第58話 冒険は終わった
ラビリアはガレンでまだ見物したいとギャーギャー反対したが、私は魔法陣でアルクマールの王城に帰った。いつか、この陣の描き方をおばあさまに教えてもらわなくちゃ。
そして、みっちり両親に叱られた。
そういえば、叱られることを忘れていた。叱られるに決まっていた。
「何をしていたのです! この数週間!」
「お前は勝手ばかりして! クリスティーナ殿下はどうされましたと聞かれるたんびに、ビクビクしたんだぞ? ずっと具合が悪いで、ごまかしてきたんだ」
「ティナ! 勝手は許さん。私たちがどんなに心配したと思っているのだ」
「あなたみたいな子どもが、どうやって暮らしているのか本当に心配で、夜も寝られなかったわ」
ここは平謝りに謝るところだ。
「本当にごめんなさい。お父様、お母様、お兄様」
三人は、私のぐるりをむすっとした顔で囲んでいた。
「まあ、おばあさまがずっと監視を付けてくれていたから、全部、筒抜けでしたけど」
お母様が、ため息まじりに言った。
え?
ええ?
お母様が私を睨んだ。
「でなければ、こんなに長く放っといてもらえるはずがないでしょう? 一応、あなたが安全だってことがわかっていたから」
「まあ、楽しんでるみたいだったしね」
お兄様が、ちょっとだけ顔の表情を緩めた。
……と、言うことは家族に、エドとのアレもソレも知られている? は、恥ずかしい! 恥ずかしすぎる!
「ど、どうやって?」
お母様は、当たり前のようにラビリアを指した。
「おばあさまの秘密兵器よ」
ラビリアはキョトンとしている。本人はわからないのか。
「ラビリアの変身はおばあさまの魔法よ。おばあさまにはわかる。だけど、ウサギに戻ってる時は、よくわからなくて……」
よし。
バレてない。
裸のエドと寝てた時とか、全裸のエドに迫られた時とか、エドとキスした時とか、全シーン、ラビリアはウサギだった。もしくはその場にいなかった。
一瞬、冷や汗まみれになったが、助かった。
「でも、よかったわね。あなたのエドがガレンの王権を奪取したみたいだし」
「どうして知ってるの?」
お母様は、ホホホと笑った。父と兄もニヤニヤしている。
「隣国にはスパイが大勢います。それにあなたのエドも度々連絡をくれました。私たち、彼のスポンサーなんですから」
あ、資金援助を受けていると言っていたわ。
「でも、帰ってくるとは、いい判断ね」
お母様に褒められて、私はちょっと変な顔をしたと思う。
私はエドには黙って帰ってきてしまった。
あんなに愛していると言ってくれたのに。だけど、最近は連絡をくれなくなった。
いいのよ。
だって、私は冒険に出たのだと、ずっと言っていた。エドとの恋のためになんかでガレンに行ったわけじゃないの。
でも、母はきらびやかに笑って言った。
「あなたは賢いわね。もし、エドと結婚するにしても、アルクマール王女として嫁ぐ方がいい。それなら、ガレンに残っていてはいけないわ」
「さあ、ティナ。よく頑張った。おばあさまがそう言っていた。ゆっくりしなさい」
「そうよ。ガレンの王権奪取なんか、よく手を出したわね。すごいわ」
「しかも、それなりに成果を出した。すごいことだ」
私は、昔からの侍女たち数人が、目に涙を溜めて「大事なクリスティーナ姫さま」のお世話がまた出来るようになって嬉しいと歓迎する中を、変わらずきれいに準備されていた自分の部屋に戻った。




