86話 笑顔の中心
王国側の全員が私の提示した条件をのむとのことで。
「そうですか。では私も元通りに戻ります。‥‥‥あ~~~疲れた‥‥やっぱり慣れないことするもんじゃないな~。」
『え!?』
「あ。そういえば皆さん。私が何故半分でも許す気になったか分かってないですよね?」
コクン
「ふふっ。やっぱり。‥‥‥簡単なことです。王国は私の生まれ育った国です。友人もいますし、何より私は王国が好きなんです。離れたくありません。それに私は皆さんを嫌いになりきれないみたいです。だからといって完全には許しませんけどね。」
「良かったな。お前ら。マリンに愛国心があって。マリンに好かれてて。」
「そうですね。」
「あと、私自身意地を張ってたというか、蚊帳の外だったことにいじけてただけなところもありましたからね。‥‥リリ様、マリア様。」
「「な、なに?」」
「意地悪してすみませんでした。」
「そ、それは私が悪いの。マリンちゃんは悪くないんだから謝らなくていいの!」
「そうよ!悪いのは私達の方なんだから。」
「そうですか。ではリリ様とマリア様も謝るのはここまでです。いつも通り笑って下さい。笑ってヒスイ兄様達と幸せになって下さい。」
「「マリンちゃん‥‥」」
「秋になって式が終わったらこう呼びますね。‥‥リリ姉様、マリア姉様。」
「「っ!‥‥うん!」」
「ふふっ。やっと笑ってくれましたね。まあ私のせいなんですけど。‥‥良かった‥‥‥父様。」
「なんだ?」
「ヒスイ兄様達や国王陛下達に話す時、私も一緒の方がいいでしょうか?」
「悪い。頼めるか?」
「はい。いいですよ。私の全属性とか話さないとですしね。話すのは陛下と王妃様。あと、宰相様にも話しますか?」
「う~ん。‥‥‥まあそこまでだな。」
「分かりました。」
「で、マリン。確認だが今日の親善パーティーどうする?」
「もちろん出席しますよ。招待して頂いてますから。」
「そうか。‥‥‥安心した。」
「ええ。天使は心から優しい人物ですからね。堕天使にはなりませんよ。」
「ちょっとレグルス!恥ずかしいって言ってるのにまだ言うの!?」
「ああ。私にとっては天使そのものだからな。あ。抱きしめていいって言ってたよな?」
と言ってレグルスはものすごく自然に私を抱きしめてきた。
「っ!‥‥‥言ったけど今なの!?」
「ああ。私はこの癒しを知ってしまったからな。」
「あ~!殿下だけずるい!」
「ずるくありませんよクリス様。私はいつもマリンと姉妹で抱きしめてるのを見ていて羨ましかったんですから。」
「なあ、レグルス。責任とってマリンを娶る為に抱きしめてるのか?」
「そんなわけありません。それならシリウスは2回もマリンに抱きついてますから!」
「「「あ!!」」」
「ちょっと、レグルス!?」
「え?‥‥あ。」
「え?ちょっと待って。シリウス王子、2回目いつよ?いつ私のマリンに触ったのよ?」
「え!?いや‥‥」
「「「あ~あ‥‥」」」
「レグルスが口を滑らすとはね‥‥」
「だな‥‥」
「悪い‥‥」
「3人共助けてくれないのか!?」
「だって‥‥ねぇ?」
「ああ。助けるなら全部話さないといけないからな。」
「なんだ?説明してくれないのか?」
「どうしよう‥‥話すと私がものすごく恥ずかしいんだけど‥‥。」
「だよな。」
「マリン、シリウス、リゲル、レグルス。話せ。」
「「「「‥‥‥」」」」
「は・な・せ!」
「うぅ‥‥‥しょうがない、レグルス。このまま私を隠して陛下達に話してあげて。」
「いいのか?」
「だって陛下しつこいもん。言うまで聞いてくるでしょ?」
「確かに‥‥我が父ながらごめん。」
「いいから。恥ずかしいから隠したままで。」
「ああ。父上、実は‥‥」
そしてレグルスはあの時の貴族科の授業とその後の放課後にあったことを話した。しかも事細かく。
「マリンと‥‥レグルス殿下が‥‥」
『口付けた‥‥?』
「はい。ちなみにその時が初めてじゃありません。」
『え!?』
「ちょっと!?」
「マリン。シリウス達にも黙ってるのは卑怯だ。‥‥言わせてくれ。」
「はぁ‥‥もぅ‥‥わかったよ‥‥いいよ。」
「ありがとな。‥‥‥去年私の様子が突然おかしくなった日があったでしょう?あの時ですよ。」
