60話 学園の注目の的?
一方、マリン達は生徒会室に向かっていた。
「はあ‥‥‥恥ずかしかったぁ~。」
「ごめん。全く周り見えてなかった。シリウス王子達にマリンと友人になったと自慢できるのが嬉しくてついな。」
「ついって‥‥‥。あの、レグルス。‥‥私に会いに転校してきたって本当なの?」
「ああ。本当だ。マリン達が帰った後、父上に相談したらあっさり許可してくれたぞ。まあ切り良く1年が終わってからが条件だったがな。予想の範囲内だったからいいけどな。」
「なんなの、その行動力‥‥人見知りどこいったの‥‥。」
「う~ん。マリンに関してはそうでもないみたいだな。」
「うぅ‥‥レグルス。わざと?」
「何がだ?」
「笑ってる!わざとだ!‥‥むぅ。」
「そうむくれるな。可愛い顔が台無しだぞ?」
「だからなんでそんな恥ずかしい言葉、サラッと言えるのよ!?」
「言っただろ?マリンを落とすって。その為なら転校ぐらいするし、思ったことは言うことにしたんだ。‥‥と、マリン。ここじゃないのか?」
「へ?‥‥あ。うん。ここ‥‥なんだけど‥‥。私、今顔赤いよね?」
「ふっ。赤いな。」
「もう!笑わないでよ!誰のせいで‥‥」
ガチャ
「はあ‥‥廊下でいちゃつかないで入ってきたらいいじゃない。」
「り、リジア!?いちゃついてないよ!?」
「はあ‥‥今の会話でいちゃついてないならなんなのよ?」
「え、えっと‥‥」
「とりあえず入ったら?皇太子殿下もどうぞ。どうせちゃんと先生に許可貰ってきたんでしょ?」
「う、うん。」
「じゃあ入っちゃいなさい。‥‥後ろ。見てみなさい。」
「「え?」」
振り返ると何人か着いてきていた。‥‥尾行?
「「え!?」」
「レグルス!」
「あ、ああ。」
それを見た私はレグルスを引っ張って生徒会室の中に入った。
「大変だったみたいだな。マリン。」
「あ、アクア兄様~!なんで私、注目の的に‥‥。」
「ん?注目の的になったのか?」
ここに来るまでの経緯を話すと、
「それは注目されるだろうな。」
「ああ。ただでさえマリンは人気が凄いからな。」
「「え?」」
私と兄様の声がハモった。
「どういうことだ?カイト。」
「どうもこうも‥‥って知らないか。アクアもそうだが、前生徒会長のクリスさんもマリンも兄妹揃って美形だし、個々の能力も凄い。3人共首席だしな。だから憧れるやつもいるらしくてな。それぞれに親衛隊ができる勢いなんだよ。」
「「はぁ!?」」
「本当だぞ?なあ?」
私と兄様とレグルス以外全員が頷いた。
「え?リジアも知ってたの?」
「うん。まあ一応ね。親衛隊は知らなかったけど。」
「な、なんでそんな恥ずかしいことに‥‥は!シリウス王子達のせい!?あの2人のせいで変に目立っちゃったから!?」
「わ、私に聞かないでよ‥‥でもそれはあるでしょうね。」
「はぁ‥‥‥。私の安息の地はここだけか‥‥。」
「ということは今年も生徒会、継続するのね?」
「うん。そのつもり。リジアは?」
「私も。マリンは続けると思ってたしね。」
「リジア~!ありがとう~。」
「あの、アクア様。私も望めば生徒会に入れるのでしょうか?」
「ええ。入れると思いますよ。皇太子殿下はマリンと同じクラスでしたね。なら問題ないでしょうし。」
「え?レグルスも生徒会入るの?」
「ああ。そう思ったんだが、駄目か?」
「いや。駄目じゃないけど、なんで?」
「マリン。何でって決まってるじゃない。マリンがいるからよ。」
「へ?‥‥‥え!?」
「正解です。」
「ほら。」
「リジア‥‥。ちょっと抱きついていい?」
「ハイハイ。どうぞ。」
「ありがと。」
あ~!恥ずかしすぎる!なにこの羞恥プレイ!
