65話 鉄拳制裁
そして、授業終了後。放課後です。
リジア含めて教室には5人だけ。
「はぁ‥‥。3人共。とりあえず足、崩していいですよ。」
「ぐっ。」「うぁ。」「くっ。」
痺れてるよね~。その為の「正座」だもん。
「マリン。凄かったわね。この3人に文句言えるのマリンだけだからしょうがないけど。」
「でもリジア。怒ると無駄に疲れるから嫌なんだよ?」
「そうだね。せめて3人がマリンの不機嫌度が上がってるのに気付けばここまでにはならないだろうにね。」
「うん。さっきも何度叩きのめしたくなったことか‥‥。あ。3人共、今からわりと威力高めの私の魔法受ける?」
フルフルフル
3人共横に顔を振って拒否を示しました。
ちぇ。
まだ座ったままの3人の前にしゃがむ。
「はぁ‥‥。で、シリウス、リゲル。私がさっき言ったこと、ちゃんと届いた?」
「「!」」
「なに驚いてるの?今私達しかいないからだよ。今だけ。」
「そうか。‥‥うん。大丈夫だ。レグルスを見ていて焦っていただけだ。マリンに言われて気付いたよ。すまなかったな。怒らせて。」
「俺も大丈夫だ。皇太子殿下に負けたくないからな。マリン、ごめん。」
「うん。ならいいよ。でもさっき言ったのも本気だからね。無視するからね。」
「「ああ。」」
「レグルスも。分かった?」
「ああ。マリンを怒らせたら怖いのが改めてよく分かった。」
「ん?なに?もう一度怒らせたいの?」
「違う違う。さっきリジア様が言ってたが、私達を怒れるのはマリンだけだ。帝国と王国の王子の私達をな。」
「?」
「私達はいずれ王位を継ぐことになるが、その時私達がマリンに頭が上がらないっていうのはまずいだろう?」
「あ。」
「そういうことだ。」
「ふふっ。じゃあ頑張ってくださいな。王族の皆様。」
「「「ああ。」」」
「‥‥‥で、3人共そろそろ足、治った?動ける?」
「多分。」
「ああ。」
「恐らく。」
すると、3人が立ち上がろうとしてふらついた。リゲルは机の近くだったので机に手を着いて踏ん張れたが、残りのシリウスと、レグルスが目の前にしゃがんでいた私に向かって倒れてきた。
「え!?‥‥ちょっ‥‥んっ!?」
私の胸辺りにシリウスの顔が、私の顔にレグルスの顔がそれぞれくるように私を2人で押し倒してきた。
そうなると、またレグルスと唇が重なる。
は!と気付いて先に退いたのはシリウス。
すると、周りの2人と一緒に私達を見る訳で。
「「あっ!」」
「え?‥‥あ!」
「あ!‥‥ご、ごめん。マリン。」
と、すぐにレグルスも退いてくれたが。
「シリウス‥‥レグルス‥‥2人共‥‥一度ならず二度までも‥‥‥!」
「「ま、マリン!?」」
「覚悟はいいわよね~?」
ひぇっ。って声が聞こえたが知らん。
拳に魔力を瞬時に纏わせて2人のお腹に両手で同時に鉄拳制裁をお見舞いしてあげた。
「「ぐぁっ!」」
2人共気を失った。
「‥‥もう!全く。リゲルは耐えたのに!」
「いや‥‥今のはしょうがないんじゃ‥‥。」
「しょうがなくないよ!前じゃなくて後ろに倒れればいいじゃない!」
「あ。それもそうね。‥‥‥で、どうするの?この2人。」
「む。‥‥ものすごく不本意だけどほっとく訳にもいかないか‥‥しょうがない‥‥【ヒール】(×2)。」
「‥‥‥ぐっ。」
「‥‥‥うっ。」
「強姦まがいの2人共~?起きました~?」
「「‥‥‥」」
「私になにしたか分かってますか?帝国と王国の王子様?」
「「‥‥はい。」」
「では私の鉄拳制裁は?」
「「当然のことかと。」」
「はい。そうですね。許しませんけど。‥‥頭打ったじゃない!もう!‥‥あ。自分にもいけるかな?【ヒール】。‥‥あ。効くんだな自分にも。」
「え?初めて試したの?」
「え?うん。そもそも怪我しないように気をつけてたから自分に試す機会がなかったんだよ。」
