72話 四神との契約
そしてみんなが寝静まった夜中。
私は自室から直接雪のところへ向かった。
「雪。」
〔マリン様?どうされたのですか?こんな遅い時間に。〕
「うん。昨日の事をね神様達に聞いてきたの。そしたら契約が雪と空だけだから封印が綻んだらしくてね。残りの玄武と朱雀とも急ぎ契約してきてって言われたの。」
〔!‥‥そうですか。それでここからそれぞれの場所に?〕
「うん。いいかな?」
〔はい。勿論です。‥‥しかし、マリン様に負担が‥‥。〕
「うん。そこも創造神様がなんとかしてくれたから大丈夫だよ。」
〔そうですか‥‥。ならば安心ですね。ではどちらから参りますか?〕
「う~ん。会ったことある玄武からにしようかな?」
〔畏まりました。ではマリン様。私に触れてください。〕
「うん!」
〔えっと‥‥触るだけで大丈夫ですよ?〕
「え?折角雪のところに来たんだもん、抱きつくよ。気持ちいいもん。雪。‥‥嫌ならやめるよ?」
雪の首に抱きついたらふかふかで気持ちいいんだもん。
〔いいえ。嫌ではありませんよ。では参りますね。〕
その瞬間景色が変わり、目の前に玄武であるでっかい亀さんがいた。
「あ。玄武だ。久しぶりだね。一年振りかな?お待たせしちゃったね。」
〔いいえ。御使い様、お気になさらず。‥‥白虎と来るとは思いませんでしたが。〕
「だよね。えっと、ゆっくり四神を回るつもりだったけど、状況が変わったの。」
〔昨日のことでしょうか?〕
「うん。そう。‥‥分かるの?」
〔ええ。奴の気配を僅かに感じました。朱雀も同じだと思いますよ。〕
「そっか。」
〔それで、御使い様は私と契約の為にこちらへ?〕
「うん。神様に封印を安定させる為に四神全員と契約してきてって言われたの。」
〔そうですか‥‥。分かりました。白虎と青龍の時と同じやり方で構いません。‥‥ちなみに四神は全員メスですよ。〕
「え?そうなの?‥‥‥私が男の子じゃなくて良かったね。なんとも言えない複雑な気分になるところだったよ。」
〔‥‥確かにそうですね。〕
「‥‥まあとりあえず名前だよね。‥‥‥う~ん。玄武さん黒くてカッコいいけど‥‥それを生かすと名前が男っぽくなるよね‥‥‥ん?そういえば四神はみんな黄色い目なの?」
〔はい。そうです。〕
「‥‥黄色、黒‥‥月かな。‥‥あ。朧はどう?」
〔朧ですか?〕
「うん。黄色の目を月に見立てて。「朧月夜」から朧。」
〔朧‥‥‥いい響きですね。では今後、私のことは「朧」とお呼びください。〕
「うん。よろしくね、朧。あ。私が自己紹介してなかったね。マリン・フォン・クローバーっていいます。御使い様よりマリンって呼んでくれると嬉しいけど、どう?」
〔‥‥主君では駄目でしょうか?〕
「む。空と同じ反応だ。‥‥‥いいよ。無理強いしたくないし。御使い様よりましだし。」
〔ありがとうございます。では私の魔石に魔力を流してください。〕
「うん。」
雪、空と同じく魔力を流すと、黒い魔石が私の手の中に落ちた。
その魔石をペンダントの台座に嵌める。
「‥‥‥ねぇ。ここがどの辺りか外を軽く見てきていい?」
〔〔え?〕〕
〔‥‥構いませんよ。〕
「ありがとう。すぐ戻ってくるから!」
そして朧がいた遺跡から出て空を飛んで周辺の街などの景色を軽く見て、戻った。
「お待たせ。大体の位置は分かったから朧の所にもこれで来れるよ。」
〔では最後に契約自体は済んでますが、青龍の所にも行きますか?〕
「うん。‥‥て、雪。青龍だけど、空でしょ?」
〔あ。すみません。青龍で慣れていたもので。〕
「あ。そっか。じゃあいいか。呼び方ぐらい好きな方で。」
〔ありがとうございます。‥‥では次は朱雀の所に参りますね。〕
「うん。‥‥いいよ!」
再び雪に抱きつきました。
そしてまた景色は変わり、今度は初めましての方です。
「ふわぁ~!きれ~!朱雀さん、綺麗だね!雪。」
〔‥‥そ、そうですね。〕
〔白虎、この方は‥‥まさか‥‥!〕
〔ええ。御使い様です。〕
「はじめまして。マリン・フォン・クローバーです。御使い様じゃなくて名前で呼んでくれると嬉しいな。」
〔えっと‥‥もしや、昨日の件でこちらに?〕
「朧の言った通りだ。朱雀さんも気配を感じたの?」
〔ええ。〕
「そっか。」
