46話 模擬戦のはずが‥‥刺客?
そして陛下と一緒に戻ろうと振り返ると、入り口に全員集合していた。
「えっと‥‥‥父様?」
「何だ?」
「皆さんも‥‥‥いつからそこに?」
「マリンが黙々と食材の味見をしてる途中だ。」
「えっと‥‥父様。私明日、料理してもいいでしょうか?」
「‥‥‥‥」
「父様。私、学園で家庭科を選択しているんです。授業内容に裁縫もありますが、料理もあるんです。‥‥‥だから素人には変わりはないですが、初めてでは無いですよ?」
「‥‥‥‥はぁ。分かった。会話は聞いていた。陛下に頼まれたなら仕方ない。いいぞ。」
「やったぁ!陛下!いいそうです!」
「ああ!よろしくな。マリン。」
「はい!‥‥あ。そういえば陛下。模擬戦いつしますか?」
「ん?朝からやればいいじゃないか。」
「朝からですか‥‥ここにくるまでの間はさほど体を動かせなかったので、多分鈍ってます。なので少し動いてからでもいいでしょうか?」
「ん?ああ、そうだな。いいぞ。」
「ありがとうございます。」
「そういえばなんで皆こっち来たんだ?」
「2人共なかなか帰ってこないからですよ。」
「おう‥‥すまん。ってことは皆も食べ終わったんだよな?もう今日はこのまま解散するか?」
「はぁ‥‥。このまま解散でいいです。色々な意味で疲れたので失礼します。‥‥行こう皆。マリンも。」
「はい。では、陛下。失礼します。」
「ああ。」
「マリン。皆も話がある。ちょっと俺達の部屋に集まってくれるか?」
『? はい。』
全員で父様とアクア兄様が使っていた部屋に入る。
「マリン。さっきも言ったが明日の模擬戦、陛下を叩きのめしてくれ。俺達の分も。」
「えっと‥‥はい。恐らくですが、兄様達もその為もあってついてきて下さったんですよね?」
「ああ。マリンなら倒せるんじゃないかと思ってな。」
「でも、マリンを怖がらせたからってのも嘘じゃないぞ。まさか意気投合するとは思わなかったがな。」
「あ。陛下のご飯への熱量が皆さんの微妙な反応の原因なんですね。」
「そうよ。ご飯はね、おいしいとは思うけど何か物足りなさを感じたのよ。マリンはそう感じなかったの?」
「はい。ご飯は純粋に食べ方の問題ですし、好きな人はご飯だけでいいって言う人もいると思いますよ?」
「そう‥‥?」
「話は変わりますが、父様。陛下にストレージを見せてもいいんですよね?」
「ん?」『?』
「皆さんもお忘れですか?黒竜が私のストレージに入ったままですよ?見せないと出せませんよ?」
『あ。』
「あ。って‥‥。陛下も忘れてそうでしたしね。それで、父様。見せていいんですよね?」
「ああ。しょうがないしな。‥‥あと素材にもなるから欲しいのがあれば申告して、他は陛下に買い取って貰えばいいぞ。倒したのはマリンだからな。マリンの自由にしていい。多分陛下も同じ事を言うだろう。」
「分かりました。そうします。」
「あ。そうだ、マリン。模擬戦の時、出来るだけ全属性使うなよ。ただでさえマリンは陛下に気に入られているみたいだからな。また勧誘されるぞ。」
「えっと‥‥もう遅い気がしますよ?黒竜を一人で倒したのが私だと分かった時点で興味を持たれた目をされてましたし。それに勧誘されてもハッキリ断っていいんですよね?」
「ああ。マリンが思った通りに言葉にしていいぞ。」
「分かりました。あと、全属性に関しても知られない方がいいのは分かってます。シリウス王子達を倒した時に使った範囲に止めます。」
「ああ。」
「ただ、私は陛下の実力を知らないので咄嗟に色々使うかもですが。」
「それでいいぞ。‥‥‥みんなはなんか話しておきたいことあるか?」
『無いです。』
「じゃあ今日はこれで解散だ。おやすみ。」
『おやすみなさい。』