「そうなの?」
「うん。他の人達を治してばっかり。‥‥それで、2人は怪我はしてない?」
「「ああ。」」
「ならいいや。さっきのは許さないけど。」
「ねぇ、マリン。」
「なに?」
「さっきさ、レグルス殿下に口付けられてたよね?」
「うっ‥‥‥うん。」
「マリンも貴族令嬢だし、こうなったらレグルス殿下が責任を取ってマリンを嫁にもらうべきじゃない?」
「「「「え!?」」」」
「え?むしろ当然じゃない?そんなに驚くこと?」
「「「「‥‥‥。」」」」
こうなるかなっていうのもあったから父様達にも言わなかったのに‥‥。
私の自由が‥‥‥。
「マリン?レグルス殿下じゃ嫌なの?」
「嫌じゃないよ。‥‥でもリジアは知ってるでしょ?」
「あ。そっか。自由がなくなるか‥‥。」
「そうなの!だからリジア。お願いだから今の見なかったことにして!もしくは誰にも言わないで。」
「私はいいけど‥‥。」
「‥‥‥3人の記憶を飛ばすか‥‥。」
「サラッと物騒なこと言わないでくれ!」
「ああ‥‥もう。何でこうなるかな‥‥‥‥よし、3人共。話がある。」
「「「お、おう。」」」
私は3人に世界を見て周りたいとか諸々、婚約者になりたがらなかった理由の一つを話した。
「ああ。確かに王族の婚約者が冒険者になるとか世界を一人で旅とかできないよな。」
「でしょ?だから3人共。私に時間を、世界を見る時間をください。帝国も王国も私が見たのはほんの一部。他の国も見たいの。だから‥‥」
「ああ。いいよ。マリンが満足するまで黙ってるし待ってるよ。」
「ああ。俺も時間を貰ってる身だからな。誰にも言わない。」
「俺も同じく。誰にも言わないよ。言ったら皇太子殿下にマリンをとられるからな。」
「ああ。確かにな。‥‥‥そういうことだ。安心して冒険者になって世界を見てくるといいさ。」
「3人共ありがとう。‥‥あ。でも世界を巡る猶予は最大で5年しかないな。」
「あ。そうだな。」
「なんで?」
「父様がね、20歳になる時までに結婚しなかったらお見合いさせるって。それで、学生の間は他の国に行き辛いでしょ?だから5年。」
「へ~。叔父様がそんなこと言ったの?」
「うん。しかも20歳制限は兄弟全員。」
「ああ。兄弟、仲いいからね。」
「そういうこと。」
「じゃあマリン。私達4人共今あったことは誰にも言わないから安心していいからね。」
「!‥‥‥うん。ありがとう。」
「久しぶりにマリンの笑った顔見たな。」
「ああ。」
「マリンはそうやって笑っててくれ。」
「じゃあもう3人で口論になったりしないよね?」
「「「‥‥‥」」」
「何で黙るのかしら?」
ガラッ
「あ。マリン達ここにいたのか。‥‥‥何やってるんだ?そんなところに座り込んで。」
「あ。兄様。3人に制裁を加えて説教してました。」
「え?殿下もか?」
「はい。そうですよ。ベネトさん。」
「3人共なにしたんだよ‥‥。」
「それより2人は私達を迎えに来てくれたとかですか?」
「その通りだ。放課後になって生徒会室にいてもマリン達が一向に来ないし、帰ろうと思って探してたんだよ。」
「すみません。兄様。一応説教は終わってますので、帰りましょうか?」
「一応なのか‥‥?」
「はい。この3人、学習能力に乏しいのかもしれません。私が原因らしいので暫く無視することを検討しようと思います。」
「「「え!?」」」
「何よ?」
「「「なんでもない‥‥。」」」
「本当に何したんだか‥‥。リジア、3人は何したんだ?」
「マリンを大いに怒らせました。」
「「うわっ。」」
「命知らずかよ‥‥。」
「ベネトさん?」
「なんでも‥‥ないです。」
「そうですか。では帰りましょうか、兄様。」
「ああ‥‥。そうだな。」
とりあえず2人に一撃入れたことである程度スッキリした。