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花火大会②

「奏風先輩、目当ての屋台がすぐ見つかってよかったですね!」


 そう、あれからシャーピン屋さんを後にしてからものの数分でかのんが欲しがっていた食べ物が見つかった。

 俺の左手にはチキンステーキが入った袋、右手にはわたあめが入った袋を持っている。

 りんご飴は今、俺の横で美味しそうにかのんが齧っている。

 

 という訳で、特設会場まで目前と近づいていた。


「もうすぐで、会場に着くけどいい場所取れるといいな」


「へぇ、あっ、そうですね!綺麗に見える場所を探しましょう」


 辺りを見回して楽しんでいたかのんに、急に話しかけるとびっくりしていた。


「それより、何かやりたいものでもあったのか?」


「うっ…なぜそれを!?」


「俺の感かな」


 なぜって言われても、周囲を見渡している時、目を輝かせながら体の向きが動いているから。と言いたい所だが、ここは敢えて控えめに伝えた。


「感ではなくて、奏風先輩は私の事を熟知しているという事ですね!それは、私としては嬉しい事ですが、いつ観察をしていたのか少々怖い所ですね」


「おいおい、話がおかしいぞ。俺はまだかのんの事を熟知してないからな?それに、ほぼ毎日とは言わないけど結構な頻度で一緒にいるからある程度は観察しなくても分かるだろ」


 そう、別に変な話はしていない。

 かのんと俺はよく一緒に行動しているから、その中でかのんの事を知っていくのも必然。

 だけど、熟知まではしていない。


「それで、やりたいのはあそこにある金魚すくいなんですが…時間ないですよね?」


「まぁ、一回だけだぞ」


 確かに時間はない。

 だけど、五分で目当ての食べ物を買うことができたから残り五分だけ余裕がある。

 それなら、やっても大丈夫だと思った。

 あと、かのんの上目遣いに負けた。


「おじさん、一回お願いします」


「あいよ!お嬢ちゃん可愛いから一つおまけでポイあげちゃおうかな〜」


「ほんとですか!じゃあ奏風先輩、お言葉に甘えて二人でやりましょう!!」


 いやいや、明らかにかのんに二つあげてるだろ。

 ほら、おじさんが「お前は辞退しろ」的な感じでめちゃくちゃ睨んできてるし。


「いや、俺は苦手だからかのんが二回やってもいいぞ!」


「じゃあ、私頑張っていっぱい取りますね!」


「頑張ばれ!」


 俺が遠慮すると、睨んでいたおじさんも顔を緩めた。

 そして、かのんが取りやすいように凄くアドバイスしてる。

 屋台の人って、可愛い子が来たら態度が良くなって、男とかだと素っ気ない態度になるんだろう。

 たまに、カップル連れとかにちょっかい出しながらも、凄くおまけしてくれる焼きそば屋さんとか見たことあるけど。

 ここのおじさんは、可愛い子にしか反応しないタイプだな。


「あー、破れちゃった…」


「かのんは一気に入れすぎたんだな。ほら、もう一個あるから気をつけながらやってみよ!」


「はい!」


 今度は慎重にポイを水に入れて、金魚の下まで行くと、そーっと上にあげてそのまま勢いよく器に入れた。


「やったー!奏風先輩見ましたか?私のスマートに取る姿を!!」


「あぁ、見てたぞ。今度は綺麗に入って負担がかからずに破けなかったな」


 そう言って、俺はかのんの頭を撫でた。


「あの…それは嬉しいんですが、人に見られるとちょっと恥ずかしいです」


 かのんは頭を撫でられた事で、顔を真っ赤にしながら俯きながら伝えてきた。


「あっ、その、ごめん。これからは気をつけるよ」


 かのんは首肯して、おじさんの方に向き直す。


「おじさん、この子どうすればいいですか?」


「お嬢ちゃんはこの子、持って帰りたい?」


「持って帰ります!」


「わかった、ちょっと待っててね」


 そう言うと、おじさんはかのんから金魚を預かり袋の中に水とおまけを含めた計二匹を移し替え、口の部分を閉じて渡してきた。

 

「あいよ」


「ありがとうございます」


 受け取ったかのんは、嬉しそうに袋の中にある金魚を眺めていた。


「さて、そろそろ時間が迫ってるから今度こそ向かおうか」


「はい!もう周りを見ずに目の前しか見ません」


 俺とかのんは今度こそ、特設会場まで寄り道せずに向かった。

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