61話 お隣さん
そして、帰りの馬車の中。
「それで、レグルスとベネトさんは朝、どうやって学園に来たの?」
「辺境伯家の馬車を借りたんだ。2台あるだろ?」
「あ~。そういえば。‥‥‥ねぇ。もしかして王都に来る時って父様と来た?」
「ん?ああ。正解だ。」
「ああ。だから父様、昨日突然王都に来たんだ。」
「ああ。父様、ひたすら不自然にはぐらかしてたからな。」
「お。やっぱり黙っててくれたのか。挨拶しに行っていいか?」
「はい。いいと思いますよ。」
そして屋敷に着くと。
「「ただいま戻りました。」」
「お帰りなさいマリン、アクア。‥‥‥え!?皇太子殿下とベネト?」
「お久しぶりです。クリス様。」
「お久しぶりです。皇太子殿下‥‥。え?学園の制服?」
「そうなんですよ。レグルスが私と同じクラスに転校してきたんです。しかも昨日突然父様が王都に来た理由はレグルスとベネトさんに付き添う為だったそうなんです。」
「え!?」
「それで、姉様。父様は?」
「‥‥‥いるぞ。お帰りマリン、アクア。」
「「ただいま戻りました。」」
「父様、聞きましたよ?レグルス達と一緒に来たんですね?」
「ああ。殿下にどうしてもマリンを驚かせたいからと頼まれてな。」
「そうですか‥‥。お陰様で大いに驚きましたよ‥‥。」
「では作戦成功ですか?殿下。」
「ええ。大成功です。お陰でマリンの驚いた顔が見れました。」
「そうですか‥‥。すまなかったな、マリン。」
「いえ。父様、昨日不自然だったので何かあったのかと逆に心配だったので良かったです。」
「‥‥‥不自然だったか?」
「「はい。」」
これには兄様と姉様も同意見みたいだ。
「はぁ‥‥慣れないことはするもんじゃないな。」
「すみませんでした。辺境伯様。」
「いえ。」
「さて、辺境伯様に挨拶出来たので帰りましょうか。ベネトさん。」
「ああ。そうだな。」
「あれ?帰るの?」
「そうよ。お茶飲んでいけば?」
「いえ。隣ですし、これからはいつでも会えますから。あ。逆にうちに来ますか?」
「えっと‥‥私は遠慮しておきます。マリン、行って来たら?」
「え?私ですか?」
「ああ。俺も今度でいいからマリンだけ行って来たらいい。」
「はぁ‥‥‥ということで逆にお邪魔してもよろしいでしょうか?皇太子殿下?」
「はい。是非お越しください。マリン様。」
「じゃあ行くか?」
「はい。‥‥では父様。お隣さんに挨拶に行ってきます。」
「ああ。行ってらっしゃい。」
そしてお隣さんの屋敷の前。
「ふぁ~!改めて見るとおっきくて立派な屋敷だよね~。」
「そうだな。今は俺達と使用人が数名ぐらいしかいないんだけどな。」
「え?そうなの?」
「ああ。しかも実はまだちゃんとは片付いてはいないから、お客様をお招きできる状態じゃないんだよ。」
「あれ?じゃあ私、まだ来ない方が良かったんじゃない?」
「マリンならいいさ。特に文句言うようなやつじゃないだろ?」
「はい。全然文句ありませんし、むしろ手伝いましょうか?」
「それは流石に駄目だ。」
「とりあえずここで話しててもしょうがないですし、中に入りませんか?」
「そうだな。」「うん。」
「皇太子殿下、ベネト様。お帰りなさいませ。」
「「ああ。ただいま。」」
「‥‥‥と、もしやマリン様でございますか?」
「え?私のこと、ご存知なんですか?」
「やはりそうなのですね!それはもう、殿下がマリン様の話しを‥‥」
「とりあえず!‥‥お茶の用意を頼めるか?」
「ふふっ。はい。少々お待ち下さい。応接室でよろしいでしょうか?」
「ああ。頼む。」
「なに?私の話ししてるの?レグルス。」
「‥‥笑わなくていいだろ。」
「だって慌ててメイドさんの言葉遮ってお茶頼んでたからさ‥‥。」
「だな。‥‥とりあえず応接室行くぞ。」
「はーい!」「はい。」
