表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
儚げ超絶美少女の王女様、うっかり貧乏騎士(中身・王子)を餌付けして、(自称)冒険の旅に出る。  作者: buchi


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/62

第27話 王都の屋敷

私たちは、魔法陣で、一挙に例のガレンの屋敷に行くことにした。以前、ラビレットを売っていたあの建物だ。



「魔法で移動できるなら、それが最善だ。森の中の移動なんか、時間の無駄だ」


目つきの鋭い少年はあっさり言った。


「ティナの言う通りだ。問題は王都なのだ」



「そのお屋敷は危なくないですか? 一度襲撃されたことがあるんですよね?」


ラビリアが用心深く確認した。


「そうだ。でも、その襲撃はガレンの王家と関係はないと思う。ただのがめつい商人が、ラビレット売りを狙っただけだと思う」


私も(うなず)いた。


「もし、魔法陣が(こわ)されていたら?」


それでも信用できないらしく、ラビリアが聞いた。


「行けないだけよ。この場所から移動できない」


私は言った。


「だから、安全よ。次に取る手段に困るけど」


私は元気よく簡易魔法陣を草の上に敷いた。


「さあ、エド、こっちへいらっしゃい。大丈夫。心配はいらないわ」


簡易魔法陣は便利だが、いささか狭い。私は、茶色いウサギを頭に乗っけた少年エドをぎゅうむと抱きしめた。


「王都の屋敷へ、連れてって!」



幸いなことに、ガレンの屋敷の魔法陣は完全に無事だった。


三人は王都の魔法陣についた途端、バラけて倒れた。

ラビリアは、ちょうどいい時にエドの頭から離れた。

でなければ、エドの頭を踏み潰すところだった。侍女の姿に戻ったからだ。


エドは魔法陣の威力にものすごく驚いたらしく、真っ赤になっていた。


「無事でよかったです、ティナ様」


ラビリアが、侍女服を()でながら言った。


「次は、この家がどうなっているか確認すべきね」


もう夜遅かったが、私たちは手燭(てしょく)を持って部屋を確認した。


襲撃してきた連中は、魔法陣の意味がわからなかったらしく、この部屋には汚い足跡がいくつかついていただけだった。


「下はどうかしら?」


恐る恐る降りていってみたが、机や椅子がひっくり返されたり、いくつかドアが壊されていたが、彼らは長居しなかったらしく、ほとんどそのままになっていた。


「使えるわ。ここをしばらく拠点にしましょうよ」


二階の食堂に私たちは陣取った。


「ティナ」


美しい少年が、まじめな青い目を向けて聞いた。


かわいい。


「手紙って、何通くらい出せるの?」


あんまり少年が可愛らしすぎて、私は身をくねらせた。


「そうね、一度に出せるのは十通くらいかな?」


思わず笑顔になってしまう。


「毎日?」


「毎日は厳しいかな。でも、何日かおきに出せばいいと思うわ。全部で何通くらい出したいの? エド」


「そうだな。俺も覚えている貴族の家がそう多くはないが……手紙を出すとなると、少なくとも宛先くらいは知っていないといけないよね?」


ラビリアがあくびを始めた。


「とりあえず、明日の朝でもいいんじゃないでしょうか? ここに人が住んでいるとは誰も思っていないでしょうし、ラビレットもポーションもないから、誰も襲ってこないと思います。みんな寝ましょう」


「そうね。睡眠は大事よね。さあ、こっちよ」


私は、エドを抱きしめた。なんて可愛いのかしら。


「寝巻きを出してあげる。一緒に寝ましょう。ベッドが一つしかないの」


「え? あの、ラビリアと寝れば?」


可愛い少年が真っ赤になった。


「ああ、お姉さんと寝るのが恥ずかしいのかあ」


私は寛大な気持ちになって笑った。


「大丈夫よ。三人で寝ましょう」


「いや、いいって」


「遠慮しなくていいわよ」


「あ、ほら、あんたって偉大な魔法使いなんだろ? ベッドや寝具くらい簡単に出せるんじゃないか?」


「こんな夜遅くに、めんどくさいこと言わないで。もう後は寝るだけなんだから」


「その、寝るのがですね……」


「子どもがごちゃごちゃ言うんじゃありません」


私はピシャリと言った。


あー、なんだか快感。今までずっと言われ続けてきたんだもん。逆に言うのって楽しいわ。


私もラビリアのあくびがうつってきた。

今日は大変だった。

だって、二回も魔法陣を使ったのだもん。その上、エドを可愛い少年に変身させたのよ。すっごくいい魔法の使い道だと思う。でも疲れたわ。


寝室に連れ込まれたエドは、それでもまだ抵抗していた。


「俺は一階の部屋でいいんだ」


「遠慮しなくていいの!」


すっかりお姉さんが板についた私は、たしなめた。


「いえ、そうではなくてですね……」


「あんなとこ、人が寝るところじゃないわよ。私は人非人じゃないわ。さっさと寝巻きに着替えなさい。でないと、お姉さんが脱がせちゃうわよ?」


エドは、それはそれで困るらしく自分で着替えた。


だが、まだ抵抗していた。


「狭くないか、そのベッド? 俺、下で寝るわ」


私はエドの襟首(えりくび)を掴んだ。面倒臭い。それに眠い。


「狭くないわよ。だってラビリアはウサギですもん」


もうラビリアは、いつもの茶色いウサギの姿に戻っていた。エドの目がまん丸になっていた。可愛い。


「ラビリアは、いつも私の足下で寝てるの。人は私たち二人しかいないから、狭くないわ」



人と一緒に寝るのって、あったかい。


なんだか久しぶりに熟眠した気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