47話 返り討ち
さて、恐らく皇帝陛下を狙ってる刺客?さん達。
私と狙われているであろう陛下で迎え撃つことにしたのだが、私達は闘技場の舞台の上。「格好の的」状態です。
では、陛下は自分の身は自分で守って頂くということで。
私は私で動かせて頂きます!
「では、陛下。とりあえず、私は周りの人達の安全第一で動きますね。」
「おう!」
振り返った私は皇族の方々と父様、姉様、リリ様、マリア様にシールドを掛ける為に
「兄様達!気付いてますね?殲滅手伝ってください!父様や姉様達は絶対に動かないでくださいね!」
『ああ!』『うん!』
「では。【シールド】!‥‥‥兄様達、来ますよ!」
それからすぐに刺客達は現れ、弓部隊は観客席入り口から、剣や槍部隊は舞台入り口からと別れて侵入してきた。
よく見ると、観客席側にも剣や槍を持つ侵入者がいた。
「兄様達は剣や槍を持ってる人達をお願いします!他は私が殲滅します!」
『え!?』
「では。いきましょうか!【氷弾】【土弾】展開!」
右手と左手の回りに氷の塊と石のような土の塊がそれぞれ複数展開される。
「【ターゲットロック】。‥‥‥発射!‥‥っと!」
敵弓部隊にのみ照準を合わせて発射させるが、まだまだ侵入者はいる。
「すみません。陛下。侵入者の人数計り損なったみたいです。しかも当初の倍の40人ぐらいいそうです。」
「いや。いいさ。ヒスイ達も手伝ってくれてるしな。」
「はい。でもまだ弓の人達いますね‥‥。もう一回やる前に、周りの人達に大人しくして頂きますか。」
会話の間に剣と槍の侵入者達は私達に襲い掛かっていた。
陛下は剣で思いっきり戦ってるので、恐らく少なからず死者は出ているだろう。
私は父様達と同じタイミングでシールドを張っていたので無傷なのだが、シールドに攻撃されるので正直鬱陶しい。となると「動けない」ようにすればいいじゃないか。
「私の周りの皆さん、そろそろ鬱陶しいですよ。【麻痺】‥‥‥ふぅ。やっぱり魔力刃に麻痺の効果をのせると楽だな‥‥。では第2射いき‥‥あ。やば。
‥‥‥流石に待ってくれないか。【シールド】」
第2射の前に残っていた弓使い達が矢を放ってきたが、もちろんシールドで防いだ。
「‥‥‥とりあえず、2射目やらないとな。」
そして2射目で弓部隊は全滅したので残りは剣と槍。既に兄様達の方はほぼ倒していたので加勢はいらなそうだな。
「陛下!加勢します。」
「おう!」
数分後、元々陛下は自身に向かってきた侵入者を大半倒していたので直ぐに終わった。
「‥‥‥終わりみたいですね。」
「ああ‥‥」
「あ。‥‥兄様達!怪我は!?」
「悪い!俺達全員、怪我してる。」
「‥‥陛下。先に陛下を治しますね。【ハイヒール】」
「‥‥‥もう大丈夫みたいだ。ありがとな。マリン、ヒスイ達も早くやってやれ。」
「はい。失礼します!」
「兄様!みんな集まれますか?」
『ああ。』
「‥‥‥では【ハイヒール】‥‥‥どうでしょう‥‥?」
「‥‥‥大丈夫‥‥みたいだな。ありがとな。マリン。」
その後も一人ずつ治療していく。
「ああ‥‥。俺も大丈夫みたいだ。ありがとな。」
「‥‥俺も大丈夫。ありがとな。マリン。」
「‥‥はあ~‥‥良かったぁ~‥‥父様達は大丈夫ですか?」
「ああ。マリンのシールドのお陰でな。」
「私達も無事ですよ。マリン。ありがとう。」
「いえ。当たり前のことをしたまでです。皇后様。」
「マリン!治療終わったならこっちに来てくれ!」
「はい!‥‥ちょっと行ってきます。」
「ああ。気をつけてな。」
「はい。では、【水牢獄】。」
どうせ侵入者全員このままのはずは無いので、折角ならと回収しながら陛下の所に戻ることにした。
とりあえず今いる周辺の侵入者達をまとめて牢獄に。
闘技場は舞台を360℃何処からでも見えるように観客席がある。
そこに侵入者がまんべんなくいる。めんどくさい限りだ。
全員を回収するのは面倒だな‥‥。
とりあえず、先に陛下の所に行くか。
「お待たせしました。陛下。」
「おう!ヒスイ達は大丈夫だったか?」
「はい。全員大丈夫です。兄様達も怪我はしてましたが治してきました。」
「そうか。なら安心だな。‥‥‥マリン。俺の方はほぼ殺しちまったからな。襲撃理由を聞くならマリンが倒した奴等に聞くしかないんだが‥‥‥これがさっき言ってた麻痺か?」
「はい。そうです。でも多分1時間ぐらいで解けてしまうので牢屋に入れてから聴取した方がいいと思いますよ?」
「そうなのか?じゃあ先に全員拘束するか。‥‥マリン。その水、まだ入るか?」
「はい。まだ入りますよ。生きてる人達はこの水に入れて、亡くなってる人達はストレージに入れるってことでいいですか?」
「え?マリン。ストレージまで持ってるのか!?」
「はい。黒竜もまだ入ってますよ。」
「あ。」
「あ。ってやっぱり忘れてましたね?」
