68話 天使?
マリンが気を失った後。
「「「マリン!」」」
「殿下!マリンは!?」
「大丈夫みたいだよ。リジア様。」
「気を失ってるだけか?」
「恐らく。マリンに頼まれたし、このまま保健室に連れて行くよ。」
「そうか‥‥。」
リジア、シリウス、リゲルもマリンを心配して駆けつけたが、大丈夫そうな様子に安堵していた。
「レグルスさん。マリンさんは‥‥?」
「気を失ってるだけだと思います。先生、私がこのまま保健室に連れて行きますね。」
「はい。お願いします。」
それから保健室に着いたが教師は留守だった為、ベッドにマリンを寝かせてレグルスは側の椅子に座った。
さっき「もっと強くならないと駄目だな‥‥」って言ってたよな?
‥‥‥マリンは一体何を抱えてるんだろうか‥‥。
私達には話せないことなのか?
起きたら話してくれるだろうか?
眠っているマリンを見ながら考えているとリジアが入ってきた。
「殿下。マリンはまだ起きませんか?」
「ああ。先生がいなかったからとりあえずそのままいたんだがな。」
「マリンの制服と鞄は持って来ましたし、私が代わりますから殿下も着替えて来て下さい。」
「ああ。分かった。頼む。‥‥あ。生徒会室にも寄ってくるよ。」
「あ。そうですね。お願いします。」
それから暫く保健室にはマリンとリジアだけだったのだが。
ガラッ
「「マリン!」」
「アクア様、ベネト様。」
「リジア、マリンは!?」
「寝てます。保健室の先生がいなかったので診察とかは出来てませんが。」
「何があった‥‥ってもしかしてあの黒い塊か?」
「はい。気付いたらマリンが動いてくれていて、助けてくれました。あの黒い塊を消した後、気を失ってしまってそれから起きないんです。‥‥‥あの、レグルス殿下は?」
「もうすぐ来るだろ。先にアクアさんに知らせに生徒会室に来てくれてな。着替えてから来るって言ってたからな。」
「そうでしたか。あ。アクア様。マリンの制服と鞄は持って来てます。」
「ああ。ありがとう。」
「とりあえず、このまま保健室にいてもしょうがないし、殿下が来たら帰ろうか。ベネトやリジアもうちにくるか?」
「よろしいのですか?」「いいんですか?」
「ああ。気になるだろ?」
「はい。」
「会長には許可は貰ってきてるから一緒に帰ろう。」
「「はい。」」
そして、そこに制服に着替えたレグルスも戻ってきた。
「アクア様、すみません。お待たせしました。」
「いえ。殿下もうちにきますか?ベネトとリジアも来ますが。」
「2人が行くなら私もお邪魔させてください。」
「では、早速帰りましょうか。」
「「「はい。」」」
今度はアクアがマリンを抱き上げて馬車へ向かう。
そして、それぞれの家の馬車で辺境伯邸へ向かった。
到着して再びアクアがマリンを抱き上げて屋敷に入ると。
「マリン!?‥‥アクア、何があったの!?」
「詳しくは分かりません。ですがリジア達の話によると、リジア達を守る為に魔法を使って倒れたようです。」
「クリス様。私達も詳しくは分かりませんが、マリンが動いてくれたので私達は無事だったとしか‥‥。」
「そう‥‥みんな、マリンを心配してついてきてくれたんでしょ?」
「「「はい。」」」
「じゃあ一先ずゆっくりしてて。アクアはマリンを部屋に。私は執務室にいる父様に知らせてくるわ。シャーリー、リジア達を応接室に案内してあげて。」
「はい。畏まりました。‥‥では皆さまこちらへどうぞ。」
その後、医師に見てもらったが異常なしだった。
いつ起きてもおかしくないとのことだったが、一向に起きることなくリジア、レグルス、ベネトも帰ることになった。
その後も起きることなく、時間が過ぎ。
その日の夜中にマリンはようやく起きた。
あれ‥‥?夜?‥‥‥あ~‥‥あのまま寝て今か。
心配させたかな‥‥。
制服と鞄‥‥はリジアだろうな。
あの塊‥‥封印がどうのこうの言ってたな‥‥やっぱり雪と空が守ってる封印だよね‥‥。
明日とかに神様に聞きに行くかな‥‥。
でも、レグルスには咄嗟に魔力使い過ぎたって言ったけど、体感では魔力をごっそり使った感覚はないんだけどな‥‥。なんでなかなか起きなかったんだろ?
‥‥‥‥‥‥‥‥ん?これか?これのせいか?
