9話 ステータス改竄、そして家庭教師
家族に魔法を見せてから数日後、私は父様の執務室にいた。ステータス改竄の相談だ。
「父様。ちょっと気になったのですが、私は【ストレージ】がありますが、他の人は荷物とかどうしてるのですか?」
「ああ。それなら、魔道具があるんだ。「マジックポーチ」といって、容量によって物の大きさも値段も違うのがな。例えば一番安くて容量が少ないのが手の平の大きさの袋で、次は腰のベルトに通して使うぐらいの大きさのポーチ。で、最後に滅多に出回らないから一番値段が高く、大きさが背中に背負うぐらいの鞄があるな。でも一番安いのでも、金貨2枚はするぞ。」
えっと‥‥確か金貨1枚を日本円にすると10万円ぐらいじゃなかったかな?ってことは手の平サイズが20万!?
「えっ?そんなにするんですか!?」
「ああ。袋とかは普通の物なんだが、マリンも使える【ストレージ】を付与できる者が少ないからな。それだけ希少なんだ。だからほとんどの人は重くても背負うか馬車に乗せて運ぶな。」
「じゃあ私が付与魔法を使えたら好きなポーチとかに【ストレージ】を付与してマジックポーチ作れるのですか?」
「ああ。作れるだろうな。容量を増やしたかったらそれだけ生地も頑丈な物の方がいいがな。作りたいのか?」
「そうですね。その内作ってみたいです。」
「マリンには【ストレージ】があるだろ?作っても使わないんじゃないか?」
「まあ、そうなんですけど‥‥最初はストレージを使えるのを隠すための代用品があって、作れるなら作ろうかなとは思ってたんです。でも結局私は使わないだろうなと思うので、作れたら家族の誰かにあげようかなと考えてました。」
「なるほどな。そういう考え方もあるか。」
「あっ!すみません。話しが逸れてしまいましたね。ステータスの改竄ですが、結局最低限使うだろう魔法だけ表示させて、レベルを低く設定しても割と凄いままになりそうですよね?」
「そうだな。それはしょうがないだろうな。極力見せない方針は変えずにいこう。変更内容だが‥‥」
と一通り話し合い、纏まったところで。
「ありがとうございます。父様。」
「変更ができたら確認させてくれるか?」
「はい。分かりました。では部屋に戻りますね。」
部屋に戻った私は早速。
「【ステータス】。【創造魔法:ステータス改竄】」
よし!弄れそう!
[名前] マリン・フォン・クローバー
[種族] 人間族 [性別] 女性 [年齢] 五歳
[称号] 辺境伯家次女 (転生者) (神の御使い)
[レベル] 1
[体力] 200/200
[魔力] 3,000/3,000(30,000)
[能力] C(S+)
[魔法]
(創造魔法Lv.10) 空間魔法Lv.3(10)
火魔法Lv.1(10) 水魔法Lv.2(10)
風魔法Lv.2(10) (土魔法Lv.10)
光魔法Lv.2(10) (闇魔法Lv.10)
[スキル]
鑑定Lv.1(10) (武術Lv.10) (体術Lv.10)
(物理耐性Lv.10) 魔法耐性Lv.2(10)
[加護]
(創造神の加護Lv.10) (武神の加護Lv.10)
生命神の加護Lv.2(10) 商業神の加護Lv.3(10)
魔法神の加護Lv.2(10)
※()元々の表示
こんな感じかな?あとはこの状態を保てないと意味ないよね。やってみるか。
【創造魔法:プログラム】
発動条件:本人による「ステータスオープン」発言
発動内容:「創造魔法:ステータス改竄」使用後のステータス表示
と、後は
【プログラム】
発動条件:本人以外の者が「鑑定」使用時
発動内容:表示内容を「名前」と「状態異常」のみにする
これで私の本来のステータスを見られることはないよね。
早速父様に見せに行くと「これでも充分規格外だがな。」と苦笑いされた‥‥。
それから2ヶ月後。付き添いのセレス母様と上の兄様2人が夏休みを終えて王都に行って少し経った頃。父様からようやく冒険者の家庭教師が見つかったとのことで、私は再び父様の執務室に来ていた。
「そういえば、父様。実際に魔法を教わる時は全属性使えると言ってしまっていいのでしょうか?」
「う~ん。ステータスを見せるわけじゃないし、言っても大丈夫だとは思う‥‥。」
「分かりました。」
すると、ノックの音がして父様が返事をするとシャーリーが入ってきた。
「家庭教師の先生がいらっしゃいました。玄関ホールにお待ちですが、どうされますか?」
「俺は先に挨拶はさせてもらってるから大丈夫だ。マリン、早速教えてもらいに行っておいで。」
「はい!分かりました。では失礼します。父様。‥‥シャーリー、行こ。」
玄関ホールに着くと、2人の女性がいた。
一人は頭までローブで被われていてちょっとうつむいているので僅かに顔が見えそうで見えない。
魔法使いの人かな?
