88話 驚きの出会い
そしてレグルスの案内で城の敷地内にある庭園へ向かうと、聞いていた通り見事な庭園があった。
「うわっ‥‥‥‥‥す、すごい綺麗‥‥‥。」
「だろ?」
「す、凄すぎだよ!自分の語彙力のなさを後悔するぐらいだよ!綺麗ですごいしか言えないのが悔しいよ!」
本当に私の語彙力!!
折角花壇も綺麗に整えられてるし、花達も色とりどりで綺麗なのに!
「喜んでもらえた様でなりよりだ。」
「ねぇねぇ!近くで見ていい?」
「勿論。」
「やった!」
そして花達を見ていると‥‥
〈あれ?珍しい魔力の子がいるよ?〉
〈本当だ!〉
〈誰かな?〉
〈誰?〉
〈見たことないよ?〉
「え?」
目の前に様々な色の球体状の光がふよふよ浮いていた。
どうやらこの光から声が聞こえてきた様なんだけど‥‥
「どうした?マリン。」
「レグルス、この光なに?」
「光?」
「え?見えないの?」
「ああ。」
〈その子には私達は見えないよ。〉
〈あなたは私達が見えるんだね。〉
〈もしかして声も聞こえてる?〉
「うん‥‥聞こえてる。」
〈わあ!聞こえてるって!〉
〈うん!久しぶりだね!〉
〈うん!人間と話したの、久しぶりだ!〉
「え?人間って?あなた達は?」
〈精霊だよ?〉
〈そうそう精霊。〉
「え!?精霊!?」
〈そうだよ~。〉
〈あなたは?〉
「え?あ、私はマリンっていうの。」
〈マリン?〉
〈マリンって名前?〉
「うん。そう。」
〈じゃあマリン。ついてきて!〉
「え?ど、どこに?」
〈精霊王のところだよ!〉
「精霊王!?」
〈そう。精霊王がね、私達の姿が見える子が来たら教えてって言ってたの!〉
「そ、そうなの?え、えっと‥‥その前にあの子にあなた達の姿を見せることはできないかな?」
〈できるよ?〉
「じゃあやり方教えてくれる?」
〈うん。簡単だよ。‥‥‥こうやってマリンに触るだけでいいんだって、精霊王が言ってた。〉
そう言って私の肩に触れてくれたので、振り返って確認してみた。
「えっと‥‥レグルス、見える?」
「あ、ああ。見える‥‥その光が精霊なのか?」
「らしいよ。それで今から私、精霊王に会うみたい。」
「精霊王!?」
「うん。ちょっと行ってくるね。」
「あ、ああ‥‥。」
〈お話終わった?〉
「うん。」
〈じゃあ精霊王の所に行っていい?〉
「う、うん。いいよ。」
〈じゃあついてきて!〉
と言ってそのまま精霊達が庭園を飛んで行く。
私が精霊達を追いかけていると、やがて庭園の端に着き、見るとそこには一本の大樹があった。
〈ここだよ~!〉
〈精霊王様!連れて来ました!〉
ーよく来たな。清らかな魔力を持つ者よ。ー
「せ、精霊王様?」
な、なんか聞こえた‥‥私の頭の中に直接語り掛けてる?
ーああ。今そなたの目の前にある大樹に触れてくれるか?ー
「え?えっと‥‥こ、こうでしょうか?」
言われるがままに大樹に片手で触れると‥‥
ーああ。それでいい。今から私の所まで来てもらうー
と声が聞こえた瞬間、周りの景色が変わった。
「え!?ここ‥‥どこ?」
〈世界樹の森だ。〉
「え?」
私の前方、少し離れた場所にさっきのより大きな大樹があった。
そしてその上から声が聞こえたと思ったら私の目の前に声の主である緑の髪に黄緑色の瞳の男性が降りてきた。
「あなたが精霊王様ですか?」
〈そうだ。そなた、名は?〉
「マリンです。家名まで申し上げますか?」
〈いや。家名はいい。では改めてマリン。我が名は精霊王ユグドラシルだ。〉
ユグドラシルってそのまんまじゃん!
