55話 私の立ち位置?
陛下が城へと先に戻っていった後。
私は休憩をとりながら遅めのお昼を食べていた。
「そういえば陛下。お昼食べる前に帰っちゃったね。良かったのかな?」
「まあ城で何か食べるだろ。気にしなくていいよ。」
「そう?‥‥あ。元帥様とベネト様も果実水飲みますか?」
「ええ。頂けますか?」「おう。くれるか?」
「はい。‥‥‥どうぞ。」
2つ目の果実水が入ったポットとコップをストレージから出し、果実水をコップに注いで2人に渡す。
「ありがとうございます」「ありがとな。」
「なあ、マリン。さっきの陛下との模擬戦、ほぼ動きが目で追えなかったんだが、いつの間にあんなに強くなってたんだ?」
「え?‥‥‥父様、私達の動き見えなかったんですか?」
「ああ。正直、元帥殿が審判してくれて助かった。俺じゃ目で追えなかったから正しい判断出来なかっただろうしな。」
「え?そうなのか?‥‥父上は見えたのですか?」
「私も辛うじて目で追えるってぐらいですね。」
「ええ。私との模擬戦は手加減される訳だと父上とやってるところを見て思ったよ。」
「あ。でもレグルスはシリウス王子やリゲル様の2人と戦うよりは強かったよ?」
「「え?」」
「え?マリン。王子達と戦ったのか?」
「え?はい。何故か2人して叩きのめしてくれって言ってきたので叩きのめして差し上げました。」
「2人同時にか?」
「はい。‥‥でも連携はある程度とれてましたね。流石幼なじみってぐらいには。」
「というか、何故マリンなんだ?」
「それはですね、殿下。王子達にもマリンは気に入られているからですよ。」
「姉様!?」
「気に入られているどころか2人共マリンちゃんに一目惚れしたそうですわ。私とマリアも勿論マリンちゃんが好きですし。私達4人の命の恩人というだけじゃなくて、マリンちゃん自身を好きになったみたいですよ。」
「リリ様まで!?」
『命の恩人?』
帝国の皆様の声が被りました。
「ちょっとリリ?」
「いいじゃない。マリンちゃんは帝国の人達にまで気に入られたみたいだし、マリンちゃんが私達を助けたことで王国で今すごく面倒な立ち位置にいるってことを話すだけじゃない。」
「まあ‥‥その通りね‥‥父様、話してもいいのでしょうか?」
「いいんじゃないか?話さないと不公平だろ?」
「そうですね。マリン、話してあげて。」
「え?私ですか?‥‥‥当事者が話すべきですよね。レグルス、後で陛下にも言っておいてくれる?」
「分かった。」
そして私はシリウス王子達と初めて会った時のことやお披露目会のこと、学園でのことを話した。
「‥‥‥変わってねぇな。あの王子達。」
「‥‥‥ええ。」
「え?シリウス王子達、帝国に来たことあるんですか?」
「ああ。一回だけな。2年前に来て、陛下が怒って二度と来るなって言う程には嫌われてるがな。姉の2人には申し訳ありませんが。」
「いいえ。しょうがないですよ。」
あの陛下を怒らせるって何したんだ王子達は‥‥。
「まあ、私にとって唯一の救いは王子達とクラスが違うことですね。」
「ああ~、クラスが違えば話し掛け辛いか。ちなみにマリンは?」
「私は首席だったのでSクラスで、シリウス王子達は揃ってBクラスですね。」
「「首席!?」」
「え?はい。そうですよ?」
「アクア殿に続いてマリン嬢もですか‥‥辺境伯様。お子様達優秀過ぎませんか?」
「‥‥ふふっ。」
「マリン嬢?」
「あ。すみません。やっぱり兄弟だなぁって思っただけです。」
「?」
「昨日の親善パーティーの時に私が首席入学だと話したら今元帥様が仰ったことと同じことを陛下も仰ったんです。」
「ああ。そういうことでしたか。」
「それで、その直後私が言おうとしていたことを先に父上が言ったんですよ。」
「なんて?」
「マリンを私の嫁に出さないか?と。」
「公衆の面前でか!?」
「はい。辺境伯様が家訓の話をされてマリンに直接交渉してくれとなったので流石にこれは私自身が言わないと。と思い、模擬戦を申し込んだんです。」
「おお~。やるな、殿下。相当勇気いっただろ?」
「はい。内臓が痛かったですね。」
「あの、話をスパッと変えてしまうので申し訳ないのですが、元帥様達はどちらへ行かれていたのですか?」
「ああ。私と将軍とベネトと数名の兵士で竜の住みかを確認しに行ってたんですよ。」
「え!?住みか‥‥近くにあるんですか?」
「ああ。そこまで近くはないですよ。帝都から北におよそ一週間ぐらいの距離ですね。」
「でな、二週間前に竜達が騒ぎだしたって報告がきたんで俺達で様子を見に行ったんだが、騒ぎは落ち着いてたし入れ代わりで黒竜が一匹街に向かったって報告受けたんだ。で、急いで街に向かったら既にいなくて、街のやつらに聞いたら王国の辺境伯様一行の誰かが倒したって言うだろ?あれには驚いたな。街は無傷だし。‥‥黒竜倒したのもマリンか?」
「はい。そうですよ。」
「やっぱりか。さっきから話を聞いててそうだろうなって思ったよ。‥‥それで、さっき帰ってきた訳だが城に皇帝一家全員いないからこっちに来たって訳だ。」
「そうでしたか。」
ん?二週間前?‥‥帝都の北っていうことはうちから考えると北西だよね‥‥
まさか私が荒野に空飛んで向かってた時じゃないよね‥‥?
私、念の為に姿消して飛んだけど、魔力を勘づかれた‥‥?
そもそも通り道に竜の住みかってあったっけ?
‥‥‥‥あとで確認しよ。
「さて、皆様。そろそろ城に戻りませんか?」
「そうですね。私も休憩は十分に取れたので大丈夫ですよ。
‥‥‥ここも片付けちゃいますね。‥‥父様達もいいでしょうか?」
『ああ。』『ええ。』
と、その場の全員が腰を上げたのでテーブルや椅子も全てストレージに入れた。
「便利だな。ストレージって。」
「そうですね。中の時間は止まるみたいで、冷たいままで果実水が飲めるので素晴らしいです。」
「確かにそうだな。」
そして片付け終わったところで、全員で城に戻った。
「ところで、父様。これからどうします?」
「う~ん。各々好きに過ごしたらいいんじゃないか?」
「予定がないのでしたら城の図書室でも見ますか?」
「え?いいんですか?」
「ええ。一応陛下に確認してみますが、大丈夫でしょう。」
「では、お願いします。‥‥あ。その間に着替えてきてもいいでしょうか?」
「ええ。勿論です。後程お迎えに参りますね。殿下が。」
「え?私ですか?」
「ええ。私も元帥ですから仕事があります。ですが殿下もこの後予定はないでしょう?」
「はい。」
「(それにマリン嬢と一緒にいられる絶好の機会ですよ。)」
「な!‥‥‥分かりました。」
「?‥‥レグルス?どうしたの?」
「いや。何でもない。後で迎えに行くよ。」
「うん?‥‥分かった。」
元帥様とレグルス、なに話してたんだろ?
そして私達は全員各々好きに過ごすべく解散したのだった。