ようやく1日目が終わり、私は疲れていたのかベッドに入った瞬間すぐに寝てしまっていた。
翌朝。
いつも通りの時間に起きると、同室の姉様も起きていた。
「あ。おはよう。マリン。」
「おはようございます。姉様。‥‥そういえば、どこで模擬戦するんでしょう?」
「ああ。毎年同じらしいから今年も同じ闘技場だと思うわ。」
「え?闘技場があるのですか?」
「ええ。あるわよ。結構大きなのがね。」
「‥‥‥まさか陛下が思いっきり戦える様にですかね?」
「‥‥‥ありえるわね。あ。いつもの訓練は軍の訓練場を貸してくれるわよ。‥‥もう行く?軽く動いて朝食食べてから陛下との模擬戦するんでしょう?」
「はい。さすが姉様ですね。そのつもりでした。着替え終わりましたし、行きましょう。」
何気に着替えながら会話してました。
軍の訓練場に着くと、既に兄様達やリリ様、マリア様もいた。
「兄様達、おはようございます。リリ様、マリア様もおはようございます。」
「兄様達、アクア、リリ、マリア。おはよう。」
『おはよう。』
「マリン、柔軟終わったら俺と軽く打ち合ってみるか?」
「はい。アクア兄様。お願いします。」
屋敷にいる時は柔軟→軽く打ち合い→朝食→剣のみの模擬戦なのだが、今日は朝食後に陛下との本格的な模擬戦なので肩慣らし程度に抑える。
そして昨晩と同じく皇族と一緒に朝食を食べた後、早速闘技場に全員で向かった。
そして、闘技場の舞台に立つ前に宰相さんが近付いてきた。
「マリン様。是非、陛下を叩きのめして差し上げて下さい。普段から軍の訓練に混ざってなかなか執務をしてくださらないのです。我々にも鬱憤が溜まっているのです。」
「えっと‥‥‥私が叩きのめして鬱憤は晴れるのですか?」
「ええ!」
「そ、そうですか‥‥。」
「おい。カミオ。ひどくないか?」
「ひどくありません。」
「あの、模擬戦前に確認したいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「何だ?」「何でしょう?」
「私、自衛手段として相手を麻痺させる魔法が使えるのですが、駄目ですよね?」
「そんなことできるのか!?‥‥駄目だ。」
「ですよね‥‥。じゃあ足元を沼みたいにして足を止めるとかずるいのは駄目ということですよね?」
「ああ。駄目だ。面白くない。‥‥しかしなかなか凄い魔法使えるんだなマリン。」
「そうですか?‥‥あ。身体強化は使っていいですか?」
「それは俺も使うからいいぞ。」
「分かりました。私から確認したいことは以上です。もう舞台に上がりますか?」
「おう!」
2人で舞台に向かっている途中、ふと視線を感じたのでこっそりサーチを使ってみると、敵らしき人影がちらほらと闘技場に集まって来ていた。
ん?誰を狙ってるのかな?‥‥‥陛下?
‥‥‥集まってきたな。20人ぐらいかな?
「(‥‥陛下。狙われてますよ。)」
「(みたいだな。何人いるかは分かるのか?)」
「(恐らく20人ぐらいかなと思います。どうしますか?舞台で一緒に迎え撃ちますか?)」
「(面白そうだな。)」
「(面白そうって‥‥私、巻き添えですよ?)」
「(でも倒せる自信があるんだろ?)」
「(まあ‥‥はい、ありますけど。ちなみに陛下、攻撃魔法使います?)」
「(使えなくはないが、あんま使わねぇな。)」
「(では遠距離から攻撃されるようなら私が対応します。あと、先に皇族の皆さんと父様達にシールド張っときますね。)」
「(お。そんなこともできるのか。じゃあ頼む。)」
「(はい。‥‥陛下。既に闘技場を囲む様に入ってきてます。四方八方から攻撃来ますよ。)」
「(おう!分かった。‥‥じゃあ行くぞ。)」
「(はい!)」
舞台に到着した私達は早速、動き出した。