「えっと‥‥私はどうお呼びしたらよろしいでしょうか?」
〈呼びやすいので構わん。あと、その堅っ苦しい喋り方もやめてくれ。〉
「え?えっと‥‥分かった。‥‥これでいい?」
〈ああ。それで頼む。〉
「じゃあ質問していい?私はどうしてここに連れてこられたの?」
〈一つは浄化魔法を使える者しか来れないからだな。〉
「え?浄化魔法?」
〈ああ。浄化魔法はな、純粋で綺麗な魔力の持ち主しか使えない。世界樹はそういう者以外を寄せ付けんのだ。〉
「世界樹って、精霊王の後ろにある大樹?」
〈ああ。ちなみにさっきの木はこの世界樹を株分けしたやつだ。〉
「え!?あれで株分けなの?」
〈ああ。それで、マリンに来てもらったのはな、私の加護を渡す為だ。〉
「え?加護?‥‥精霊王の?」
〈ああ。マリンは今のままでも十分強いようだが、あの封印の中のやつを浄化するにはまだ強くなる必要がある。〉
「今より強くならないといけないのは聞いたけど、封印の中のやつって浄化しないといけないの?」
〈ああ。中のやつは当時、浄化魔法の使い手が直前に亡くなった為にやむを得ず封印したそうだからな。〉
「ん?今の言い方‥‥精霊王は見たわけじゃないの?」
〈ああ。見ていたら中のやつの正体も知れただろうが、生憎私はここから動けんのだ。〉
「当時の浄化魔法の使い手さんはなんで亡くなったの?」
〈私の加護を渡す程の魔力量がなかったんだ。だから戦いの最中に戦死したようだ。〉
「ここから動けないならどうやって戦死したことを知ったの?そもそも私みたいにここに来たの?」
〈ここには来てない。私が語り掛けても反応がなかったから連れてこれなかった。だから先程の株分けした木を運び、その者と話したのは精霊達だけだ。だから私は全て精霊達から聞いた。ちなみに浄化魔法は使えなかったが、その者の弟子が師匠の戦死を知らせてくれた。〉
「え?お弟子さんは浄化魔法使えなかったんでしょ?どうやって精霊達は知ったの?」
〈師匠があそこに木があるから自分にもしものことがあればそこで語ってくれと伝えていたそうだ。弟子は木の前でひたすら自分が見た限りで戦死までのことを話し続けていたらしい。〉
「それを精霊達が聞いて、精霊王に?」
〈そういうことだ。〉
「じゃあ次の質問。さっきここに連れて来た理由の「一つは」って言ってたよね?他にも理由があるって。それが加護のこと?」
〈ああ。〉
「加護はなんでいるの?」
〈マリンは今、浄化魔法を一つしか使えないだろ?〉
「うん。むしろ一つしか知らない。って‥‥ん?もしかして私が読んだ魔法書はさっきの話の浄化魔法の使い手さんかな?」
〈恐らくな。〉
「それで、精霊王の加護がないと使える浄化魔法はその一つだけなの?」
〈そんなことはないはずだ。〉
「ずっと確定じゃなくて曖昧な表現ばっかりなのは浄化魔法の使い手が少ないから?」
〈そうだ。‥‥というより私が知る浄化魔法の使い手は先程の話にあった者とマリンだけだ。〉
「え!?‥‥そんなにいないんだ‥‥。みんなの前で使っちゃ駄目だったな‥‥。」
〈だから実際、加護を渡すのはマリンが初めてだ。〉
「ねぇ。加護をもらった瞬間倒れるとかないよね?」
〈ああ。大丈夫だ。むしろ倒れないようにするためだ。〉
「え?私、神様達の加護あるのに倒れるの?」
〈まああくまで可能性だが、浄化魔法の使い手は色々特殊みたいだからな。自分の魔力に体が負け始めたりする。前のやつはそれもあって戦死した。〉
「え?でも前の人は魔力量が少ないって‥‥。」
〈ああ。だから体が負けるのは量じゃなくて質だ。マリンの場合は今のまま鍛えると量と質の両方で体が負ける。〉
「‥‥‥まさか初めて浄化魔法使った時、魔力量はさほど減ってないのに気を失ったのって‥‥」
〈ああ。魔力の質の方に体が驚いたんだろ。浄化魔法は光属性ではあるが、また別物の魔法だからな。〉
「それまでは普通の属性魔法だけだったから体は平気だったけど、いきなり浄化魔法使ったことに体が驚いた?」
〈ああ。〉
「じゃあ私に精霊王の加護は必要なんだね。」
〈そういうことだ。‥‥理解したか?〉
「うん。」
〈では加護を渡すからじっとしててくれ。すぐ終わる。〉
「うん。分かった。」
すると精霊王は手に真っ白な球体状の光を出して、私に向けた。
その光は服の上から私の体に入っていった。
〈これでいいだろ。〉
「今ので終わり?」
〈ああ。〉
「あんまり変化感じないね。」
〈感覚ではそうだろうな。だがステータスを見たら記載されているはずだ。〉
「そうなんだ‥‥。ステータスを見る勇気がまた湧いたら見てみる。そういえば浄化魔法の使い手は色々特殊って、他にもなんか特殊要素あったりするの?」
〈ああ。それはな‥‥〉
そして私は精霊王から聞いたことに大いに驚くことになる。