67話 急襲
冒険者登録が終わって再び月日が経ち、夏休み2日前。
いつも通りの魔法科の選択授業。
私は今年から魔法科を取ったので知らなかったのだが、シリウス王子とリゲル様も魔法科を去年から取っていたそうだ。
そして、そこに私とレグルスが加わると起こることは当然‥‥‥
「【火弾】‥‥‥くっ!」
「【水弾】‥‥リゲル、俺に火弾とはな。俺達の勝った方がレグルスと対決だからな!勝たせてもらう!」
「いや。私はどっちともやりたくないんだが。」
「「いいから待ってろ!」」
「はぁ‥‥‥。」
魔法科なので実習があり、たまに対戦するのだがよくこうなる。
そして、何気にシリウス王子達とレグルスはお互いに呼び捨て敬語無しで話すようになっていた。
「レグルス。2人を待っててもしょうがないし私とやる?」
「ああ。そうだな。」
「「何だと!?」」
「うるさいな‥‥。」
「マリン‥‥王子達に向かってうるさいって‥‥相変わらず容赦ないわね‥‥。」
「リジア。実際、無駄に喋りながら魔法放ってるんだよ?うるさいでしょ?」
「私は素直に頷けないんだけど。」
「とりあえず対戦しよう。マリン。」
「うん。」
そして、レグルスと2人で歩き出したのだが‥‥
《マリン様!》《主様!》
《え?雪と空?どうしたの?》
《今そこに!》
《ご注意下さい!》
《え?》
ゾクッとして空を反射的に見上げると、そこには黒い雲のようなものが集まってきていた。
「‥‥‥え?‥‥‥なに‥‥あれ?」
「「え?」」
あれは‥‥何かわかんないけどまずい気がする‥‥
直後私は身体強化を掛け、走り出し【土塊】で足場を作って駆け上がった。
最後の一段だけ足場として残し、下になった学園を覆う様にシールドを掛ける。
そして、そのまま再び上を見上げると黒い塊が出来ていて、バチバチと雷の様な音と光が轟いていた。
そして、次の瞬間一際大きな光が煌めいた。
まずい!
「【反射】」
直後大きな雷が私を襲ったが、別方向の空になんとか反射させることに成功した。
あぶなかった~!間に合った‥‥直感に従って良かった~。
と思っていた瞬間空から声が聞こえた。
ーほう。私の雷を防ぐ者がいるとはな。ー
「え?」
ーその力貰うぞ!ー
「な、なにこれ?」
私の周りを黒い霧が囲み始めた。
「「「「マリン!」」」」
下からのリジア達4人の声を聞きながら私は黒い塊に連れていかれた。
◇◇◇◇◇
《マリン様!》《主様!》
《雪、空。大丈夫だよ。この光は雪達の?》
《はい。》
《ありがとう雪、空。》
「さて、ここどこだろ‥‥?」
ーチッ!忌々しい四神か!ー
私の周りは雪と空の温かい光に包まれていた。
そして、いつの間にか目の前に黒い雲の塊が浮いていた。
「あなた、誰?」
ー四神を従えてるってことは御使いか。完全に封印が解けてない今じゃ無理か‥‥いつか封印が解かれた時にお前の体と力を貰うから覚悟しておくがいい。ー
「はぁ?だから、あなた誰よ?」
ーふん!いつか分かるだろ。‥‥興が削がれたな。憂さ晴らしに外の奴らでも殺るか。‥‥じゃあな。ー
そう言って黒い塊は霧の様に消えた。
ところが私は取り残されたままで。
《ねぇ。雪、空。これもしかしてこの塊消さないと出れないのかな?》
《恐らく。》
《これ‥‥さっき雷打ってたから水属性かな?とか思ったけど、この塊は闇っぽいよね?》
《主様。恐らく闇属性かと。浄化すればそこから出られると思われます。》
《あ。そうなの?う~んでも私、浄化魔法使ったことないんだよな‥‥。》
う~ん‥‥‥‥あ。まてよ‥‥?
確か、帝国で読んだ魔法書に‥‥。
あ。あったじゃん!
《ありがとう雪、空。出られると思う。》
《《いいえ。》》
さて、ぶっつけ本番だけどやってみますか!
範囲は見えないから勘と感覚任せだけど浄化だから問題ないでしょ!
「【聖光】」
空から光が降り注ぐと徐々に周りの景色が見えてきた。
ーチッ!忌々しい!ー
とさっきの奴の声が聞こえたが無視だ。
そろそろかなと周囲を見回し、下を見るとリジアを含めたみんなが心配そうに私を見上げていた。
良かった‥‥みんな無事みたいだ。
あ。シールド張りっぱなしだからか。
《お見事です。マリン様。》
《もう浄化止めていいよね?》
《はい。もう奴の気配もありませんし。主様。お疲れ様でした。》
《うん。本当に疲れた‥‥2人共。改めてありがとね、守ってくれて。》
《それが我々の務めですから。》
《‥‥‥》
《マリン様?》
私は浄化を止めた瞬間、意識が遠退いてきていた。
あ、まずいこのままだと落ちる‥‥。
◇◇◇◇◇
フラッとマリンが気を失った様に落下し始めた。
それと同時にシールドや足場にしていた土の塊も消えた。
「マリン!」
レグルスは風を操り、マリンの落下速度を落とし、ゆっくりと受け止めた。
「んっ‥‥‥レグルス?」
「大丈夫か!?マリン。」
「うん。‥‥‥ありがとう、助かった。」
「それは私達の方だ。」
「レグルス、ついでにこのまま保健室連れて行ってくれる?
‥‥さすがに魔力使い過ぎた‥‥。」
「あ、ああ。分かった。」
「ありがとう。(‥‥‥もう少し強くならないと駄目だな‥‥このままだとあいつに‥‥勝てない‥‥。)」
「マリン?‥‥‥‥寝てしまったか。」
マリンはレグルスの腕の中で空を見上げて呟いた後、眠りに落ちた。