90話 現状
そして庭園に戻るべくまた視界は変わった。
けど!
出る場所!なんでレグルスの上なのよ!
「レグルス!」
「え?‥‥うわっマリン!?」
さすが。咄嗟に受け止めてくれたよ。
「ご、ごめん!レグルス。ありがとう。」
「いや‥‥それはいいが‥‥髪の色が違うよな?」
「うん。‥‥あの、降ろしていいよ?レグルス。」
「やだ。」
「なんで!?」
「今のマリンはいつも以上に可愛いからな。まだ近くで見ていたい。」
「ち、近すぎでしょ‥‥。」
「‥‥確かにこのままだと全体が見えないな。服装も変わってるみたいだし‥‥でも名残惜しいな‥‥。」
「な、何言ってるのよ!‥‥ほらみんな見てるから!恥ずかしいから降ろして!」
「え~‥‥‥‥あ。そうだ。折角マリンが腕の中にいるんだしな。」
「え?‥‥‥んむっ!?」
またレグルスは口付けてきた。それは数秒続いた。
私は後頭部を抑えられて動けなかった。
「‥‥‥っ!な、なにするのよ‥‥。」
「なにって口付け?」
「そっちじゃない!なんでしたのってことだよ!わざとでしょ‥‥レグルス。」
「勿論。マリンの照れてる可愛い姿を家族も見たいかなと思ってな。私がしたかったのが一番の理由だけどな。」
「~~~~レグルスの馬鹿ぁ‥‥。」
ぷしゅっと音が鳴ってそうな感じに顔が赤くなっただろう私はレグルスの肩に顔を埋めた。
「さすがに弄りすぎたか‥‥。心配掛けたんだからこれぐらい許してくれるだろ?」
「うっ。‥‥‥分かったから降ろして。」
「ああ。私もマリンを補充できて満足だからな。」
そう言ってやっと降ろしてくれた。
そして私は数歩下がって聞いてみる。
「どう?全体を見た感想は?」
『可愛いわ!』『似合ってるぞ。』
先に家族達が答えました。
「えっと‥‥そうですか?私としては恥ずかしいが先にくるんですが‥‥。」
「うん。すごく似合ってるよ!‥‥あれ?髪の色も違うね。戻るの?」
「はい。姉様。ちゃんと戻るそうです。」
「そっか。でもなんで姿変わったの?」
「精霊王にでも会ったか?マリン。」
『精霊王!?』
「あ、本当にご存知なんですね。‥‥はい。会いました。それで、この姿も精霊王の加護の影響だそうです。」
『加護!?』
「はい。精霊王が加護をくれました。」
「マリンが浄化魔法の使い手だからだな?」
「はい。」
「ある程度のことは聞いたのか?」
「はい。精霊王が教えてくれました。ここにある大樹のこととか。‥‥‥陛下。私が浄化魔法を使えると知ったから庭園に行く様に言ったんですよね?」
「ああ。まさか本当に精霊王がいて、加護までもらうとは思わなかったけどな。」
「やっぱり精霊王のことは夢物語程度に?」
「ああ。そう思っていた。」
「そうでしたか‥‥。」
「なあ、マリン。精霊王に色々聞いたんだろ?なら浄化魔法の使い手の特殊なところの一つも聞いたか?」
「はい。‥‥それもご存知なんですね‥‥。」
「父上。特殊とは?」
「浄化魔法はな、純粋で綺麗な魔力の持ち主しか使えない。そして、そういう魔力の持ち主は人を惹き付けるんだ。要はマリンの魔力に惹かれるってことな。現にレグルスもラルク達もマリンが人に嫌われるところを見たことないだろ?むしろ人気を集めてないか?」
『‥‥‥‥確かに‥‥。』
「だが、マリン。ここにいる全員、マリンの魔力に惹かれたんじゃないからな。そこは勘違いするなよ?」
「はい。分かってます。精霊王にも言われました。特にレグルスとシリウスとリゲルは家族とはまた違った感情を私に向けてると、でもそれも私の魔力の影響じゃないから疑ったら駄目だと。」
