81話 蚊帳の外
私がリリ様達にイライラし始めた頃。
‥‥‥‥‥ん?これ、なんだ?‥‥‥もしかして‥‥
「レグルス、ベネトさん。」
「ん?」
「なんだ?」
「この近くに山脈とかあります?」
「山脈‥‥‥?」
「‥‥‥あ。ここから南にずっと行ったところにあるな。」
「ワイバーンの目撃情報は?」
「あるな‥‥‥って!マリン、まさか!?」
「じゃないかと。私はまだワイバーンを見たことがないので定かではありませんが‥‥‥‥その山脈に一番近い街とか村は私達が今向かってるところですか?」
「‥‥‥‥いや。俺達が通り過ぎた街だ。」
「‥‥じゃあ、どうし‥‥ん?‥‥‥‥げっ!」
「どうした?」
「移動速度が地上を走ってる類いじゃなさそうだなって思って‥‥だからワイバーンかなって予測を立てたんですが‥‥なんかこっちに来てるような‥‥。」
「「「「なんだと!?」」」」
「本来は誰が呼んだって言ってみたいところですが、ちょうどいいです。こっちに向かってくるなら返り討ちにしてあげます。私がやっていいですか?」
「「「「どうぞ。」」」」
「ありがとうございます。‥‥‥そろそろかな‥‥御者さん止まってもらえますか?」
「畏まりました。」
あれ?今度はすんなり頷いてくれたな‥‥?
「この馬車にいる人達ではマリンしかサーチ使えないからな。指示に従ってくれと言っておいたんだよ。」
「え?そうなの?‥‥っていうか私、もしかして不思議そうな顔した?」
「ああ。」
「え?‥‥私、分かりやすい?」
「「「「ああ。」」」」
「そうなんだ‥‥」
そして馬車がゆっくり止まると、父様達の馬車も止まった。
私が馬車を降りようとすると今度はレグルスが手を差し出してくれた。
「ありがとう、レグルス。」
「当然だろ?」
「ふふっ。‥‥あ。そういえば私、王国と帝国の王子の手を借りたんだよね。お姫様みたいで贅沢だね。」
「ああ。そうだな。」
「どっちかと結婚したら本当のお姫様だぞ?」
「ふふっ。確かにそうですね。私が誰と結婚するかなんてまだ先の話ですけどね。」
と話していると、父様達が駆け寄ってきた。
「マリン!」
「あ。父様。予測ですが、今度はワイバーンっぽいです。」
「ワイバーン!?」
「はい。‥‥あ。数言ってませんでしたね。15ぐらいです。私がやっていいでしょうか?」
「え?一人でか?」
「はい。撃ち落とせると思います。万が一うち漏らしても兄様も姉様もいます。大丈夫ですよ。」
「う~ん。まあ‥‥確かにな。‥‥分かった。いいぞ。」
「やった!じゃあ、姉様、兄様、レグルス、ベネトさん、シリウス、リゲル。私が座標を決めて撃ち落とせるって言ったの覚えてますか?」
『ああ。』「うん。」
「あれを分かりやすく見えるようにしてやってみますので見てて下さいね。」
『分かった。』
「では。‥‥‥そろそろかな。」
「ああ。そうみたいだな。」
「ええ。」
「ふふっ。兄様、姉様。サーチの精度上がってますね。」
「本当!?」「本当か!?」
「はい!」
お、見えてきたな。
‥‥‥本当に誰が魔物に愛されてるのかな?
‥‥‥‥‥シリウスかリゲルだな。
‥‥私の可能性もあるか。
「さて。‥‥【ターゲットロック】」
狙いは下からだから首かな。空飛んでいいなら額狙えたんだけど‥‥まだ誰にも見せてないからなぁ‥‥
ターゲットロックを掛けたところが僅かに光ったのを確認した後。
「【氷槍】展開。」
面倒なので、普通に一回の魔法として出すと5本出せる氷槍を、飛ばす前に15本に増やして私の周りに展開させる。
「発射。‥‥‥‥‥お。」
うん。いい感じに墜落していった。ちゃんと印に向かって飛んでくれたし。
‥‥‥‥‥‥終わったかな?‥‥終わったみたいだな。
私は撃ち逃していないことを確認してから姉様達の方に振り返って告げた。
「こんな感じです。」
「‥‥‥‥本当に一歩も動かず倒したわね‥‥マリン。」
「便利でしょう?ターゲットロック。見えました?」
「うん。首のところで僅かに光ったやつよね?」
「はい。その通りです。‥‥ワイバーン回収してきます。」
そして私がストレージにワイバーンを回収し終わった後、すぐにまた馬車は走り出した。
「マリン。少しはスッキリしたか?」
「はい。少しは。」
「そうか。」
そして、私達は去年黒竜に襲われそうだった街で一泊して休息をとり、再び帝都へと出発した。
その途中ふと私はあることを思い出し、引っ掛かるものを感じていた。
あれ?そういえば、ヒスイ兄様がリリ様とっていうのはいいけど、次男のフレイ兄様に公爵家のマリア様はいいのかな?
フレイ兄様は辺境伯を継ぐ訳じゃないし、爵位を持ってる訳でもない。問題になるんじゃないのかな?
でも、結婚するって断言してたから解決してるんだよね?
‥‥‥‥‥‥あれ?私、自分で聞かないと教えてもらえないのかな?父様も姉様も教えてくれなかったし‥‥。
私だけ蚊帳の外じゃね?
結局、帝都の城に着くまで教えてもらえることはなかった。
明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い致します。