「ああ‥‥すまん。後で見せてくれ。先にこいつらの回収だ。マリンに頼りきりになるがいいか?」
「はい。それが一番手っ取り早いでしょうしね。」
「助かる。」
「早速回収始めますね。」
「おう。」
まずは麻痺してる周囲の方々。
次に観客席の気絶してる方々を数回に分けて。
幸い?観客席側に死者はいなかったのでひたすら水を出して牢獄に合流させるを繰り返した。
最後に陛下が亡き者にした方々をストレージに回収した。
「は~‥‥マリン便利だな。」
「陛下‥‥そこはマリンの「魔法は」便利だなって言うところでしょう?」
「ああ、そうだな。‥‥ところでこの水、このまま城まで維持できるか?」
「はい。大丈夫です。ただ凄い目立ちますね‥‥。」
「まあそれはしょうがない。‥‥‥模擬戦どころじゃなくなっちまったなぁ。また明日になりそうだな。」
「そんなにやりたいですか‥‥模擬戦。」
「当然だ。さっきのマリン見てたら余計にやりたくなった。」
「そうですか‥‥‥戻りましょうか。」
「ああ。‥‥おい!みんな!とりあえず城に戻るぞ!」
『はい!』
という訳で全員で城に戻った。その道中、予想通り牢獄がめっちゃ目立った。なんとなく気まずかったなぁ。
そして城に着いてから気付いた。雲隠で隠せば良かった‥‥。
そして城の兵士さんに案内されて、牢屋に指示されるままに襲撃者達を分けて入れていった。
ストレージ内の死者は軍の訓練場の一角にまとめて出した。ちなみに黒竜はまた後で別に出して欲しいそうだ。
いつ出せばいいんだろ?まさかこのまま忘れ去られるんじゃ‥‥?
それに今更だけど客人としているとはいえ、他国の子供が平然と一人で歩いてていいのだろうか?
とか思いながら謁見の間に向かう。
襲撃者達を出し終わったら来るように言われていたのだ。
「陛下。お待たせしました。」
「いや。頼んだのは俺だ。ありがとな。」
「いいえ。」
「でだ。襲撃者達はこれから聴取していく。結果が分かり次第‥‥なるべくみんなが帰るまでには知らせる。」
「分かりました。」
「それで、話は変わるがマリン。あの両手から違う魔法をそれぞれ展開させるの、前からできてたのか?」
「あ。それ、俺達も聞きたかったんです。両手から別々の魔法出せるのは知ってましたが、出す数増やしていたのは初めて見たので。」
「ヒスイ兄様。出す数を増やしたのはあの時が初めてですよ。シールド張ってるのを維持しながらなので相当集中しないとできませんでしたが。」
「マリン。ちなみにあの時、同時に何個魔法を使ってたんだ?」
「えっと‥‥シールド、サーチ、アイスバレット、アースバレット、最後に少しの間ターゲットロックを使ったので、最大5個ですね。‥‥‥意外と使ってましたね。自分でも驚きです。」
『5個‥‥』
「5個は流石に初めてですね。(‥‥できたから良かったけどやっぱり攻撃2種類同時はあんまりやるべきじゃないな。)」
「なんで?」
「わ!‥‥姉様。驚かさないで下さいよ。」
最後の方はボソッと言っただけだったのだが、どうやら近くにいた姉様には聞こえたらしい。
「ごめん。で、なんで2種類同時はやらない方がいいの?」
「まずは集中しないと失敗する可能性があるからです。さっきの私の場合はシールドを張っていたのでいいですが、そうじゃなければ失敗すると、そこが隙になってやられたりします。あと、単純に集中するので疲れます。」
「ああ~なるほど。‥‥‥じゃあ私達と対戦する時も見せてくれないの?」
「そうですね‥‥。あまりお薦めできない方法ではあるのでやらないかと。さっきも「やらなきゃいけない!」って使命感のような感じでやってみたらできただけですから。‥‥‥今思えば、両方同じ魔法で良かったですね。」
「つまり偶々うまくいっただけ?」
「はい。でも感覚は覚えてるので、今度は狙ってできると思いますよ。5個同時はやりたくないですが。」
「なるほどな‥‥ラルク。改めてお前の末っ子すげぇな。」
「はい。俺もここまでの実力をつけていたとは思ってませんでしたので驚いてます。」
姉様と話してることも全員が聞いていたらしい。
‥‥‥それよりお腹空いてきた‥‥あ。お味噌汁!
「陛下。お話は以上でしょうか?」
「ん?ああ。一応な。‥‥何かあるのか?」
「陛下!お忘れですか?お味噌汁のことを!」
「‥‥お味噌汁?‥‥‥あ!!行くぞ!マリン!」
「はい!」
『‥‥‥‥』
また周りの人達をほったらかして出ていく2人だった。
その2人を無言で呆気に取られながら見送った全員がこう思ったことだろう。
『あの2人、あんなことがあった後なのに元気だな‥‥。』
本当は素直に模擬戦へ。のつもりでしたが、どうしても襲撃されて欲しくなりましたので挿し込みました。
どんどん人外さを表に出していく感じにしたかったので。
※紛らわしいので、仕込み毒設定自体をやめました。
2021,9,9 改稿。