「そうか。ならいい。」
「さて‥‥恥ずかしいので戻していいでしょうか?」
『あ。』
「では。‥‥‥‥ふぅ。」
庭園に戻ってきた瞬間、ある程度元の姿に戻る感覚はなんとなく分かってたので目を閉じて集中するとすぐ戻った。
「ちゃんと戻ったね。もうあの姿にはならないの?」
「いいえ。‥‥姉様、それが浄化魔法使う度にあの姿になるそうなんです。」
「え!?‥‥可愛いし、似合ってたからいいんじゃない?」
「姉様‥‥他人事だからって‥‥。」
「現に私のことじゃないもん。」
「‥‥そうですね‥‥。」
「なあ、マリン。」
「ん?なに?3人揃って。」
私の側にレグルス、シリウス、リゲルが近付いてきた。
「さっき精霊王は俺達3人がまた違う感情をマリンに向けてるって言ってたんだろ?」
「?‥‥うん。」
「それは恋愛感情だって分かってるよな?」
「!」
「現状を知りたいんだ。マリンの気持ちがレグルスに向かってるのは分かる。俺達はマリンを抱きしめることすら許されてないからな。それでも俺達は、俺とリゲルはマリンを諦めたくない。だからマリンが俺達3人をどう思ってるのか教えてくれないか?」
「シリウス‥‥。本当に変わったね。最初はあんなに高圧的だったのに。」
「認めてもらえたのは嬉しいが、そうじゃなくて。」
「うん。ちゃんと言うよ。でも、その前に確かめたいことがあるんだ。」
『確かめたいこと?』
おっと。家族達もいるんだった。
‥‥‥このやり取り見られるってことか‥‥
‥‥‥でもちょうどいいか。
と最初に姉様に向き直る。
「まず、姉様。抱きついていいですか?」
「え?勿論!聞かなくてもいつでもいいわよ。」
「ふふっ。では遠慮なく。」
と、姉様に抱きついた。
‥‥‥姉様はこんな感じなんだ。
と確かめたところで、次はリリ様。
「リリ様もいいですか?」
「え?ええ。勿論。」
‥‥‥リリ様は姉様に似てるけど微妙に違う。
こちらも確かめたところで、次はベネトさんに近づく。
「ベネトさんは手握っていいですか?」
「は?まあ‥‥いいけど。」
‥‥‥ベネトさんはこんな感じか。
次にシリウス達のところに戻る。
「じゃあシリウス、私を抱きしめてみる?」
『え!?』
「い、いいのか?」
「うん。‥‥どうぞ。」
「お、おう‥‥。」
シリウスはふわっと遠慮がちに私を抱きしめたので、私も腕を回してみた。
‥‥‥‥平気だ。シリウスに抱きしめられてる筈なのに。
‥‥‥シリウスはこんな感じか。確かにレグルスに似てる。
「もういいよ。放して、シリウス。」
「あ、ああ‥‥‥平気なのか?マリン。」
「うん。不思議と平気だった。大丈夫だよ。‥‥リゲルも抱きしめてみる?」
「え?あ、ああ。」
リゲルも同じくふわっと遠慮がちに私を抱きしめたので、シリウスと同じ様に腕を回してみた。
‥‥‥‥‥リゲルも平気だ。‥‥ってリゲルは初めてか。
‥‥‥‥‥リゲルもこんな感じなんだ‥‥シリウスとレグルスに似てる‥‥。
「もういいよ。放して、リゲル。」
「あ、ああ。平気か?」
「うん。リゲルも平気みたい。‥‥レグルスはさっき抱きしめられてるから確めないよ?」
「え?今の流れは最後に私じゃないのか?」
「今言ったでしょ。さっき抱きしめたじゃない‥‥しかもなかなか放してくれないし。」
「はぁ‥‥そうか‥‥。」
「これは構ったら駄目なやつだぞ、マリン。」
「気付かれた‥‥」
「はぁ‥‥話戻すね。今の協力してもらったのは‥‥」
私は今感じてることを正直に話すべく口を開いた。