もう一人はローブの人より少し背の高い赤い瞳で綺麗な黒髪をポニーテールにしている人だった。
こっちの人が剣士さんだよね?この世界で初めて黒髪見た!
剣士さんの方から
「はっ初めまして!みっミラといいます!」
続いて魔法使いさん
「初めまして。リサと申します。」
「こちらこそ、初めまして。マリン・フォン・クローバーと申します。よろしくお願い致します。」
「よろしくお願いしますね。早速ですが、魔法の練習場を使わせて頂けると伺ってます。案内して貰えますか?」
「はい!屋敷の裏手にありますのでご案内しますね。‥‥シャーリー、屋敷の中突っ切った方が早いよね?いいのかな?」
「ええ。大丈夫ですよ。」
「ありがとう。じゃあ先生方参りましょうか。」
「「ええ。」」
「シャーリー、行ってきます!」
「はい。行ってらっしゃいませ。」
そして魔法練習場に移動後。
「あの。リサ先生。失礼だったら申し訳ないのですが、もしかしてエルフの方ですか?」
「ええ。そうですが‥‥ああ、挨拶した時に耳が見えたのですね。」
「はい。それでちょっと気になりまして。ローブで隠してるみたいなので伺っていいのか迷いましたが‥‥。」
「そういえばローブ被ったままでしたね。絶対に見せたくないとかではないのでお見せしますね。」
と言ってローブを頭のところだけ外して見せてくれた。
「催促したみたいになってすみません。‥‥‥わぁ!綺麗な髪ですね!ミラ先生の髪は格好いいが先にきますが、リサ先生の髪は別の綺麗さです!」
「構いませんよ。そして貴方は差別するんじゃなくて逆に褒めてくれるのですね。嬉しいです。」
そう言ってまたローブを被った。
「? 差別ですか?何故ですか?」
「たまにいるんですよ。エルフを差別する方が。」
「そうなんですね。私は差別する理由が分かりませんが。」
「貴方は是非そのままでいてくださいね。そろそろ本題に入りたいのですが、その前に私達は何とお呼びすればいいでしょうか?」
「はい。‥‥お2人共、私のことはマリンと呼び捨てで呼んでください。あと敬語も使わなくても大丈夫です。私が教わる立場ですしね。」
「だ、そうよ。良かったわね。ミラ。敬語苦手だって言ってたからね。」
「うん。じゃあ遠慮なく。改めてよろしくね、マリン。」
「はい!」
「じゃあまずはマリンの実力を教えてくれる?魔法は使える?」
「はい。えっと全属性の初級は全部使えます。あと、剣も女性の兵士さんに教えて貰ってます。」
「「‥‥全属性?」」
「はい。珍しいのは自覚してますのであまり言いふらさないで頂けると助かります‥‥。」
「言いふらしたりはしないけど‥‥とりあえず見せてくれる?」
「はい。」
そして的に一通り初級魔法を放った後。
「えっと、教えることあるの?これ以上はほとんど初級の応用とかなんだけど‥‥。」
「父様に今のを見せたところ、まず魔力制御を教われと言われました。」
「ああ。なるほどね。確かにそうね。じゃあ私はまず魔力制御の仕方から教えていくことにするわ。」
「じゃあ次は剣の腕かな。教えて貰ってるなら早速打ち合ってみる?」
「はい。お願いします!」
2人共訓練用の木刀を持って少し打ち合ってみる。
「そこまで!‥‥教えることなさそうなんだけど?」
「いえ。私が普段教わってるのは兵士さんです。兵士さんと冒険者で剣の使い方が違いますよね?」
「そうね‥‥場合によるだろうけど、違うか。それを教えて欲しいと?」
「はい。あと冒険者として必要なこととかを。学校で習うことだけじゃなく、現役の冒険者の意見を聞きたいです。」
「なるほど。それで家庭教師ね。でも辺境伯様の令嬢なんだから冒険者になる必要ないんじゃない?」
「最初はざっくりと世界を見て回りたいだけだったのですが、できれば人助けみたいなこともしながらがいいなと思いまして。それを父様に話したら冒険者はどうだ?と提案してくれたんです。」
「世界を見て回るの!?‥‥確かにそういうことなら冒険者か‥‥世界中にあるしね、冒険者ギルド。身分証明にもなるし。」
「はい。」
「じゃあできる限り教えていくわね。ただ、マリンはもう外で実際に狩りとかしても問題ないぐらいの実力はあると思うのよ。だから明日から森で訓練できる様に辺境伯様に頼んでみましょうか。」
「いいんですか!?まだ街の外に出たことがないので楽しみです!早速父様のところにいきますか?」
「ええ。行きましょ。」
3人で父様にお願いに行くと、予想してたのかあっさり許可してくれた。
必ず先生2人と一緒にという条件付きだが。
やっと外に出られる!
※2021,9,4 改稿しました。