70話 マリンの変化
城の一室で、重苦しい空気が漂っていたが。
「さて、私のせいで暗くなってしまったな。昨日のことはマリンが説明してくれたので十分だ。伝承のことを考えても私達には今のところできることはない。話を変えよう。」
「陛下?」
「元々しようとしていた話をしてないだろ?」
「あ。帝国行きの話でしょうか?」
「ああ。去年は結局辺境伯家は兄弟全員行ったんだったか?」
「はい。私なら皇帝陛下に勝てるんじゃないかと思ったらしく、陛下が負けるところを見たかったそうです。でも、私が陛下と意気投合したのは予想外だったみたいですが。」
「ああ。リリアーナから聞いたよ。私も驚いた。皇帝からの手紙にもマリンに負けた、悔しいとあったからな。」
「そうなんですか?‥‥‥あれで悔しがりますか‥‥。」
「?‥‥どういうことだ?」
「あれ?リリ様から聞いてないですか?最後皇帝陛下が馬鹿な魔法を使ったので私が怒って水魔法で気絶させたと。」
「‥‥‥聞いてない。‥‥え?気絶させたのか?皇帝を?」
「はい。あれは自業自得です。ね?レグルス?」
「ああ。そうだな。あれは父上が悪い。」
「そ、そうか。それで、今年なんだが‥‥シリウスとリゲルも行くと言い出してな‥‥。」
「はい?‥‥シリウス王子達は皇帝陛下に嫌われてるんじゃ‥‥?」
「そうなんだが‥‥それより一番の懸念はマリンだ。」
「ああ。シリウス王子達が行くなら私は行かないって言うんじゃないかと?」
「ああ。」
「はい。物凄く言いたくなりました。」
「言いたくなった?言わないの?」
「はい。姉様、考えてみてください。私去年、来年も帝国に行くと言いました。しかもレシピも考えておくと。それを反故にしたら皇帝陛下の被害者は誰になると思います?」
「えっと‥‥レグルス殿下とベネト?」
「はい。あと、父様です。」
「あ。」
「なので私は行かないといけないんです。行きたいですし。」
「でもそうなると‥‥‥ってそういえばマリン。シリウス王子達、ずっと近くにいるけど平気なの?」
『!』
みんな「そういえば!」みたいに驚いてる‥‥今更?
「う~ん。意外と平気です。去年は貴族科の授業でしか会わないのに離れた席にするほど避けてたのに今年は平気なんです。」
「なんで?」
「う~ん。多分ですが、今年はレグルスに突っ掛かってるので少しずつ耐性ができたんじゃないかと。あと、以前より話しやすくなりましたし。」
「そうなの?」
「はい。‥‥あ。今なら触れても大丈夫かもしれませんね。シリウス王子達、試してみますか?」
「「ああ!」」
私からシリウス王子達に近づくだけで父様達は驚いていた。
「分かりました。とりあえず手握ってみましょうか?分かってると思いますが、余計なことしたら叩きのめしますよ。」
「「あ、ああ。」」
それから2人の手を順番に握ってみる。
‥‥‥あれ?やっぱり平気だな。
最近近くにいたから大丈夫な気はしたけど‥‥。
意外だ。耐性がついたかな?やっぱり。
「‥‥‥やっぱり平気になってるみたいです。」
「‥‥ならマリン。シリウス王子達も友人に格上げして差し上げたら?」
「へ?リジア?」
「私が知る範囲だけど、最初に比べて態度が気安くなってるし‥‥なんて言えばいいかな‥‥言葉の刺がなくなってきた?みたいに感じたから。」
「そう‥‥なのかな?」
「うん。私はそう感じたよ。」
「う~ん。一番近くにいたリジアがそう言うならそうなのかな‥‥?」
「私もそう思うぞ?」
「レグルスも?」
「ああ。」
「‥‥‥2人がそう言うなら‥‥じゃあ、友人ならやっぱり呼び捨て敬語無しがいいですか?」
「友人にしてくれるのか?」
「はい。」
「「やった!」」
「なら、呼び捨て敬語無しで頼む。」
「えっと‥‥分かった。」
「では確認だがマリン。シリウス達も一緒でいいだろうか?」
「‥‥リリ様達も一緒ですよね?」
「ええ。行くつもりよ。」
「ならいいです。」
「私達と一緒じゃないと嫌なのね‥‥。」
