驚愕の真実2
「おはよう、委員長。熱大丈夫?」
「無理しないでね」
休み明け登校すると、クラスメイト達が心配してくれた。ちなみに休んだ理由は体調不良ということになっている。委員長を務めるまじめな私が三日間も休んだためよっぽどひどい風邪だと思ったのだろう。
……なんかごめんね。
「ありがとう、もう大丈夫。みんなも風邪には気を付けてね」
私は基本幼馴染のあの二人以外清楚に接している。その方可憐な私のイメージにあっていると思うからだ。
それにしてもみんなの心配もできるなんて私優しいなあ。なぜ天に先を越されたのか不思議でならない。
漫画でよくある主人公席(窓際の一番後ろの席)ではなく、その右側の席に着くと、普段はあまり話さない左隣の席の山下君も心配してくれた。
「大丈夫? 立花さん」
見ると、可愛い私との会話に緊張しているのか顔が赤くなっている。
流石は私。この調子ならイケメンが告白してくるのも時間の問題。
「ええ、もう大丈夫。山下君も体調管理に気を付けて」と私は笑顔で返す。
「うん、僕も気を付けるよ」
「……。」
「……。」
無言の時間が流れる。
「ごめんね、僕から話しかけといて。僕話すの苦手で」
「ああ! いいのいいの私の方こそごめんなさい。気遣い本当にうれしかったわ」
……。
いや、めっちゃ気まずいんだが? どうするべきなのこれ。
「美香ちゃーーん!!」
ごふっ。
突然後ろから抱き着かれた。
いや、勢い強すぎ。ごふってなったよ? 栞の胸部にある柔らかいクッションがなければ危うく大惨事だ。別に嫉妬はしてませんよ。
だが、ナイスタイミング! これでこの気まずい時間から逃れられる。
「心配したよー。あの後、保健室いったら、寝てるだけって言われて安心したよ。私、おんぶして美香ちゃんの家まで送ったんだよ」
「おんぶで!?」
確かに、あの日いつの間にか家のベッドで寝ていた。
「ごめんね、ありがとう。てか、私んち歩いて三十分かかるんだけど!」
人一人担いで、徒歩三十分の道のり。男性でもつらいと思う。
「気合!」
栞は、フンッと息をならし、サイド・チェストのポーズをとる。
栞の発達した大胸筋を見て、下唇を噛み締める。それ以上胸を強調するなよ、大変なことになるぞ。
いや、本当に別に全然羨ましくないけど? 私は完璧プロポーションだし? そんな牛みたいな乳あっても邪魔なだけだし?
そりゃ世の中には極々少数、巨乳好きもいるけど、大多数Cが好きだから!?
「本当に心配したぞ、連絡も返さないし」
私がぼーっと考え事をしていると、栞の後ろから天も同意する。どうやら一緒に登校してきたようだ。
「本当にただの風邪か? 滅多に体調崩さないのに」
ほう鋭いな、お前のせいだ。
精神的疲労により三日間休まざるを得なかった。しかたないよね。
天の顔見たら、嫉妬心がぶり返してきた。天には罰を与えよう。略して天罰。私より先に彼氏を作るんだなんて重罪! 執行猶予は勿論つかないよ!
