66話 冒険者登録
そして、学園から帰ってきてうちにレグルス達も入り、応接室に集まった。
「殿下までマリンを怒らせるって何があったんだ?」
「ベネトさん。数日前に一緒の馬車で学園に行った時、王子達と会ってレグルスと抗論になりかけたことがありましたよね?」
「ん?ああ、あったな。」
「あれから、私とレグルスが同じクラスなので大体一緒に行動するんですが、廊下でも選択授業でも同じように顔を会わせたらすぐ言い合いになるんです。」
「うわっ‥‥面倒くせぇ。」
「ですよね!?この数日‥‥私は頑張って耐えました。しかし、一向に変わらないんです。レグルスも王子達の言葉を流せばいいのに普通に言い返すんです。それで、今日我慢の限界に達したので3人纏めて説教しました。」
「そうか。マリン。間違ってないぞ。むしろよくやった。王族3人を纏めて説教できるの、マリンだけだからな。」
「はぁ‥‥それ、リジアにも言われましたが、私好きで説教した訳じゃないですよ?むしろ無駄に疲れるので嫌です。」
「だよな。ごめん。なるべく聞き流すから。」
「はぁ‥‥。これで私の平和は戻ってくるかな‥‥」
「マリン‥‥王子2人と同い年って可哀想すぎる‥‥。12歳で平和を願うってどれだけ気苦労をしてるんだ‥‥?」
「シリウス王子達のせいですよ。」
「まあそうだよな。‥‥じゃあ長居してもなんだし帰るか、殿下。隣だけど。」
「ええ。」
2人が帰った後、
「あの、兄様。」
「ん?何だ?」
「今ふと思ったのですが、レグルスとベネトさんにはわりと早くゲートの存在を気付かれそうな気がするんですが‥‥どう思います?」
「‥‥‥‥週末か。うちの魔法の練習とかに参加したいって言いそうだよな。」
「ですよね。父様、どう思いますか?」
「アクアと同じだな。‥‥皇帝にも教えないといけないんだろうな。ベネト辺りが口を滑らしそうだ。」
「今年の夏休みに言っちゃいますか?多分また呼ばれるんですよね?」
「呼ばれるだろうな。‥‥‥とりあえず、殿下とベネトは気付かれるまでは言わなくていい。」
「分かりました。」
とりあえず、魔法の練習場と化した荒野へは私の部屋から直接行って帰ってくることになった。行くのは週末の1日だけなので引きこもってる体をとれるのだ。
いつかバレるんだろうか‥‥。
そして、それから月日は経ち、12歳になった私は冒険者ギルドにいた。
ギルドの受付嬢のところに行き、仮のギルドカードを出す。
「マリン・フォン・クローバーさんですね。本登録を致しますので、こちらに魔力を流してください。」
そして、出された水晶に魔力を注ぐ。
「はい。いいですよ。仮カード作成時の書類情報と合わせて本登録し、新しいギルドカードをお渡ししますので少々お待ち下さいね。」
「はい。」
そして、待ってる間が暇なので依頼ボードの方に足を向けると、そこに見知った顔がいるのに気付いた。
近付いてみるとやはり見間違いではなく。
「ミラ先生、リサ先生。」
「「ん?」」
「あ。マリン!久しぶりだね。」
「マリンだ。久しぶり。」
「はい!お久しぶりです。」
「あれ?マリンはなんでここに?」
「冒険者の本登録の為です。」
「マリンも12歳か‥‥‥おっきくなったね。」
「はい!今日からやっと冒険者です。」
「すみません。マリンさん、少しよろしいでしょうか?」
「え?はい。何でしょうか?」
「ギルドマスターからお話がありますので一緒に来て頂けますか?」
「え?ギルドマスターですか?‥‥分かりました。では先生達失礼します。」
「「うん。」」
「あれ?マリン、本登録って言ってたよね?」
「うん。なんでギルドマスターの所に行くんだろうね?」
「普通受付で終わるよね?」
「うん。」
「‥‥変わってないからかな。」
「だろうね。」
「あ。ギルドマスターってことは‥‥。」
「うん。」
