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恋ふぅみ  作者: かみもと
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驚愕の真実

 授業が終わって、二時間程経っているが私と栞と天は今もなお教室にいる。特に用事があったわけではない。クラスのみんながそれぞれ部活に行ったり、遊びに行ったり、帰ったりするなか、私たちは何となく始めた会話が盛り上がって未だ教室にいるのだ。


「そういえばさ、日曜に行った新しくできたタピオカ店おいしかったよね」

 私はその日用事で来なかった、天にちょっとした意地悪でそう言った。


 すると栞は私の少し悪意の含んだ言い方に気づくことなく「それ! 大粒のタピオカに黒糖がよく合ってた」と感想を言う。

 肝心の天は、いつもなら何かしら言い返してくるのに「へー、私も行きたかった」と軽く流している。その表情には、何か余裕めいたものを感じる。


 ん? これは、何か匂うぞ! 臭い臭い臭い。 「私の方が充実した休日過ごしました」的な匂い……!!

 天の余裕に、胸がざわつく。


「次は天ちゃんも一緒に行こうね」

「いいね、予定が合ったら絶対行く」

 天の様子がやはりいつもと違う。もちろん天気のことではない、菅沼天のことだ。

 ……予定があったら?

 いつもノリがいい天がそんなこと言うだろうか。いつもなら、「いまから行こう、二人ばっかりずるいじゃんか」と言い出してもおかしくない。


 自分の中で一つの仮説を立てる。しかし、そんなわけはないと首を振る。そんなことはあり得ないと、心を静める。

「あれ、もうこんな時間か」

 黒板の右上にある時計を見上げた天がそうつぶやく。

 時計を見ると針が十八時半を指していた。窓の外はもううす暗い。確かにもうすぐ完全下校時間だ。こんな時間まで教室で雑談を続けるとは。


「えー、もうこんな時間」

 残念そうに栞が言う。

「そうだ! カフェかファミレスでも行こうよ」

 栞が提案する。

 別に今日は宿題もないし、私ももう少し話したいと思ったのでその提案に賛同しようと思ったその時。

「あ、ごめん! 今からは無理」

 天がそう言った。

「えー、天ちゃん今日も予定あるの?」

 栞が寂しそうに聞く。

「ごめん、……やっぱお前らには言っておかなきゃだよな」

 少し頬を朱に染めながら天が言う。


 嫌な予感がする。この感じ何となくわかる。

 先ほど浮かんだ一つの仮説が頭によぎる。

 ふと栞の方を見るが小首をかしげている、これから繰り出されるであろう天の衝撃発言に何も気づいていないようだ。

 だめだ、早く逃げなくてはこれ以上ここにいてはならない!

 私は椅子から立ち上がり、動こうとするが遅かった。

 悪魔の一言が天の口から発せられた。



「私、彼氏できたんだよね」



 雷が落ちたような衝撃。予想していたにもかかわらずこの衝撃。

膝が震えだし、目の焦点は合わなくなる。  

胃も痛くなってきた。


「サッカー部の井上先輩」


 ガチイケメンの人ぉっ! 学校の有名人!!!

 震えが全身に広がる。


 ありえない。


 ありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえない


 私より先に彼氏ができるなんて、ありえるはずが……。


「今日はさ、井上先輩と一緒に帰る約束してたんだよね。だから、ごめんね」

 可愛くウインクしながら謝る天。おまえ、そんなキャラちゃうかったやん! 私の知ってる天はもっとクールだったやん!! 衝撃からなのか、なぜかエセ関西弁が出てしまう。

 悔しさで舌を噛みちぎりそうだ。


「彼氏できたんだ! おめでとう!」

 私とは対照に自分のことのように喜ぶ栞。

「あ、でも……天ちゃんとはもうあんまり遊べなくなっちゃうの?」

 栞が涙目で天を見つめる。

 日曜日に天が来なかったことを気にしているのであろう。

 いつも週末は三人で遊びに出かけていたから。


クソッ、裏切り者。

「心配すんなって天、日曜日は空けるようにするから」

 はいダウト! UNOって言ってない! どうせ彼氏優先になっちまうんだ!!

「本当?」

 栞が上目遣いで天を見る。

「約束する」

 天が言った瞬間満面の笑みで栞が抱き着く。

「絶対だよ!」

 抱き着かれた衝撃で天の体がふらつく。

「う、うん。で・き・る・だ・け・空けるようにするな」

 ほら、保険かけた!


「あ、サッカー部の練習終わったみたい。私行くね。また明日、ばいばい!」

 窓からサッカー部が解散するのを見て、天は足早に教室を出た。

  

「いやー、まさか天ちゃんに彼氏ができるなんてね、びっくりびっくり」

「……。」

何も言うことができない。あれ、栞の声が遠くに聞こえる。体が浮くような奇妙な感覚が襲う。意識が……。


「美香ちゃん? おーい。ねえ、し、死んでる!?」

 その後、私は三日寝込んだ。

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