「ごめんね、充電切れてたみたい」
栞だけの目を見て答える。
「それで、ただの風邪なのか?」
天が質問を繰り返す。
「……。」
さて、朝読書の準備でもするか。おっと、この本じゃない。
「美香ちゃん? 大丈夫?」
「うん、もう平気」
私はニッコリ笑顔で言う。
「……もしかして無視してる?」
天が顎に手を当て考えるような姿勢をとる。
どうやら無視されていることに気づいたようだ。
「私何かしたか? したなら謝るけど」
私は尚も無視を続ける。
「どうして怒ってるの?」
栞も私と天の仲を心配したのか聞いてくる。
だが、いくら栞であっても理由は答えられない。
だって理由が理由なんだもん。
この超絶美少女の私よりも先に、天が先に彼氏ができたことが悔しかった。嫉妬心、ただそれだけ
。
嫉妬。エンヴィー。やはり七つの大罪にふさわしいですね。こんなの言えるわけがない。そしてもう引き返せない。
そうこうしているうちに、朝読書の始まりを告げるチャイムが鳴る。
チャイムと同時に担任の先生が、教室に入る。それを見た栞と天はしぶしぶ自分の席へ戻っていった。
朝読書も終わり、ショートホームルームの時間が来た。
「おはようございます。今日の連絡は三つです」
先生があいさつを済ませ、今日一日の連絡を伝え始める。
連絡を聞いていると横から私を呼ぶ声がした。
誰が呼んだのか気になって声のした方を向くと、驚いたことに山下君がこちらを見ていた。
真面目で私語などすることのない山下君が連絡の途中に話しかけてくるとは何事だろうか。
「どうしたの」
先生にばれないように静かに尋ねる。
「いきなりごめんね。でもどうしても言っておきたいことがあって」
山下君の頬がほんのり赤くなる。
「喧嘩……、あの、えっと菅沼さんと仲直りしたほうがいいと思う!」
「え? ……うん」
それだけ!? もっと重大な事を告げられるかと。
「ご、ごめんね、おせっかいだよね。でも、僕も最近まで幼馴染と喧嘩してて、それでも喧嘩中はずっと苦しくて。仲直りしたときは安心したし嬉しかったから。先生が話してる時に突然ごめんね。どうしても言っておきたくなって。休み時間は立花さん誰かと喋ってること多いから……」
山下君は自分と私を重ね合わせのだろう。そして自分が苦しかったことを私が経験するかもしれないと考え、忠告してくれたのだろう。山下君は優しいなとしみじみ思う。誰もやりたがらない事をひっそりとやってくれているのもたまに見るし。
「ううん、ありがとう。今日中には仲直りできるように頑張るね」
「うん」
山下君は照れたのか俯きながら一言返事をする。
私と天の喧嘩はいつもは時間が解決してくれるけど、たまには私から謝ってやろうかなと思った。まあ、今回に限っては天なにも悪くないからな……。
だが、謝るのは放課後だ! 私を置いて彼氏なんぞに現を抜かすなんてけしからん。全く女の友情はどこにやった。今日は自分が一体何をしでかしたのか反省してもらわねば!!
「今日のショートホームルームは終わりです。三つ目に話したことは重要なのでしっかり覚えておいてください」
先生が話を終えて教室を出ていく。
やばい、なんも聞いてねー。
助けて栞! ……寝てるよあの子。
くっ、天に頼る訳には、いかないよな。まじ、どうしよ。
放課後、クラスメイトが三々五々に教室から出る中、いい加減何に怒っているのか教えろと天が私の机まで詰め寄ってきた。隣には栞の姿もある。
ふふ、どうやらたくさん反省したようだな。だが分からなかっただろう。無理もない、何故なら一般的に見れば天は全く悪くないからな! 私は天に分からないよう、ニンマリと笑う。
……はい、ごめんなさい今謝ります。
因みになのだけれど、今日のショートホームルームで先生が話したことは、栞に天から先生が何を話していたのか聞いてもらって、その後栞から聞きました。持つべきものは友達ですね。
山下君の言う通り、天と一日話さないのは悔しいけど淋しく、さらに不便であると分かったので、早く仲直りすることにした。
まあ、彼氏くらい待っていればそのうち寄ってくるでしょう。私だもん。
「ごめん」
一言。上目遣いで天を見る。必殺! 美少女のはかなげな表情。
効果:その表情を見たものは、全て私の思い通りに動く。
「……あれだけ無視しといて急に謝るんだ。で、何に怒ってた訳?」
唐突な謝罪に動じることなく、天が真顔で尋ねる。
効かなかった……。
怖いから、その顔やめてよぉ。
やっぱそこ聞いちゃいますよね。でも、無理なんですよ、流石に彼氏できたことに嫉妬してたとか言えないですって本当に。
