62話 出張素人料理人
途中から再びレグルス視点です。
そして、私は屋敷に戻り。
「ただいま戻りました。」
「あ。お帰りなさい。マリン。」
「母様、父様は執務室ですか?」
「ええ。」
「ではちょっと行ってきます。」
「?」
そして、父様の返事を聞いてから執務室に入る。
「父様父様。お隣さんが料理人さんが明日の昼ぐらいまでいないらしくて夕食を作ることになったんですが、いいですか?」
「え!?‥‥昨日どうしてたんだ?」
「メイドさんに頼んでみたらしいですが、料理が得意な方がいなかったみたいで正直微妙な味だったそうです。それで、ご飯を食べたいからと私に。」
「ああ。そういうことか。‥‥ご飯ならマリンしか作れないな。‥‥いいぞ。作ってきて。」
「ありがとうございます。‥‥あ。あと、うちからお肉を貰っていっていいでしょうか?」
「ああ。いいぞ。‥‥‥折角だ。向こうで一緒に夕食食べて来たらどうだ?」
「え?‥‥‥う~ん。そうですね‥‥。分かりました。じゃあ行ってきますね。」
「ああ。」
そして、次にうちの台所に行き、
「料理長!」
「マリン様?」
「父様の許可は貰ってるのでお肉をわけてください。お隣さんに夕食作りに行くので。」
「へ?‥‥え!?マリン様が料理されるのですか?」
「はい。帝国の料理を食べたいそうなので。料理自体は初めてじゃないので大丈夫ですよ。」
「はぁ。まあ旦那様が許可されたのなら大丈夫なのでしょう。分かりました。何人分でしょうか?」
「私も向こうで食べることになりそうなので8人分で。焼くだけにしますので、用意をお願いします。その間に着替えてきますので。」
「そうですね。流石に制服のままで料理する訳にはいきませんね。畏まりました。」
「では、一旦失礼します。」
そして、自室に戻り普段着でも動きやすい服に着替えて、再び台所へ向かう。
「あ。マリン様。準備できてますよ。こちらをお持ちください。」
「ありがとうございます!ではお隣さんへ出張料理人になりに行ってきます!」
「ふふっ。はい。行ってらっしゃいませ。」
手に持って移動するのが面倒になってきたのでストレージにしまって、再びお隣さんのところに行く。
「お邪魔します。」
「お、マリン。流石に着替えてきたんだな。」
「はい。あと、お肉貰ってきました。それで、父様に許可もらいに行ったらこちらで一緒に食べておいでと言われたんですが、いいですか?」
「ああ。勿論だ。」
「じゃあ早速始めますね。‥‥あ。明日の朝も来た方がいいですか?」
「え?来てくれるのはありがたいが‥‥。いいのか?」
「まあ作るって言ってもパンの食べ方を変えるだけですが。それで良ければ。」
「え?パンに違う食べ方?」
「はい。」
「あれ?マリンいつの間に戻って来た‥‥」
「‥‥レグルス?‥‥どうかした?」
「‥‥‥」
「?‥‥‥レグルス?」
「は!‥‥すまない。何でもない。」
「?‥‥‥何でもないならいいけど‥‥あ。今、ベネトさんと話してたの。明日の朝も来た方がいい?って。」
「え?いいのか?」
「うん。パンの食べ方変えるだけだけど、それで良ければ。」
「え?‥‥よくわからないが、じゃあ頼んでいいか?」
「うん。いいよ。じゃあ明日の準備も一緒にしようかな。」
「えっと‥‥私達は邪魔‥‥だよな?」
「ん?邪魔ではないけど、見られるのはやり辛いかな。」
「だよな。じゃあ応接室で待ってていいか?」
「うん。出来たら持って行くよ。」
「ありがとな。」
◇◇◇◇◇
2人は応接室に行き、寛いで待つことにした。
「なあ、殿下。さっきマリンに見惚れてただろ?」
「え!?えっと‥‥。」
「いやいや。固まってたじゃないか。マリンは気付いてなかったみたいだが、普段着にエプロンしていつもと違う髪型に見惚れてたんだろ?」
「うっ。‥‥‥はい。」
「正直でよろしい。‥‥しかし、本当に優しいやつだな。」
「ええ。普通は断るところですよね。」
「ああ。特に俺達は皇族だから、何かあったら大変だって手作りとかは避けられるからな。」
「ええ。」
としばらく話してると、扉がノックされ、返事をするとマリンが扉から頭だけひょこっとのぞかせた。
「えっと‥‥できたけど、ここで食べるんだよね?」
「ああ。」
「じゃあ運ぶから扉抑えてもらっていい?」
「あ。ああ。」
そして、ワゴンに乗せた3人分の食事をテーブルに並べていく。
「えっと‥‥メイドさん達は食堂で食べるって言ってたから私達3人分だけ持ってきたけど、みんな一緒が良かった?」
「いや。このままでいいよ。‥‥早速食べていいか?」
「う、うん。」
そんな心配そうな顔しなくても大丈夫だろうに。
「お、美味いな。確かに殿下が言った通り料理長と味が違うな。料理長には悪いが俺もマリンが作った方が好きだな。」
「そうですね。初めて食べた時と同じ、ホッとする味です。」
「確かにな。」
「良かったぁ~。ベネトさんは初めて食べてもらうし、レグルスも久しぶりだし。ちょっと緊張して味付け不安だったんだよ。」
「大丈夫だからマリンも食べな。」
「はい。‥‥‥安心したらやっとホッとできた。」
やっぱり気負うか。友人とはいえ相手は皇族だからな。
う~ん。私達はマリンの優しさに甘え過ぎかな?
「う~ん。お味噌汁にカボチョの煮物にお肉をちょっと味付けて焼いただけ。やっぱり組み合わせが微妙ですね。」
「ん?美味いから俺は別に気にしないぞ」
「私もだ。」
「そう‥‥?」
納得いかないって顔だな。本当に気にしなくていいのに。
作ってくれただけありがたいんだから。本当に一品一品美味しいし。
私がそういうと、ベネトさんも同意を示した。
「う~ん。2人がそう言うならいいのかな。それに明日からは料理人の方が作ってくれるからちゃんとしたの食べれるだろうし。」
「あ。そうか‥‥マリンの料理は明日の朝食までか‥‥。」
「ああ‥‥。何か残念だ。」
「いやいや。流石に毎日今日より大人数は作れないよ!?」
「分かってるよ。それだけ私達はマリンの料理を好きなだけだ。」
「そういうことだ。」
それから3人共食べ終わったあと、マリンは後片付けまでしてくれた。
「じゃあ私、帰るね。」
「ああ。今日はいきなり頼んだのにありがとな。」
「送ろうか?」
「大丈夫。お隣だよ?それに私をどうこうできる人がいると思う?」
「「思わない。」」
「ふふっ。でしょ?‥‥じゃあまた明日。」
「「また明日。」」
そして、マリンが帰った後。
「殿下の言ってた通りだな。料理は美味かったし、決断早いし。殿下の人を見る目は間違ってなかったな。‥‥ただ、自分のことには鈍感だな。」
「‥‥最後の言葉、ベネトさんには言われたくないと思いますよ。」
「ん?どういうことだ?」
「まあ‥‥いいか。」
「おい。教えてくれないのか?」
「はい。」
あれは自分でいつか気付いたら言うだろう。
‥‥‥あ。うまくいけば帝国に友人同士で来てくれるかな?そうなったら楽しそうだな。
そう考えてる間もベネトさんがなんか言ってたが無視することにした。