77話 友達
ギルドの解体場からギルドマスターの執務室に案内されて来たのだが‥‥えっと?
「あの‥‥何故皆さん静まりかえってるんですか?」
「お、マリン。‥‥いや。初対面しかいないんだぞ?」
「初対面だからこそ自己紹介したらいいじゃないですか。」
「あのね、マリン。私達は冒険者じゃないから本来会わない人なのよ?マリンがいないと気まずかったのよ。」
「そうですか?‥‥‥じゃあ、すみませんでした。」
「いや。まあいいんだけどな。‥‥マリン。多分だがマリンが連れて来た人達、とんでもない類いじゃねぇか?」
「さすが!‥‥はい。身分はとんでもない人達ですよ。」
「やっぱりそうか‥‥。まあとりあえずマリンが来てくれたしな。まずは俺からだな。ギルドマスターのレックスだ。」
「やっぱり私からよね。私はマリンの姉のクリス・フォン・クローバーです。」
「次は私ね。王国の第一王女のリリアーナ・ユラ・セレスティンですわ。」
「リコリス公爵家長女のマリア・フォン・リコリスです。」
「王国の第一王子のシリウス・ユラ・セレスティンです。」
「リコリス公爵家長男のリゲル・フォン・リコリスです。」
「帝国の皇太子のレグルス・アスタ・ルベライトです。」
「レグルス殿下のいとこのベネト・アスタ・ルベライトです。」
「身分はすごい人達だったでしょう?ギルドマスター。」
「すごいってもんじゃねぇじゃねぇか!なんつぅ面子連れてくるんだよ!マリン。」
「え?だって一緒に行きたいって言われたので。」
「だからって、マリンと姉以外王家の者じゃねぇか!」
「そうですね。ところで事情聴取はいいんですか?」
「はぁ‥‥分かってるよ。‥‥話してくれ。」
「はい。‥‥‥えっと、私達が歩いてる時に立ち塞がってきて、有り金寄越しなって言われて、やだって返したら殴り掛かって来たので返り討ちにしただけですよ?」
「それだけか?」
「はい。」
「一連の流れ、全部マリンか?」
「はい。喋ったのも、脅された被害者も返り討ちにしたのも全部私です。」
「そうか。‥‥‥これでここにいる他の誰かが怪我でもしてたら大変なことになってたな。ありがとな、マリン。ある意味助かった。」
「いえいえ。」
「他になんか言っとくことあるか?」
「いえ。」
「じゃあ、今の話で十分だ。もういいぞ。」
「分かりました。では失礼しますね。」
コンコン
「‥‥‥誰か来ましたね。」
「ああ。‥‥入っていいぞ。」
「あ。マリン様達帰りますか?」
「はい。」
「今、査定が終わりましたので代金をお持ちしました。」
「ありがとうございます。‥‥あ、できれば二等分にして貰えますか?」
「え?はい。分かりました。‥‥では少々お待ち下さい。」
「はい。」
「ん?マリン。今のコボルトのだよな?」
「そうです。」
「なんで2つに分けるんだ?」
「それは私が討伐したんじゃないからです。」
「え?」
ガチャ
「マリン様お待たせしました。どうぞ。」
「ありがとうございます。すみません。」
「いえいえ。たまにチームでちゃんと報酬を分けるところもありますから。」
「あ、そうなんですね。‥‥はい。シリウス、リゲル。」
「ああ。」「ありがとう。」
「え!?シリウス王子とリゲル殿なのか!?」
「王子!?」
「はい。私は2人が逃したのを倒しただけですよ。殆んど2人が倒しました。」
「な、なんで王子が‥‥?」
「え?やりたいって言われたので。」
「いや、それで王子にやらすなよ。」
「う~ん。シリウス達にとっては2年前の因縁なんですよ。2年前は何もできなかったけど、今は違うって自分の実力を見たかったみたいなので、協力しました。」
「何気に王子を呼び捨てだしよ。‥‥‥まあマリンが協力するなら安心できるか。」
「あの、マリン様。先程一緒にいらした方々のことをお姉さんと友人だと仰いましたよね?」
「はい。リリ様とマリア様が姉様の友人で、シリウス、リゲル、レグルスが私の友人です。‥‥ベネトさんは友人になるんですかね?」
「微妙なところだな。俺はマリンなら友人でもいいけどな。」
「私もです。‥‥というわけでベネトさんも友人ですね。」
「「‥‥‥」」
「‥‥‥マリン。友人が凄すぎるぞ。」
「身分が、ですよね?」
「ああ‥‥。」
「では代金も受け取れたので皆さん行きましょうか。」
『うん。』『ああ。』
「では失礼しますね。」
「あ。ああ。」「は、はい。」
戸惑ってるっぽい2人を残して私達はギルドを出た。
そしてとりあえず雑貨店に行くことになり、向かっている道中。
「ふぅ‥‥。さて、今のギルドマスターの反応で分かりましたか?私と姉様が屋敷から出る前に立場を考えてくれと言った意味が。色んな意味で驚かせるんですよ?」
それに各々返事してくれた後。
「クリスとマリンちゃんに慣れて忘れてたわ。」
「ええ。辺境伯家の人達が普通に接してくれてましたからね‥‥。」
「確かにそうだが、マリン、クリスさん。だからって、これから態度変えたりしないでくださいよ?」
「変えませんよ。友人ですから。ね?姉様。」
「そうね。むしろ今更変えたら変な気分だわ。」
「私もです。皆さんがご自身の立場を思い出してくれただけで十分ですよ。‥‥さ、行きましょうか。色々回るんでしょう?」
『うん!』『ああ!』
そしてその後はみんなで街を歩き、私達の誰かが興味が湧いたってだけの店に入ってみたりした。
それは夕方になるまで続いた。