6話 優しい家族
私は自分の部屋で椅子に座り机の上に突っ伏して項垂れていた。
‥‥どうしようかなぁ‥‥。
姉様に「見せて」って言われたけど‥‥逃げられないよね‥‥明らかに異常だよね‥‥私のステータス。
現実を見る為もう一度。
「【ステータス】」
[名前] マリン・フォン・クローバー
[種族] 人間族 [性別] 女性 [年齢] 五歳
[称号] 辺境伯家次女 転生者 神の御使い
[レベル] 1
[体力] 200/200
[魔力] 30,000/30,000
[能力] S+
[魔法]
創造魔法Lv.10 空間魔法Lv.10
火魔法Lv.10 水魔法Lv.10
風魔法Lv.10 土魔法Lv.10
光魔法Lv.10 闇魔法Lv.10
[スキル]
鑑定Lv.10 武術Lv.10 体術Lv.10
物理耐性Lv.10 魔法耐性Lv.10
[加護]
創造神の加護Lv.10 武神の加護Lv.10
生命神の加護Lv.10 商業神の加護Lv.10
魔法神の加護Lv.10
このステータスはまずい。確か姉様は魔法神様の加護だけだったはずだし、魔法2属性でレベルも両方1だったよね。
そういえば創造神様の加護は後で確認してとか言ってたような‥‥どれ?
‥‥創造魔法?創造神様の加護ってこれかな?触っていいのかな‥‥?あっ何か出てきた。
創造魔法Lv.10 ▼
これで好きな魔法を作るとよいぞ。ステータスを改竄するのも可能じゃ。 創造神より。
ありがとうございます!創造神様!
できればそもそも改竄しないでいい程度に納めて欲しかったけど、五神全員に加護をもらった時点で同じか。
さて、改竄できるのは良かったけどこの世界の常識の範囲が分からないしな‥‥。
う~ん。改竄したところで私後々どこかでボロ出したりするんだろうな。
商業神様の加護がないと使えない【ストレージ】とか生命神様の加護がないと使えない治癒魔法とか気にせずパッと使うよ。絶対。
よし。諦めて見せられないと言うしかないな。世界の常識の範囲を教えてもらうのと何かあった時、頼れる様に父様に少し犠牲になって頂こう!
部屋を出るとちょうどシャーリーと会ったので父様がどこにいるか聞くと、恐らく執務室に居るだろうとの事だったのでシャーリーにお礼を言って執務室へ向かった。
父様の執務室の前でノックすると返事が返ってきたので、
「父様。マリンです。ステータスの件で相談があるのですが、入っていいでしょうか?」
と言うと父様が扉を内側から開けて、
「どうした?何か分からない事とかあったか?」
「えっと‥‥分からない事というより困った事になった。というのが正しいかもしれません。」
「? 良く分からんがとりあえず入りなさい。」
「ありがとうございます。」
そして執務室の中にあるソファーに対面で座る。
「それでマリン。困った事とは?」
「父様。困った事は私がこれから質問する事で分かるかと思いますので質問していいでしょうか?」
「? ああ、構わんが。」
「まず魔法と神様の加護レベルは最高でいくつまで聞いた事がありますか?」
「う~ん。確か5だな。魔法も加護もそれぞれ特出する1つだけとかだな。」
「なるほど。では次に例えばですが魔法を全属性使えるか五神様全員の加護をもらった人はいたことがあるのでしょうか?」
「それは両方ないな。とりあえず俺はそんな人に会ったことはない。」
「そうなのですね‥‥。」
やっぱりかぁ‥‥これは相当改竄した上で気を付けないといけないな。
「マリン?まさか困った事とは複数の加護があるとかか?」
「そうですね。父様。父様や家族を含め誰にも私のステータスを見せない方が良いかと思います。主に精神衛生上。」
「何?そんなにか?」
「はい。1つだけ言いますね。私は五神様全員の加護を頂いてます。」
「‥‥‥‥‥本当なのか?」
「はい。」
「確かに困ったことだなそれは‥‥それなら他の者に見せない方がいいかもしれん。その情報だけで下手したら国の管理下に置かれる可能性もあるしな。」
「やっぱりそれだけでも異常なんですね‥‥。」
「ああ。その様子だと困ってるのは加護だけじゃなさそうだな。だが聞かない方が賢明かな。」
「はい。恐らく。ですがそれよりも今日この後、私のステータスを家族に見せれないってどう説明しましょうか?姉様も見たがってましたし‥‥。」
