63話 今年度の選択授業
翌朝。制服に着替えてお隣さんへ。
「お邪魔します。」
「‥‥‥ん?マリン。もう来てくれたのか?」
「うん。おはよう。レグルス。」
「ああ。おはよう。」
「昨日の内にある程度準備できてるからすぐに作れるよ。レグルス達は学園行く準備して待っててってベネトさんにも伝えといて。」
「ああ。分かった。‥‥また応接室で待ってていいのか?」
「うん。私も一緒に食べていいかな?」
「ああ。勿論だ。」
「良かった。じゃあ作りにいくね。」
そして、台所に向かった私は早速卵液に浸した状態のパンを取り出し、フライパンにバターを溶かして焼き始めた。
作っているのはフレンチトーストだ。
なんとなく作り方は知ってても面倒なのでなかなか作らないあれだ。
さて、やっぱり残る卵液‥‥‥。うちでなにか作るかな。
今いる人数分はないし。ストレージに入れて持って帰ろ。
そして、私がフレンチトーストを焼いてる間にメイドさんに紅茶の用意を頼んで、出来上がりを待つ。
そして、メイドさん達の分も含めて作り終えた私は早速応接室で待ってるレグルス達のところに行く。
昨日と同じくノックしてから入れてもらい、3人で食べ始めた。
大丈夫かな‥‥?
フレンチトースト、私も初めて作ったからな‥‥。
うん。‥‥‥私は好きな味だ。2人はどうだろ?
と内心緊張していると。
「‥‥‥うまい‥‥」
「ええ‥‥初めて食べましたがこれは美味しいですね‥‥」
「えっと、甘くない?大丈夫?」
「ああ。ちょうどいい。美味くて驚いただけだ。」
「同じくです。‥‥‥マリン。気が向いたらでいいからまた作ってくれないか?」
「あ。俺も!」
「えっと、実は今朝ここにくる前に家族になに作るか聞かれまして。それで説明したら姉様と母様が特に食べたがりまして、私についてくる勢いだったんですよ。でも当然2人の分は用意してないので作れないって言ったんです。そしたらじゃあ別の日でいいから作ってと頼まれまして。レグルス達もその時、うちに来ます?」
「「行く!」」
「分かりました。‥‥そんなに気に入ったんですか?」
「「ああ!」」
「そ、そうですか。」
「あの、殿下、ベネト様、マリン様。そろそろ学園へ向かった方がいいのでは‥‥?」
「「「え?あ!」」」
「あの、すみません!片付け任せていいでしょうか?」
「勿論です。マリン様、我々の分までありがとうございました。」
「いえ。お役に立てて良かったです。‥‥レグルス、ベネトさん。行きましょ!」
「「ああ!」」
そして、3人でうちに戻ると兄様が馬車の前で待ってくれていた。
「兄様!遅くなりました。すみません!」
「いや。まだ大丈夫だよ。2人もおはよう。」
「「おはようございます!」」
「じゃあ行くか。」
「「「はい!」」」
そして学園に着き、馬車を降りると朝から会いたくない2人がいた。
「な!‥‥皇太子殿下が何故マリン嬢と同じ馬車に乗って来てるんだ!?」
「何故ってお隣ですし、手違いでちょうどいい馬車がない私達を乗せてくれたんですよ。シリウス王子。」
「な、何だと!?」
「(あの、王子もしかして兄様とベネトさんの存在忘れてません?)」
「(かもな。俺達の名前出なかったな。)」
「(もうシリウス王子無視してレグルス引き連れて教室行きません?)」
「(マリン。自国の王子にすごいな‥‥。)」
「(そうですか?とりあえず急がないともうすぐ予鈴ですから。)」
「(そうだな。)」
「レグルス。急がないと予鈴鳴るから行こ。」
「え?あ、ああ。」
「では、シリウス王子失礼します。」
「え?マリン嬢!?」
無視だ無視。急がないと遅れる。
そして、途中で学年から違う兄様とベネトさんと別れ、教室に着いた私達。
「リジア。おはよう。」
「おはようマリン。珍しいね。マリンが予鈴手前に来るなんて。」
「おはようリジア様。遅くなったのは私達のせいですよ。」
「おはようございます。殿下。‥‥ん?殿下達のせいとは?」
「今私達の屋敷に料理人がいないのです。今日着く予定ですが、昨日の夕食と今朝の朝食をお隣だからと私達が頼んだらマリンがうちに作りに来てくれたんですよ。」
『え!?』
え?あれ?クラスのみんなも聞いてたの?
