50話 親善パーティー
そして、夕方。
ようやく親善パーティーが始まった。
「親善」パーティーなので王国と帝国の友好を深めようというのが目的だそうだ。
なので王国側からは王女であるリリ様と王家に連なるものとしてマリア様。帝国に一番近い王国の貴族として父様と家族である私達。
帝国からは皇帝一家は勿論、全てではないが貴族達も集まっていた。
そして、皇帝による乾杯の音頭だ。
「皆の者。今年も王国より客人が来てくれている。そして既に耳に入っている者もいるだろうが、客人が帝国にくる途中で遭遇した黒竜を討伐し、街を守りそして、その討伐した黒竜の肉を提供してくれた。存分に味わってくれ!‥‥‥それでは乾杯!」
『乾杯!』
乾杯の音頭が終わると、皆が談笑しつつ飲み物と竜肉に舌鼓をうっていた。
大人達はお酒だが、学生であり未成年の私達(姉様、リリ様、マリア様、アクア兄様、私)は勿論、果実水だ。
そして、乾杯の音頭という一仕事を終えた陛下が私達の所にきた。
「陛下‥‥先程の言い方だと私が提供したみたいじゃないですか。」
「まだ買い取りの代金を渡してないんだから正確にはまだマリンのものだから間違ってないだろ?」
「うっ‥‥それはそうですね‥‥。」
「それで、食べてみたか?竜肉。」
「はい。柔らかくて凄く美味しかったです!このお肉は余計なことはせず、シンプルな味付けが一番の食べ方だと思います。」
「そうか!俺も食べてみるかな。‥‥‥うまっ!美味いな、竜肉。確かにこの味付けが一番だな。他が浮かばん。」
「ですよね!‥‥‥あ。でも食べる部位によっては違うかもですね。牛とか豚でも部位によって調理法変えたりしますし‥‥。」
「あ。‥‥‥それもそうだな‥‥。やっぱり色々試してみるか。なかなか竜肉なんて食べれないしな。」
「はい。私も色々試したくなってきました‥‥。」
と、私達が話しているのを遠巻きに帝国の貴族達が見ていたようで‥‥
「あの陛下と話してるのは何処のお嬢さんでしょうか?」
「確か王国の辺境伯殿のご令嬢だと伺ってましたが‥‥。」
「まあ辺境伯様の?でもお会いしたことがない方ですわよね‥‥それにまだ帝国に来て2日でしょう?もうあんなに陛下と親しげに‥‥。」
と、色々な声が聞こえてきた。
「‥‥すまん。マリン。俺のせいで変に目立つことになったな。」
「いいえ。大丈夫ですよ。元々私は帝国ではなく王国の貴族令嬢ですし、見たことない人がいれば目立ちますよ。折角ですし、挨拶して参りますね。」
「ああ。」
私が少し移動すると、皆さんの視線が集まった。
私はすぅ~。はぁ~。と小さく深呼吸をして緊張を抑えると、カーテシーをして
「皆様。お初にお目に掛けます。私はセレスティン王国より参りました、ラルク・フォン・クローバー・ウェスティア辺境伯の次女でマリン・フォン・クローバーと申します。以後お見知りおきください。」
「‥‥‥は!ご丁寧に挨拶ありがとうございます。私は~」
「私は~」
「私は~」
うおっと!そんな一度に来られても分からんよ!
既にどれが誰なんて分からん。
これで緊張から解放されると思って、嬉しくてにっこり笑ったら皆一瞬固まるし、戻ったと思ったらこうとか!
疲れる。精神的に。お願いだから解放してくれ~!
と私の心の声が聞こえたかのように助け船が。
「こらこら、11歳の女の子に大人が群がるな!怖がらせるだろ!」
ありがとうございます!陛下!
「は!‥‥も、申し訳ありません。陛下。」
「謝るのは俺じゃないだろ?」
『すまなかった‥‥‥』
おお。貴族達が一斉に私に頭を下げた。陛下すげぇ。
おっと。私が固まったらいけないか。
「い、いえ。ちょっと驚いただけですので‥‥大丈夫ですから皆様。頭をお上げください。」
全員が頭を上げてほっとした顔をしていた。
「えっと、マリン様は今11歳ということは今年学生に?」
「はい。王都の、姉様や兄様達と同じ学園に通っております。」
「王都の学園というと、王立学園ですか?」
「はい。そうです。上の2人の兄は卒業してますので、今は姉様とアクア兄様と一緒に通ってます。」
「お?クリスやアクアと一緒なのか?‥‥じゃあまさかアクアと同じく首席か?」
「はい。陛下。一応アクア兄様と同じく首席入学ですが‥‥それがどうかしましたか?」
あ、あれ?またざわつきだしたよ?何で?
「ラルク、お前のとこの子供達優秀すぎないか?確かヒスイ達も王立学園だったよな?マリンも言ってたし。王立学園って王国最難関校だろ?そこの首席って同い年の中でも王国一の才媛ってことじゃないか!」
「えっと‥‥まあ、はい。そうなりますね。」
「アクアに続いてマリンもか‥‥。」
「姉様も今は首席ですよ?生徒会長ですし。」
「生徒会長!?リリ達のどっちかじゃなくてクリスが?」
「はい。そうですよ。ね?姉様。」
「そこで私に話を振らないでよ‥‥。確かにそうだけど。」
「いいじゃないですか。途中から私の隣にいてくれたので安心できてたんですよ?」
「そう。なら、良かったわ。」
そう。私が貴族の皆様に頭を下げられた辺りから側にいてくれていたのだ。
それを感謝すると姉様も安心したように微笑んでくれた。
と、ここで辺りの空気を変えるような爆弾発言をいきなり陛下が落としてきた。
「‥‥なあラルク。お前の子供達の誰か‥‥いや、マリンをレグルスの嫁に出さないか?」
『はあ!?』
王国側全員の声がハモった。
また何を言い出すんだ‥‥陛下‥‥