「あ~‥‥そうか。それもあったか‥‥。」
「その相談も兼ねて父様の所に来たのですが‥‥いっそのこと姉様達にも言いますか?加護のことを言ってステータスは見ない方が賢明だと。」
「だが、ずっと隠し通すのも難しいだろう。」
「それが創造神様がステータスを改竄できるようにしてくれてるので後で父様に細かく聞いて弄ろうかと思ってます。」
「そんな事ができるのか!?まあそれはどうしてもステータスを見せないといけない状況の時の為にやるとして、家族には‥‥そうだな。素直に見せられないと言うしかないか。とりあえず。俺も見せてもらってないと言えばクリスも納得してくれるだろう。」
「はい。姉様はステータスを見せてくれたので心苦しいですが‥‥。」
「そうだな。だが、仕方ないさ。」
「はい‥‥。」
こうして父様ほどではないが家族も犠牲になることが決まった。
「父様。後日、ステータスの改竄もですが、他にも相談したりしてもいいでしょうか?」
「ああ。もちろんだ。」
「ありがとうございます!」
と、そこで扉がノックされたので父様が返事すると、相手はシャーリーだった。
「あっ。マリン様もまだこちらにいらっしゃったのですね。旦那様、マリン様。夕食のご用意ができました。」
「分かった。行きましょうか、父様。」
「ああ。」
2人で食堂へ向かうと、家族は全員揃っていた。
そう「全員」だ。ヒスイ兄様だけじゃなくこの2年の間でフレイ兄様も王都の学園に通い出しているが、今は夏休みということで2人共数日前には帰ってきているのだ。
「すみません。お待たせしましたか?」
「大丈夫よ。ほら立ってないで2人共座ったら?」
「はい。ディアナ母様。」
私と父様が席に着いたのを見届けると、早速姉様が聞いてきた。
「父様と一緒に来たってことはマリンのステータス、父様に先にお見せしたの?」
「いえ。ちょっと相談にのってもらっただけですよ。」
「相談?なんで?」
「ちょっと困ったことになったので。」
「困ったこと?」
「クリス。先に夕飯でしょ。冷めちゃうわよ。それとマリンのステータスの話は食後にしなさい。」
「‥‥はい。すみません。」
ありがとうございます!ディアナ母様!
そして食後、紅茶を飲みながら改めて。
「えっと‥‥まず、姉様。申し訳ありませんが私のステータスはお見せできません。というより家族だけではなく誰にも見せられないです。」
「何で!?」
「姉様は私にステータスを見せてくれたので心苦しいのですが、私のステータスは一言で申しますと異常なのです。なので見ない方が精神衛生上良いかと思います。」
「‥‥異常って例えば?」
「私は五神様全員の加護を頂いてます。父様にもこの事しかお伝えしてませんし、ステータスもお見せしてません。」
「「「「「「「‥‥‥‥。」」」」」」」
全員絶句していた。父様は先に言ってるのでただ黙ってるだけだが。
「父様からはこれだけで国の管理下に置かれる可能性を言われました。ステータス、ご覧になりますか?」
「「「「「「‥‥‥やめとく。」」」」」」
「分かりました。ただですね、五神様全員の加護を頂いてるという時点でお察し頂けるでしょうが、生命神様の加護で治癒魔法、商業神様の加護で【ストレージ】の魔法が使えるようになっているはずです。まだ試してませんが。うっかり使ってるところを見ることになるかもしれませんし驚かせたくないので、先にお伝えしておきますね。」
「「「「「「「‥‥‥。」」」」」」」
「あの‥‥戸惑わせてしまい、申し訳ありません。ですが、私のステータスが異常なだけで私自身は何も変わりません。なので、これまで通り接して頂ければと‥‥。」
「ちょっと驚いたけど、ステータスを見せられない理由も教えてくれたしね。それにマリンが私の可愛い妹なのは変わらないわ。だから安心して。マリンのステータスを言いふらすこともしないから。みんなも同じですよね?」
「「「「「もちろん!」」」」」
家族全員が笑顔で頷いてくれた。
「ありがとうございます!」
信じられる優しい家族で本当に良かった。
ここの教会の名前も変更してます。
変更日 2021,2,3
※2021,9,2 改めて改稿しました。