そんな先生達の会話を聞くことなく私はギルドマスターの執務室に通されていた。
そして、そこには見覚えのある人にそっくりな女性がいた。
緑の髪・茶色の瞳。多分さっき会ったリサ先生の‥‥。
「あら?私に見覚えでも?私と会ったことあったかしら?」
「いえ。はじめましてです。ですが‥‥もしかしてリサ先生のご家族の方でしょうか?」
「ええ。冒険者にリサという妹がいるわ。」
「そうなんですね。‥‥あ。申し遅れました。私はマリン・フォン・クローバーと申します。」
「ご丁寧にありがとう。私は王都ギルドマスターのリア・フォン・セントラよ。クローバーってことは西の辺境伯様の?」
「はい。」
「じゃあリサが家庭教師した子かしら?」
「はい。そうです。先程依頼ボードの前でお会いしました。」
「あら。帰ってきたのね。」
「呼びに行きますか?」
「いえ。いいわ。私があなたを呼んだんだもの。」
「あ。えっと話があるとだけ言われて来たのですが、なんでしょうか?」
「あなたの本登録に関して聞きたいことがあるの。帝国と王国から魔物の討伐記録が出てるのよ。それも両国王自ら。王国はコボルトとコボルトキング。帝国はSランクの黒竜をね。事実かしら?」
「はい。そうです。‥‥帝国からもですか?」
黒竜‥‥Sランクだったんだ‥‥。
「ええ。12歳未満の子が討伐したと分かった時点で報告と周知が義務なの。国関係なくね。それで、本当は12歳未満の子が魔物の討伐をしてはいけないのは知ってるわよね?」
「はい。勿論です。」
「両国王もやむを得ずの状況だったこと、王国は王子と王女を救うためだったと、帝国は街を守るためだったと説明されてるからお咎めなしね。」
「はい。」
「それで、本来なら一番下のEランクからなんだけど、あなたは実力で見るとEランクにしておく訳にはいかないのよ。」
「では、どうなるのですか?」
「まず、仮カードを発行するときに学園の統括責任者様が推薦状を提出してきてね。本登録の際はBランクが妥当だろうとね。私も討伐記録見て、それぐらいかなって思ったし、実際今日マリンさんに会ってみて大丈夫だと判断したからいきなりBランクからよ。」
「え?統括責任者ってリコリス公爵様?それにいきなりBランクですか?」
「ええ。そのリコリス公爵様よ。Bランクは不服?」
「い、いえ。驚いただけです。」
「そう。」
その時ちょうど扉がノックされてギルドマスターが返事すると、さっきの受付嬢の方が入ってきた。
「マリンさん、ギルドカード出来ましたよ。‥‥カードに魔力を流すとランクと名前が浮き出てきますよ。」
と説明を聞きながら銀色のギルドカードを受け取った。
「わっ。本当にBランクになってる‥‥。」
「じゃあこれからは学園に通いながら無理のない範囲で頑張ってね。」
「はい!ありがとうございます!‥‥‥では失礼します。」
「ええ。」
そして、まっすぐうちに帰ると何故かレグルスとベネトさんもいた。
「あれ?レグルスとベネトさん、どうしたんですか?」
「ん?マリンのギルドカード見に来た。」
「正直ですね‥‥まあいいですけど。‥‥‥はい。私以外が触ってもなにも反応しないようになってるそうなので見せるだけになりますが。」
「‥‥‥ねぇ。マリン。私にはBランクに見えるんだけど。銀色みたいだし。」
「姉様、俺にもそう見えます。」
「私もそう見えるわ。」
「私もです。」
「俺も。」
姉、兄、母、レグルス、ベネトさんの5人で覗き込んでる状況です。えっと‥‥。
「まず、王国でリリ様達を助けた時のコボルトとコボルトキング。帝国では黒竜をそれぞれ討伐した記録と学園の統括責任者‥‥リゲル様のお父様ですが、推薦状を提出していたらしくて。それらを鑑みてギルドマスターがBランクと判断したそうです。」
『へ~。』
こうして冒険者ギルドへの本登録とギルドカードのお披露目?は終わった。