「当然ですよ!レグルスとシリウスとリゲル。何回言っても言い合い始めるんですよ?それが授業中だけじゃなく廊下で出くわしただけでもですよ?それが帝国に向かう間続くと思ったら‥‥。私、何回説教しないといけなくなるか‥‥。」
「えっと‥‥私の弟がごめんなさい。」
「同じく弟がごめんなさい。」
「俺も、うちの殿下がごめんなさい。」
「‥‥‥‥‥今更ですよ‥‥‥‥。」
「‥‥マリン。頑張れとしか言えない。」
「リジアぁ~‥‥やっぱり辺境伯邸で留守番しようかな‥‥。」
「「「いや、頼むから来てくれ!」」」
レグルス、ベネトさん、父様の被害者になりうる3人の声が被った。
「‥‥はぁ‥‥‥鬱憤溜まったら陛下にぶつけてやる。」
「‥‥‥マリン。頼むから程々にな。」
「さすがに、しても怪我程度には抑えるよ。‥‥‥あ。でも攻撃力無くせば思いっきり打てるかな‥‥。」
「それでも思いっきりはやめてくれ‥‥。マリンの攻撃範囲は昨日学園を覆ったシールドぐらいはあるんだろ?」
「‥‥‥最高範囲分かんない‥‥。試したことないから。」
『え!?』
驚いてる‥‥‥そりゃそうか。
学園の広さ以上の範囲攻撃できますよって言ったようなもんだからね。
そういえば試したことなかったな‥‥。いつか荒野で一人の時に試してみようかな?
「なら尚更やめてくれ。」
「うん。道中のレグルス達次第だね。」
「「「くっ。」」」
「ぷっ‥‥あはは。大丈夫だよ。私もさすがに帝国を破壊したりしないよ。王国だけじゃなくて帝国も好きだからね。闘技場も壊さないから安心して。」
「‥‥だよな‥‥。良かった‥‥。」
「ただ、イライラして加減間違えたらごめんね?」
「「!」」
帝国の2人の顔が青くなった。弄りすぎたかな?
「2人共。マリンはそんな子じゃないでしょう?」
「さすが姉様。2人共ごめんなさい。弄りすぎました。どんなにイライラしてもこの前みたいに直接シリウス達に制裁をあたえるから大丈夫ですよ。それに一番はシリウス、リゲル、レグルスが喧嘩しなければいい話です。」
「「「‥‥‥」」」
「3人共?何故黙るのかしら?」
「「「‥‥‥」」」
「あ~‥‥分かった。そうなるのか‥‥。」
「私はよく見る光景ですね。」
そうして私達同い年一同とベネトさんが話してると、ふと陛下の表情が緩んでいるのに気付いた。
「‥‥‥陛下?なんか楽しそうですね?」
「いや。シリウス達が友人を得て、楽しそうなのが嬉しいんだよ。マリンには迷惑を掛けてばかりだが、ありがとな。」
「陛下‥‥‥。ふふっ。では、どういたしましてと言っておきます。」
「ああ。‥‥去年とは違って笑顔が増えたようで私としても安心した。」
「じゃあ。マリン。帰って準備しよ?」
「そうですね。姉様。‥‥陛下、ご用事は以上でしょうか?」
「ああ。ラルクだけ置いて先に帰っていいぞ。」
「はい。では失礼します。」
「ああ。」
子供達が去った後。
国王、ラルク、宰相、公爵だけの室内では。
「ラルク。マリンは凄い子だな。」
「ええ。」
「‥‥‥どう思う?私はマリンが御使いだと思うのだが。」
「はぐらかしましたね。‥‥本人の言う通り怖いからでしょう。マリンのステータスを見た我々の反応が。」
「だろうな。一瞬決意の顔をした気がするんだが‥‥。」
「ええ。私も思いました。‥‥‥いつかマリンの方から話してくれるのを待ちましょう。陛下。」
「ああ。そうだな‥‥。」
◇◇◇◇◇
それぞれの屋敷に戻った私達は明日からの旅の準備をしていたのだが、私は持って行きたいものはストレージに入れればいいのですぐに終わった。
そして私は一人屋敷を出て、教会に向かっていた。
昨日のことを神様達に聞くために。
えっと‥‥シリウス達は出さないつもりだったのですが‥‥。またまた予定変更です。
レグルス贔屓がすごいなって、なってきたので今度はシリウス達が可哀想に思えてきたので出すことにしました。
冒険者にはなってるのでまだ自由ですしね。