隠し事だってしますよ、人間だもの。
私は静かに視線を窓の方に向ける。
痛いところを突かれて天から目を逸らした訳じゃないですよ、私の目線はしっかりとそらに向かっていますから。
ああ、すじ雲がきれいだなあ。
「美香ちゃん?」
栞に呼ばれ、現実に引き戻される。
「ああ、うん、朝の占いで大切な人を無視するのが吉って」
私は適当に無視をしていた言い訳をする。
「え、私は大切じゃないの?」
すぐに涙を目に浮かべた栞が訴えてくる。
「いや、そういうことじゃなくてね。占いでは、ほら、一人でいいって言ってたからあんまり傷つかなそうな天にやってたってだけで……」
「そうなんだ! あー、よかった」
この言い訳でもしや騙し切れるか。一縷の望みをかけて、天を一瞥する。
だめだ、全然納得いってない! 天の表情はまるで金剛力士像の様に威圧感がある。
「何の占い見たの?」
天が目を細めながら質問する。
「えっと、あれ、早起きテレビ!」
「私も今日の朝見たけど、そんなこと言ってなかったよ」
さらに目が細くなる。もはや敵意を私に向けて睨んでいる。
嫌な汗が全身から噴き出す。
汗が下着と引っ付いて不快感が増す。
どうしてこうなった? 流石に謝罪が唐突すぎたかな。
朝は自分に非があると思い低姿勢だった天も、いまや顔と顔との距離5㎝でガンを飛ばしている。いや、近すぎでしょ、これキスの距離じゃん!
天相手に何故か照れてしまい、背中をのけ反らせる。
天の顔は、美少女の私から見ても整っている。褐色の肌に、口元には色っぽいほくろ。
ポニーテールを揺らしながら、私ににじり寄る。
あ、いい匂い。なんて考えてる場合じゃない。
考えが纏まらない上に恥ずかしさで思考停止している時、男の声が廊下から聞こえた。
その声が聞こえた瞬間、天の瞳は優しいものになり、すぐに私から離れてその声の方へ向かって行く。
天が駆けて行く方に視線を移すとそこには井上先輩がいた。天が今お付き合いしているというあのイケメン井上先輩である。
二人は私の死角になる所に移動してしまったが、何やら楽しげに話している声は聞こえてくる。
そんな二人を私は壁越しに羨望の眼差しで見る。それと同時に嫉妬心も膨れ上がっていき思わず下唇を噛んでしまう。
はあ、彼氏ほしい。
二人はもうあんなことやこんなことしたのだろうか。
もしかして壁越しにキスしていたりして。
『やだ、ここ学校だよ。それに教室には私の友達が……』
『大丈夫だってばれねーよ。ちょっとだけだから』
『もう、しょ、しょうがないなー』
ああああああああーーーーー!!!
何を考えているんだ私は! 脳内まっピンクか!? 恥ずかしい妄想を首を振って散らせる。
そうこうしているうちに天が教室に戻ってきた。
「いやー、ごめんごめん。何の話だっけ?」
天の視線が右上を向く。
すると、思い出したのかすぐに私の方を向く。
「ああ、そうそう。で、どうして怒ってた訳?」
しかし、その表情にもはや威圧感はなかった。
桃色の風が、天の中の黒い毒気をどこかへ吹かしたようだ。
これが恋する乙女……。
しかし、まだ私のピンチは終わっていない。この質問に正しい回答をしなければならない。
「えっと、それはね……」
どうやって切り抜けようか思索する。
「嫉妬したんじゃない? もしかして」
突如、栞が話に割って入る。
「どういうこと?」
天の私を見る目が栞へ移る。
栞の顔が自慢げに綻んでいく。
「天ちゃんが彼氏の方に行く時、美香ちゃん羨ましそうな顔でずっと見てたんだ。なんか、顔も真っ赤になってたし。きっと良い彼氏をもった天ちゃんに嫉妬しちゃったんだよ。きっと悪気はないし怒んないであげて」
名推理! 栞は意外と周りを見ている。
どうやら、変な妄想をしたせいで無意識のうちに顔が火照ってしまったようだ。
恥ずかしさのあまり、さらに顔が熱くなるのを感じる。
「……、まじ?」
「……はい」
もうごまかしようがない。私は正直に答える。
すると、天が微笑む。悪魔のようにニヤニヤと。
「へぇ~、ふぅ~ん、なるほどねー」
天が私の背後に回る。
「な、何、謝ったしこの話は終わりでいいじゃない」
背後から圧を感じながら私は言う。
すると天は私の右耳に顔を近づける。くすぐったい距離感に右半身のうぶ毛が逆立つ。
「美香も可愛いとこあるじゃん。ふふっ」
この女、完全に私をいじりに入ってやがる。羞恥と怒りで体温が上がるのを感じる
「もう、意地悪しないの」
栞がすぐさま天を止める。
もういいんだよ栞。私は椅子から立ち上がり、左腕を伸ばして栞を抑制する。
「え?」と戸惑いの声が栞から漏れる。
戦争だ……!!