「え?マリン作ったの?殿下達の食事。」
「うん。」
「凄い度胸ね‥‥‥。」
「へ?そう?」
ガラッ
「はい。みなさん席に着いてください。‥‥‥ん?みなさんどうかしましたか?」
「何でもないですよ。みんな私の行動に驚いたらしいです。」
「マリンさんの?聞いてもいいですか?」
「私達の食事を2食分作りに来てくれたってだけです。」
「え!?殿下の?それは驚きですね。詳しく聞きたいところですが、授業時間なのでやめましょう。‥‥‥では今日はまず、今年度の選択授業を決めてもらいましょうか。レグルスさんもいいですか?」
「はい。昨日一通りマリンが教えてくれたので大丈夫です。」
「そうですか。‥‥マリンさん。これ渡しておきますね。」
「あ。ありがとうございます。」
「では選択授業の希望用紙を配りますね。受け取ったらゆっくり考えてください。他の人と相談してもいいですよ。」
『はい。』
そして、用紙を受け取ると
「ねぇ。マリン。さっき先生になに貰ってたの?」
「ん?仮のギルドカードだよ。」
「仮?」
「うん。冒険者ギルドに登録できるのは12歳からでしょ?でも誕生日はみんな違うから同じ学年でも登録できるのに差ができるじゃない?」
「「うん。」」
「そういう人の為の「仮」なの。本登録はちゃんと12歳になってからだけど、その前でも指定された講習を受けた者には仮だけど、冒険者として依頼を受けられる様になるの。まあ採取系の簡単なの限定だけどね。討伐系は本登録後じゃないと受けられないの。」
「へ~。それでマリンはまだ誕生日来てないから仮?」
「そういうこと。ちなみに選択科目の冒険者科は講習と同じだから1年間だけなんだよ。」
「じゃあ今年からマリンは冒険者科は取れないってこと?」
「うん。でも稀に全学年対象で募集掛けて実習することがあるらしいんだけど、それには参加できるよ。」
「へ~。じゃあマリンは選択科目どうするの?冒険者科を省いて去年と同じ?」
「うん。それに魔法科を取ることにした。リジアは?」
「私は去年と全く同じ。」
「そっか。じゃあリジアの選択科目全部一緒に受けれるね。」
「うん。」
「レグルスは?どうするの?」
「参考までに2人のを聞いていいか?」
「うん。魔法科、貴族科、家庭科は一緒で、私はあと薬術科を取るよ。」
「そうか‥‥。う~ん。やっぱり私は魔法科、貴族科、武術科辺りかな。」
「うん。いいんじゃない?魔法と武術は強くなるためで、皇太子殿下だから貴族科も。ってところ?」
「ああ。そういうことだ。」
「あ。じゃあ3人共魔法科と貴族科は一緒だね。」
「そうだな。」
「あ。そういえば、みなさん。今年度も生徒会に入ってくれる方を募りたいのですが、どうでしょうか?」
『‥‥‥‥』
先生の言葉を聞いたクラスの全員が私達の方を無言で見た。
「えっと‥‥凄い視線を感じるからじゃないですが‥‥私、生徒会入ります。」
「私も。」
「先生。私もいいでしょうか?」
「レグルスさんも?‥‥恐らく大丈夫でしょう。今の皇帝陛下とマリンさんのお父様である辺境伯様も一緒に生徒会に入ってらしたそうですし。」
「「え!?」」
「皇帝陛下がですか!?」「父上がですか!?」
「お2人共ご存知無かったんですね‥‥言わない方が良かったでしょうか‥‥?それはそうと、お2人共。皇帝陛下に失礼じゃありませんか?」
「それは‥‥だって‥‥ねぇ?」
「ああ‥‥今の父上しか知らないから驚きしかないな。」
「お2人の中で皇帝陛下はどう映ってるんですか?」
「えっと‥‥国民思いのすばらしい人だけど、脳筋?って感じですね。」
「私も概ね同じですね。」
『‥‥‥‥』
「ねぇ。マリン。私はその評価も失礼に感じてしまうのだけど。」
「ん?でも陛下優しくていい人だからこれぐらい気にする人じゃないよ?‥‥ね?レグルス。」
「ええ。」
『そうなんだ‥‥。』
え?あれ?また聞いてたの、みんな。
「はぁ。‥‥とりあえずみなさん書き終わりましたか?」
『はい。』
「では、回収したら、この後は通常授業を開始します。魔法科の授業ですので練習場に集合してくださいね。」
『はい。』
そして、魔法練習場に集合して授業開始です。
「まずはレグルスさんに実力を見せて頂きましょうか。」
「はい。‥‥あの的に当てたらいいでしょうか?」
「はい。お願いします。」
「あ。レグルス。魔力量ちょっと抑え目でね。」
「ん?ああ。分かった。」
はい。2種類の魔法を無詠唱で放ち、的を2体破壊して練習場の結界までいきました。
「レグルス‥‥抑え目でって言ったじゃない‥‥。」
「え?抑えたつもりだったんだが‥‥。模擬戦の感覚が抜けてないのかな?」
「多分ね。私とやった時より少しだけ威力落としただけって感じだったよ。」
「そうか‥‥。」
『‥‥‥‥‥』
「あの‥‥2人は模擬戦を?」
「え?はい。去年帝国に行った際に。」
「どちらが勝ったんでしょうか?」
「マリンです。その後、休憩を挟んで父上とも模擬戦できる余裕があるぐらいには手加減されましたね。」
『‥‥‥‥』
みんながさっきから一切喋らないんだけど‥‥。
「‥‥よし。帝国でのことは聞かない方が賢明な気がするのでもう聞きません。普通に授業しましょう。」
『はい。』
あ。先生とみんなが何かを諦めた。
そして、その日の授業は終わった。