顔熱い!リジアが察してくれて良かったぁ‥‥。
顔隠せるし。でも耳も熱いから赤いんだろうなぁ~。
「はぁ‥‥皇太子殿下、皆さん。この辺で勘弁してあげてください。マリンが流石に可哀想です。」
「あはは。そうですね。」
「あ。そういえば私、自己紹介してませんでしたね。このままで申し訳ありません。私は今抱きしめてるマリンのいとこでフリージア・フォン・アドニスと申します。家は伯爵家ですわ。マリンと同じく、リジアとお呼び下さい。」
「ご丁寧にありがとうございます。では私のこともレグルスと名前で呼んで頂けますか?」
「えっと、ではレグルス殿下‥‥でよろしいでしょうか?」
「はい。それでお願いします。リジア様。」
「‥‥‥‥マリン。」
「なに?」
「去年マリンが言った意味が分かったわ。」
「でしょ?」
「ん?なんて言ってたんですか?マリン。」
「いい人だと。シリウス王子とは大違い。真逆‥‥だったかしら?」
「うぅ。リジア~。また顔出せなくなったじゃん!‥‥‥合ってるけど。」
「ふふっ。文句を言いつつちゃんと答えてくれるから好きなのよね。マリン。」
「もぉ~。」
「へ~。いい人か。どういう意味でかは気になるな。」
「聞かないで!」
「分かった分かった。」
「なあアクア。」
「何だ?」
「マリンさ‥‥学園の生徒全員に愛されそうじゃね?」
「愛されそうじゃない。愛されるさ。俺はともかくマリンは特にな。」
「‥‥‥お前本当に‥‥。」
「何だ?」
「なんでもない。」
「?」
『この兄妹、馬鹿が付くほどお互いに好きなんだな。』
と、周囲の人達は声に出さずに思っていた。
そして、しばらくして。
ようやく顔の熱が下がった私はリジアから離れた。
「リジア。ありがと。」
「どういたしまして。」
「‥‥‥‥レグルスの馬鹿。」
「え~。」
「こらこら。マリン。いくら友人でも皇太子殿下に向かって馬鹿はないだろ。」
「私のこと考えずに言う様な馬鹿だから馬鹿って言ったんです。兄様。」
「全く‥‥とりあえず、今日は始業式だけだったから特にやることもないしな。帰るか。」
「はい。‥‥‥あ。レグルスって何処に住むの?やっぱり王城?」
「いや。流石にお世話になれないし、シリウス王子と同じところとか嫌だし、屋敷を借りることになってるよ。」
「一人なの?」
「そんな訳ないだろ。ちなみにベネトさんも一緒に転校してきたんだぞ。」
「え!?」
ガチャ
「当然だろ?殿下の護衛だ。」
「あ。ベネトさんだ。お久しぶりです。」
「ああ。久しぶりだな。お、アクアさんもいたんですね。」
「ああ。久しぶりだな。ベネト。」
「ねぇ。マリン。この人は?」
「ああ。この人は‥‥」
「はじめまして。俺は皇太子殿下のいとこのベネト・アスタ・ルベライトと申します。」
「え‥‥あ。私はマリンのいとこでフリージア・フォン・アドニスと申します。リジアとお呼びください。」
「はい。よろしくお願いしますね。リジア様。」
「相変わらず切り替え早いですね。ベネトさん。」
「そうか?普通じゃね?」
「あの、ベネト様、私のことも呼び捨て敬語無しでいいですよ。」
「お。‥‥いいのか?マリン。」
「なんで私に聞くんですか?リジアがいいならいいんじゃないですか?」
「それもそうか。じゃあ殿下共々よろしくな。リジア。」
「はい。」
「リジア?」
「へ?な、なに?」
「何でも?‥‥へ~。」
リジアさん顔が赤いですよぉ~?
「あ。ベネトさん。私、生徒会に入ろうと思うんですが、いいですよね?」
「え!?あ~‥‥いいんじゃね?じゃあ俺も入るかな。」
「軽いですね!?」
「俺もSクラスだから問題ないだろ?」
「え!?ベネトさん、Sクラスなんですか!?」
「ちょっと待てマリン。それはどういう意味だ。」
「へ?いや‥‥。」
「言動とかで馬鹿っぽく見えたんじゃないか?俺も驚いたし。」
「ひどくないですか!?‥‥なにこの兄妹。揃ってひでぇ。」
「それはどうでもいいとして‥‥じゃあ、今は殿下とベネトは一緒の屋敷に?」
「どうでもって‥‥はい。そうです。」
「そうか。」
「俺達がいる屋敷、知りたいですか?」
「どっちでもいい。」
「冷たい!アクアさんが冷たい‥‥。」
「じゃあ教えてくれるんですか?ベネトさん。」
「マリンはまだ優しいな‥‥‥聞いて驚け!」
「「?」」
「辺境伯家の隣だ!」
「「はあ!?」」
「え?隣って‥‥あれ?そういえば去年まで空き地だったような‥‥そういえば最近立派な屋敷が出来上がってましたね‥‥。」
「その通りだ!」
「そこなんですね‥‥。」
「ああ。それで、まだ越したばかりでな。ちょうどいい馬車がないんだ。アクアさん、マリン。一緒に乗せてもらえません?」
「兄様‥‥。」
「ああ。ベネト‥‥その為にここに来たな?」
「はい!」
「はあ‥‥帰るか。」
「はあ‥‥はい。兄様。行こ、レグルス。」
「ああ。すまないな。」
「いいよ。ベネトさんも行きますよ。‥‥‥じゃあまた明日ね。リジア。」
「う、うん。また明日。」
私に平和はないのだろうか?