『あ!』
というわけでついでとばかりに去年のことも話し始めたレグルス。
私は恥ずかしさが極限状態だった。今私はレグルスの髪と同じぐらい耳まで真っ赤になっていることだろう。
レグルスはそのまま私が大泣きした時のことまで話していった。
はぁ~私、いつ顔あげられるかな‥‥‥。
「はぁ‥‥。去年マリンが言わなかった理由がわかったわ。レグルス殿下に責任を取って貰うことになるから婚約者にさせられるって思ったのね?皇太子の婚約者が例え辺境伯家の令嬢でも、冒険者になるのは許されないって思ったからよね?」
「その通りです、姉様。あと、気持ちがハッキリしないのに婚約者になるのはレグルスに失礼だからです。」
「そう‥‥」
「それで、父上。話してしまいましたが、私とマリンを婚約させるのですか?」
「‥‥いや。レグルスはマリンを落とすって言ったし、マリンを縛りたくないからな。マリンが自ら来るまで婚約はさせないよ。ラルクもだろ?」
「ええ。」
「はぁ~‥‥良かったぁ~‥‥レグルスが嫌な訳じゃないけど、冒険者はやりたかったから‥‥。」
「む。私はまだマリンの夢以下か。」
と言いながらレグルスは抱きしめていた腕を離し、両手で私の顔を包んで上向かせた。
「へ?‥‥ちょっと!まだ顔熱いから!」
「ああ。赤いな。」
「じゃあ隠させてよ!」
「やだ。」
「なんでよ!」
「この赤い顔は私のせいなんだろ?良く見ておこうと思ってな。」
「な!‥‥見なくていいから手離して!」
「どうしても離してほしいなら振りほどけばいいじゃないか。」
「‥‥‥‥むぅ‥‥レグルス、性格変わりすぎじゃない?」
「そうか?マリンは大抵のことは受け入れてくれるからな。嬉しいんだよ。」
「恥ずかしい‥‥‥恥ずかしすぎる‥‥姉様ぁ~。」
「私は助ける気はないわよ?恥ずかしがってるマリンが可愛いんだもん。私も見てたいしね。」
「‥‥‥‥」
「?‥‥‥マリン?」
「‥‥‥もう限界。レグルス。」
「え‥‥」
レグルスの手を掴んで離した。
「‥‥‥仕返ししてやる。」
「え!?」
今度は私がレグルスの頬を両手で抑えた。
「な、なに‥‥‥んむっ!?」
そう、今度は私が「仕返し」する為にレグルスに口付けた。
『あ!』
口付けること数秒。私が離れると‥‥
「ま、マリン!?」
「へへっ。仕返し。3回も4回も変わらないでしょ?‥‥‥ふふっ。レグルス真っ赤。」
「しょ、しょうがないだろ!?」
「仕返し成功だね。これで分かったでしょ?私がどれだけ恥ずかしかったか。」
「‥‥‥‥‥分かった。」
「な、なに‥‥これ。」
「え?姉様?」
「か」
「か?」
「可愛い過ぎるわ!」
「え!?」
「ですよね!?こんなマリン見て惚れるなっていうのは無理ですよね!?クリス様!」
「ええ!」
「え!?あれ!?‥‥‥やっぱり恥ずかしいからしばらく姿消します!」
『あ!』
レグルスの手から逃れたままだったのでゲートで消えました。
『あ~あ‥‥』
「2人で弄るから‥‥」
「だってリリ。マリンが‥‥」
「ええ。可愛かったのは全面的に賛同するわ。でも‥‥ふふっ。マリンちゃんも女の子ねぇ。」
「でも今度はちゃんと戻ってきてくれるって思えるわね。」
「ええ。‥‥マリンちゃんには感謝しかないわね。一人で大きなこと抱えてるみたいなのにそれを全く感じさせないなんて‥‥。」
「それを説明してくれるのは全てが終わった後ですか‥‥。昨日もどこで寝たのか教えてくれませんでしたね。」
「そうだな。‥‥‥とりあえず、昼の時間だし城に帰らないか?マリンなら自分で帰ってくるだろ?」
「そうですね。戻りましょうか。」
そして全員で城に戻る途中。
「兄さん。」
「なんだ?ベリト。」
「マリン嬢には感謝ですね。」
「ああ。レグルスのあんな生き生きした顔、初めて見たな。完全にマリンに心を掴まれてるみたいだしな。」
「ええ。ベネトも楽しそうでしたしね。殿下とは違う意味でマリン嬢を気に入ってるみたいですから。」
「だな。‥‥‥天使か。やっぱりぴったりだよな。」
「ええ。」
「マリン。帝国に嫁いで来てくれないかな~。」
「先程の様子なら希望は高いですよね。」
「だな。レグルスには頑張ってもらわないとな。」
「ええ。」
皇帝と元帥が兄弟で話していた。