というわけで朧にしたのと同じ説明しました。
〔‥‥そうですか。では私とも契約にいらしてくださったんですね。〕
「うん。そう。‥‥‥ねぇ。四神全員なんでそんなに硬い喋り方なの?」
〔なんでと申されましても‥‥。〕
「昔からずっとその喋り方なの?」
〔〔はい。〕〕
「四神全員?」
〔〔はい。〕〕
「‥‥そっか。じゃあしょうがないか。言葉使いは諦める。
‥‥でも御使い様は嫌だよ?」
〔はい。‥‥では、主‥‥では駄目でしょうか?〕
「む。雪だけか‥‥名前で呼んでくれるの。‥‥いいよ、主で。‥‥じゃあ朱雀さんの名前だね。‥‥う~ん。何がいいかな‥‥?やっぱり火だよね。火‥‥炎‥‥あ。焔はどうかな?」
〔焔ですか?〕
「うん。見たままだけど、炎のことだよ。」
〔焔‥‥なかなか格好いいですね。ではこれからは「焔」とお呼びください。主。〕
「うん。よろしくね。焔。」
〔はい。‥‥では、私の魔石に魔力を流してください。〕
「うん。」
雪達と同じように魔力を流すと赤い魔石が私の手の中に落ちた。
その魔石をペンダントの台座に嵌める。
これで四神の魔石勢揃いだ。
すると、ペンダントが突然光り出した。
そして4つの魔石から白、黒、赤、青それぞれの魔石の色をした光が出て来て一つになり、ペンダントの中心に戻ってきた。ペンダントには5つの魔石が嵌まっている状態だ。
「‥‥‥‥‥え?なに、今の‥‥。」
《マリン。聞こえるかの?》
《え!?その声、創造神様!?》
《ああ。聞こえたようじゃな。四神全員と契約が終わったら儂と念話できるようにしたんじゃよ。真ん中の魔石を介して話しておるんじゃ。》
《あ。なるほど。》
《しかし、一発で念話を返してくるとはさすがじゃな。》
《え?どういうことですか?》
《いきなり中心に魔石が現れて驚いていたじゃろ?儂の声と分かった瞬間返したから‥‥無意識か?》
《え?‥‥はい。》
《‥‥‥まあよい。これでまた封印は安定する筈じゃ。すぐに動いてくれてありがとな。マリン。》
《いえ。》
《ではの。》
《はい。》
〔‥‥‥あの、マリン様?〕
「雪、焔。今の光、創造神様の仕掛けだったみたい。創造神様と念話できるようになった。」
〔〔え!?〕〕
「まあ驚くよね。」
〔それはマリン様の負担にはならないのですか?〕
「うん。大丈夫。私への負担軽減のついでに付け加えてくれたらしいから。私に害のあることはしないよ。神様達は。」
〔それもそうですね。〕
「さて、朧の時と同じように外見てくるね。」
〔はい。〕
そして同じ様にぐるっと見て回って満足した私は焔と雪のところに戻った。
「お待たせ。雪。」
〔はい。では、青龍‥‥空のところに行きましょうか。〕
「!‥‥‥うん!またね。焔。」
〔はい。〕
また景色は変わり、空のところです。
「空!」
〔主様!?どうされたのですか?〕
「雪と同じ反応だ。‥‥実はね‥‥」
と、朧、焔と同じ説明をする。
〔やはりそうですか‥‥。〕
「それで、空はもう契約してるけど、いつか行くって言ったでしょ?だから有言実行ってことで来てみた。」
〔そうでしたか‥‥嬉しいです。〕
「できれば雪の時みたいに自分で見つけたかったけどね。でも朧と焔の周辺は見てきたから今度は自分の力で来れるよ。空のところの周りも見てきていい?」
〔はい。勿論です。〕
「じゃあ行ってきます!」
そしてまた同じ様にぐるっと回って戻ってきました。
「ただいま。」
〔お帰りなさいませ。〕
「さて、目的は終わったし明日から旅行というか旅だし、そろそろ帰ろうかな。」
〔そうですね。一先ず西の辺境伯領へ戻られるんですよね?〕
「うん。そうだよ。‥‥今年は去年より賑やかだよ~!」
〔そうですか。私達はお側にいれないことが悔やまれます‥‥。〕
〔本当に!〕
「封印を守ってるんだもんしょうがないよ。‥‥でも気配は分かるんでしょ?」
〔はい。帝国だとなんとなくぐらいですが。〕
「そうなんだ。‥‥帰ろ?雪。流石に眠くなってきた。」
〔はい。‥‥では参りましょうか。〕
「うん。‥‥空、またね。」
〔はい。主様。〕
そして雪の封印の遺跡に戻った。
「じゃあ私も屋敷に戻るね。」
〔はい。〕
「またね。雪。」
こうして四神との契約が終わり、自室に戻った私は大人しく眠りに落ちるのであった。