そして応接室に通され、3人でお茶を飲みながらお話しタイムです。
「ところで、レグルスもベネトさんも皇族が他国に留学とかいいの?」
「ん?あれ?知らないのか?皇帝陛下も皇太子時代に同じく学園に留学してたんだぞ?まあ2年間だけだがな。その時、辺境伯様と同じクラスだったそうだ。」
「父上だけじゃなくて皇族は何人も王国の学園に留学経験あるぞ?逆に帝国の学園に王国の者が来ることもあるしな。」
「え?そうなの?‥‥父様、全然教えてくれなかった‥‥。それぐらい話してくれてもいいと思うんだけどな‥‥。あ。もしかして、陛下に対して気安い態度なのって、そういうこと?」
「ああ。多分な。」
「へ~。やっと納得できた感じだよ。」
「でな、マリン。申し訳ないんだが、今から俺達の夕食作ってくれねぇか?」
「べ、ベネトさん!それは流石に‥‥。」
「夕食?‥‥料理人の方いないんですか?」
「それが、こっちにくる時に手違いがあってな。料理人とか使用人が明日にならないと来ないんだ。今いるのは最低限の人員だけなんだよ。」
「え?じゃあ昨日はどうしたんですか?」
「今いるメイドに頼んだ。‥‥‥が。」
「作って貰って申し訳ないが、料理が得意な人がいなくてな。正直微妙な味だったんだ。」
「それで私ですか?正直私よりうちの料理人の方が美味しいと思いますが‥‥?」
「それは王国の料理ならだろ?」
「ああ‥‥。ご飯をご所望ですか。」
「「ああ。」」
「王国の味に慣れるまではパンか米がいいんだが、駄目か?」
「はぁ‥‥。何人分ですか?」
「え?いいのか?」
「ここまで聞いといてなにもしないで帰ったら気になってしょうがないから作るよ。で、何人分?」
「俺達合わせて7人分だ。」
「え?今使用人さん5人しかいないんですか?」
「ああ。しかもメイドだけだ。」
「メイドさんだけでソファーやテーブルがあるってことは家具は王国が?」
「ああ。」
「じゃあ問題は食事だけなんだ。」
「まあな。」
「えっと、料理人さんは明日のいつぐらいに着く予定なの?」
「確か‥‥昼過ぎだったような‥‥とりあえず学園に行ってる間だな。」
「じゃあ明日の朝食もか。それは後で考えるとして‥‥2人共、何か食べたいのあります?」
「「お味噌汁!」」
「え?お味噌汁でいいんですか?」
「ああ。マリンが作ったお味噌汁、俺は食べてないからな。食べてみたい。」
「料理長に作り方をお伝えしたのは私なのでさほど味は変わらないと思いますが。」
「いや。違ったんだ。なんとなくな。」
「まあいいけど、お味噌汁だけじゃ足りないでしょ?他は?」
「「カボチョの煮物!」」
「え?これも同じ理由?」
「ああ。」
「分かった。とりあえず材料、何があるか見せてもらえる?」
「ああ。こっちだ。」
そして、3人で台所に着くと。
「あら?お3方共、揃ってどうされたんですか?」
「マリンが夕食を作ってくれることになったんだ。食材を見せてくれるか?」
「まあ。マリン様が?‥‥畏まりました。マリン様申し訳ありません。よろしくお願いします。」
「はい。」
えっと‥‥カボチャ、玉ねぎ、人参、じゃがいも、卵、ん?これは‥‥あ。牛乳か。‥‥鑑定って便利だな‥‥。帝国でもこっそり使えば良かったな‥‥。
あとは‥‥パンもあるか‥‥。う~ん。明日の朝は卵と牛乳があるからフレンチトーストができるけど‥‥。
夕食のメインになりそうなのがないな‥‥。
「う~ん。‥‥ねぇ。レグルス。カボチョとお味噌汁だけじゃ足りないでしょ?うちから食材貰って作るって手もあるけど、どうする?」
「う~ん確かに、欲を言うなら肉食べたいな。」
「あ。俺も。」
「じゃあ一旦うちに帰ってきます。どちらにしても一言言いに戻らないと心配するかもですし。」
「ああ。すまないな。マリン。」
「ううん。いいよ。それじゃ行ってきます。」
ということで、今度は夕食を作ることになった。