私の方がイケメンの彼氏をつかまえてやる。
私は身を翻して、天を睨め上げる。
一瞬、天に動揺の表情が見て取れた。その一瞬を見逃すことなくさらに詰め寄る。
完全に私のペースだ。
そして言い放つ。
堂々と宣言するように。
「私がその気になれば彼氏なんて一週間あればできるよ。この可憐な美少女が本気を出せばね!」
「えー! 美香ちゃんまで彼氏作るのー!?」
栞がやだやだと、抱き着いてくる。
そんな栞の頭を撫でながら、私は言う
「ごめんね。でも私にもプライドってもんがあるんだ」
「二人に彼氏できたら、誰と一緒に帰ればいいの?」
栞が駄々をこねる。
「ごめんね栞、天とかいう奴に一泡吹かせてやらなきゃなの」
私が栞をなだめていると、天が半笑いで、横から口をはさむ。
「いや、そんなに心配しなくても、どうせできないっしょ」
「美香がモテてるの見たことないし」と意味の分からない言葉も加える。
「はぁ? 私がナンパやらスカウトやら告白されるの、私の隣で何度も見てきたでしょ!」
天の奴、私の美貌に嫉妬してるのか。
……おかしいな、何も言い返してこない。
数秒後「ん?」とだけ天の口から漏れた。
思っていた反応との違いに、私も思わず「え?」と呟いてしまう。
再び生じたしばしの沈黙の後、天が笑いだす。
「フフッ、真剣な雰囲気作り出して何言うかと思ったら、なんだよその中途半端なギャグ。すべり芸か? 笑っていいのか困ったぞ」
何を言っているんだこいつは。
「はぁ?」
「……ん、あれ、本気だった?」
少し切れ気味の私の反応に、天が困惑の表情を見せる。
というか、場全体が困惑している。
あれ、私なんかおかしいこと言ったかな。
「うーんと、とりあえず、整理しよっか」
先程まで取り乱していたはずの栞が、逆に冷静になっている。
その提案に戸惑いながら私と天も同意する。
といっても、この場を整理するのは簡単である。私が宣言したことが、真面目に言ったのか冗談として言ったのか、どちらか分かればいいのである。
無論、答えは『真面目に言った』である。そもそもなぜ冗談として受け取られたのか分からない。そのせいで、私も困惑してしまった。二人とも聞き間違えたのかな。
「まあ、じゃあ改めて言わせてもらうわ。容姿端麗、頭脳明晰、運動神経普通の私が、本気出せば、彼氏の一人や二人くらい簡単にできるって言ってんの!」
運動神経普通ってとこがポイントだ。男は全て完璧な女よりも、ちょっとくらい欠点のある女の方が好きなのだ!