体に僅かな違和感があり、それが闇属性のものだったので「奴」の霧に覆われた時に入り込んだのだろう。
すぐに浄化すると、体が僅かに楽になり違和感も消えた。
これで大丈夫かな。‥‥‥‥もう一回寝るかな。
そして、翌朝いつも通りに目覚め制服に着替えていると、シャーリーが来た。
「マリン様!?もう起きて大丈夫なのですか?」
「おはようシャーリー。大丈夫だよ。それに今日は夏休み前だから午前中で学園は終るしね。」
「あ。おはようございます。‥‥ご無理はなさらないでくださいね。」
「うん。ありがとう。」
そして、朝食を食べに食堂に行くと同じく。
「「「「マリン!?」」」」
「はい。おはようございます。」
「「「「お、おはよう。」」」」
「ご心配お掛けしました。大丈夫ですよ。」
「本当に?無理してない?」
「はい。姉様。」
「マリン。詳しくは後で聞かせてくれ。」
「はい。父様。‥‥もしかしたら学園終わり、王城に呼ばれるかもしれませんね。」
「呼ばれるだろうな。昨日のことがなくても呼ぼうとしていたみたいだからな。」
「じゃあその時に話した方がいいかもしれませんね。」
「ああ。」
そして、学園に着き馬車を降りた瞬間。
「「「マリン!」」」
「あ。リジア、レグルス、ベネトさんおはようございます。」
「「「おはよう‥‥。」」」
「ご心配お掛けしました。大丈夫ですよ。」
「本当に?」
「うん。あ。リジア、制服と鞄。リジアだよね?ありがとう。」
「ううん。それぐらいしか出来なかったし‥‥。」
「十分だよ。あと、レグルスも空から落っこちた私を受け止めて、保健室まで運んでくれてありがとう。」
「いや。あれぐらい当然だ。」
そして、話してると次に来たのは‥‥
「「マリン!?」」
「あ。シリウス王子、リゲル様。おはようございます。」
「「おはよう‥‥。」」
「もう大丈夫ですよ。」
「「そうか‥‥。」」
「皆さん、ここで固まってると邪魔になりますし、教室行きませんか?」
『ああ。』「うん。」
そしてみんなで移動を始めたのだが、妙に学園がざわついていた。
ざわつきの中、何故か「天使」という言葉が頻繁に聞こえてきた。
「ねぇ。リジア。なんかざわついてない?」
「そうだね。なんだろ?」
「なんか「天使」とかいうのが頻繁に聞こえないか?しかもこっちに向かって。‥‥なんだろうな?」
「兄様、昨日私が気を失ったあとなんかあったんですか?」
「いや。特には‥‥なんだろうな?本当に。」
と、全員が頭に?を浮かべたままそれぞれの教室へ向かった。
私と同じクラスのリジアとレグルスと一緒に教室に入ると、クラスメイトが疑問の答えを教えてくれた。
『天使だ!』
「「「え?」」」
なに?
「えっと‥‥?」
「マリンさん。教室に着くまでに「天使」って言葉聞きませんでしたか?」
「あ。聞きました。リジア達となんだろうね?って話ながら来たところです。ご存知なのですか?」
「ええ。昨日、私も魔法科の実習の時いましたでしょ?」
「はい。」
「マリンさん達が去った後、あの時のマリンさんが天使の様だと言い始める方がいまして。それに同意する者が次々と現れまして、それが一気に広がってしまったようですわ。」
「へ?‥‥天使?‥‥私が?‥‥なんで?」
「ああ。確かにそう見えなくはなかったな。」
「ええ。確かに。」
「へ?リジア?レグルス?どういうこと?」
「マリンが黒い塊を消した時の光が後光が差してるみたいだったのよ。」
「それに加えて私達を見下ろした時の笑顔がまた慈愛に満ちているように見えたのですわ。」
は!?なにそれ!?すごいはずいんだけど!
「あ、あの時はみんなが無事みたいで安心したから‥‥‥。リジアぁ~。」
「はいはい。いらっしゃい。」
「ありがとう~。」
顔隠すためにリジアに抱きつかせてもらいました。
さすが理解者!
ガラッ
「皆さん席に着いてください。‥‥‥あら?マリンさん、大丈夫なのですか?」
「(リジア。体は大丈夫だけど恥ずかしくて顔上げられないって言って。)」
「はいはい。‥‥先生。マリンが体は大丈夫だけど別の理由で恥ずかしくて顔が上げられないそうです。」
「そうですか‥‥‥ああ。あの騒ぎですね。分かりました。ではそのままで聞いててくださいね。」
コクン
先生に見えたか分からないが一応頷いた。
そして、午前中で授業も終わり放課後。
一先ず生徒会室に行くと。
「お。天使が来たぞ。」
「‥‥‥ベネトさん。叩きのめしていいですか?」
「なんでだよ!」
「ここに来るまでも散々言われたんですよ‥‥恥ずかしくて堪らなかったんですよ。」
そう生徒会室に向かう廊下でも「天使だ」「天使よ」と言われ続けた。
最後は「天使様!助けて頂きありがとうございます!」だ。あれにはドン引きした。
恥ずかし過ぎる!やめて!
「まあそうだろうな。俺はカイトが教えてくれたんだがな。しかも俺も天使のお兄様って何回か言われた。」
「私もクラスメイトが教えてくれました。恥ずかしくてリジアに抱きついてなかなか顔出せなかったです。折角顔熱いの引いたからって生徒会室向かったらまたですから‥‥‥って兄様もですか!?夏休みの間でみんな忘れてくれないかな‥‥。」
「そうだな‥‥‥忘れてくれることを願うばかりだ。」
「なんかすみません。兄様。」
「いや‥‥集まったし、行くか。」
「はい。」
「え?行くって何処に?」
「リジア。多分馬車に乗ろうとしたら王城からの使いの人がいると思うよ。」
「え!?なんで?」
「多分元々夏休みの帝国行きの話をするつもりだったけど、昨日のことも聞かれるんじゃないかなって父様が。」
「あ。そういうことね。‥‥‥ん?私も行くの?」
「え?リジア、来てくれないの?」
「え?私は昨日のことだけなのよ?‥‥知りたいけど。」
「じゃあ行こうよ。」
「なんでそんなに気軽に言えるのよ‥‥。」
「え?う~ん‥‥慣れ?」
「慣れって‥‥‥伯爵家の私が王族のいるところに行けと?
‥‥‥精神持つかしら‥‥?」
「大丈夫じゃない?心配なら私の隣にいれば?」
「‥‥‥‥はぁ‥‥そうするわ。」
「やった!」
こうしてみんなで王城へ向かうことが決まった。