私は怪訝な目を向ける。


「あ、いやなんでもない。んでその時に、美香ちゃんの弟ちゃんが対応してくれたんだ。弟ちゃんが言うには、前にもショックで、気絶したように眠っちゃたことがあるみたいだよ」

「な、なるほど。体質的な問題で、急病とかではないんだな」

「そう、安心でしょ」

 安心なのか? 一応、心理的にダメージを負っているのは確かなので、安心はできないのでは。いやでも、実の弟がさほど心配していないのなら大丈夫なのか。


 私は、ほっと胸をなでおろす。

「というか美香、弟もいるのか。」

「あれ、天ちゃん知らなかったんだ。お兄ちゃんと弟ちゃんがいて、三人兄弟だよ」

 美香と栞は幼馴染で、小学校からの付き合いだけど、私は美香と栞と高校で知り合った。だから、美香と栞が知っているお互いのことを、私が知らないことは良くある。


「二人とも美香ちゃんの家族だけあって、モデルみたいだよ」

 栞が美香を見る目には、美香美人フィルターがあって、実際の容姿より美人に見えているようなので、本当に容姿が整っているかは信用できない。美香と同じ血が流れていれば、容姿がよく見える病気を、栞が患っている可能性はある。マジで。

 まあ、私には井上先輩がいるし、美香の兄がイケメンかどうかなんて興味ないけど。


「うう、かれ、ほし」

 美香がうめき声をあげる。どうやら本当に寝ているだけのようだ。

 というかこの子寝ながら泣いてるよ。


「美香ちゃん、今家まで送るからね。天ちゃんも来るでしょ?」

 栞の問いかけに言葉が詰まる。今日、先輩と一緒に帰る約束しちゃったんだけど。

 下を見れば、泣きながら寝ている美香。

 正面を見れば、きらきらと輝く瞳で私を見つめる栞。


 栞だけで、美香を送るのは大変だろう。一度は家まで送っているものの、女の子一人ではやはり危ない。何かあってからでは遅い。ましてや、栞だ。肌はきめの細かい白色。ロングで純白の髪。笑う表情はあどけなく、思案する姿は美しい。まあ要するに、天使だね。

 こんな子を一人にさせるなんてできない!

 ……もとはと言えば私のせいで? 美香がショック受けたんだしね。ごめん先輩、明日は絶対一緒に帰るから!


「一緒に行くよ。でも、一応保健室には寄っていこう、やっぱりちょっと心配」

「もちろん、この前も念のため寄ったしね!」

 栞は笑顔でうなずいた。

 私が男なら、いちころなんだろうな。


 私が美香の体を持とうとすると、「私に任せて!」と栞が親指を立てる。右上に口角を上げながら、じゅるりと涎をすすっている姿を隠してくれていれば、安心して任せられたのに。

 栞は颯爽と美香の体を背負い、私たちはそのまま教室を後にした。

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