「いや、容姿端麗ではないだろ」
天がツッコミを入れる。
え? そこじゃないでしょ。事実だし。
「いや、つっこむなら運動普通と彼氏の一人や二人のとこでしょ!」
自分のボケに自分でつっこむって恥ずかしすぎる。
「あ、確かにそっちもだな。でも、本物の美少女が隣にいるのに容姿端麗とかいうから、思わずそっちをつっこんじゃった」
本物の美少女? 天の言葉に疑問が残る。
「えっと、どういうこと? その言いようだと、私は美少女でないことになるのだけれど」
頭の上にあるクエスチョンマークが三個から十個くらいに増えた気がする。
「まあ、栞と比べたら、そうなっちゃうのも仕方がないだろ」
栞? 性格美人とかそういうことを言っているのだろうか。確かに栞は、明朗快活で誰にでも人当りがよく、優しい。その分ボディータッチが多い気がするけど、まあそんなに気にはならない。
「いやいや美香ちゃんの方が可愛いよ!」
手をパタパタと左右に振りながら栞が言う。
そうだよね、私は可愛いよね。分かる。
「そうだよ! 数多くのナンパやスカウトはどう説明するのさ!?」
「ナンパされてるのは美香じゃない。栞じゃん。」
考えると、ナンパやスカウトされるときにはいつも隣に栞がいたような……。天が言っていたことが本当なら、ナンパされていたのは、私ではなく栞?
いやいやいやいや、ありえないでしょ。私だよ?
「でも、兄貴は、私のこと可愛い可愛いってうるさいくらいに……」
「それは、ただのシスコン」
「でも…」
「いや、そんなうるうるした瞳でこっちを見るな。何も美香がブサイクと言ってるわけじゃなくて。あくまで、栞と比べたらの話だ。誰だってそうなる」
「そんな、照れること言わないでよ、天ちゃん。私は二人の方が、可愛いと思うな」
「栞、今までで何回告白されたことがある?」
天が問いかける。
「え、ちょっと分かんないかも」
栞は回数を思い出そうとする姿勢を見せたが、あきらめてしまった。
「そういうことだ、美香。現実をしっかり見るんだ。彼氏づくりは私も協力するから」
「いやでも、私だって先週告白されてたじゃん! 一緒にいた時だったから、天だって見てたでしょ!?」
「美香に告白……? もしかして、隣のクラスの岡崎くんか?」
「そうその人!」
「ぶふっ、なるほどなー」
天が噴出して笑う。
「なるほどって、どういうことよ」
「あのな、美香。あれも栞に告白してたんだ」
え???
「でも、私返事して……」
「そう、だからみんな困惑した。栞に告白してるのに、お前が返事するんかーいって。」
「……栞、本当?」
栞に真相を聞く。
「えっと、多分私にしてきたかな。いや、でももしかしたら美香ちゃんにかもしれないなー?」
栞が遠慮がちに言う。
「死にたい。……死にます!」
正気ではなくなり、窓に直行する私を栞と天が必死に止める。
「美香ちゃん落ち着いて! ここ一階だから! その行動は本当にただの奇行だから!!」
栞が何か言ってるが、何も耳に入らない。
あの時、岡崎君がすごい不満そうな表情していたのは、そういうことだったのか。
『なんだこいつ、告白が絶対成功すると思ってんか??』とか思っちゃた自分が恥ずかしい!
……気づかされてしまった、15年間の間違いに。点と点がつながった瞬間だった。
まさかとは思うが、もしかして、ひょっとすると私は美少女ではないかもしれない?
信じられない。でも、天が言ったことには筋が通っている。 くっ、殺したい、誰よりも可愛いと思っていたあの頃の自分を。
ぐすん、なんか涙が溢れる。
所詮私は人より少し可愛いだけ。美少女ではなく、少女に毛が生えた程度だったのだ。あれ、なんかちょっと汚くないかこの表現。いや、もうそんなことどうでもいいや。
なんか、ショックで意識が遠くなってきた。くらくらする。
うっすらと私を心配する声が聞こえてくる。
「ふひ…もう」
限界、少し眠ろう……。
「え、おい、美香」
「美香ちゃん!?」
遠のく意識の中、心配する二人の声が聞こえる。