40話 誘拐事件ー終結ー
さて。私は今、母様に怒られそうになっています。
「マリン?もう一度聞くわ。「制圧」ってどういうことかしら?クリスからは王女殿下を助けに行ったとしか聞いてないわよ?それがどうして制圧なんて物騒な単語が出てくるのかしら?」
「えっと‥‥。どこからお話ししましょう?」
「そんな事は決まっている。最初からだ。」
おおぅ。父様も同じだった。
「‥‥はい。」
私は姉様達に会ってからの行動、使った魔法全部話した。
ただ、その時まだうちにマリア様と兄様の友人もいたのでゲート、フライ、火魔法を使ったのは言わずにふわっと伝えたが。
「はあ‥‥話を聞く限りは危ないやり方はしてないみたいね。」
「はい。ほぼ不意討ちで麻痺して頂きました。」
「‥‥マリンは怪我とかしてないんだな?」
「はい。私も誘拐された人達も無傷です。‥‥むしろ死者もいないですし、誰も傷付いてないですね。」
「ならいい。‥‥マリン。王城に呼ばれてるんじゃないのか?」
「はい。騎士団の方に一緒に来てほしいって言われてます。ですが姉様と兄様達が心配してると思いまして、先に屋敷に帰って無事を知らせたいと伝えましたら許可を頂けましたので一旦帰ってきただけです。なのでこれから王城に向かおうかと。」
「なら、俺も行こう。」
「あ。私も事情説明いるだろうし、一緒に行く。マリアも行くでしょ?」
「うん。‥‥辺境伯様、私も一緒に乗せて頂けますか?」
「ええ。勿論、構いませんよ。」
「俺も行く。俺の代わりにカイトがって聞いたら尚更な‥‥お前はどうする?」
「俺は行かなくていいなら行きたくないな‥‥今も唯一の平民でちょっといたたまれないんだ。」
「まあ無理にとは言われないだろうから‥‥分かった。
‥‥送るか?」
「いや。大丈夫だ。自分で帰るよ。」
「そうか。」
「えっと、じゃあ私と一緒に父様、姉様、兄様、マリア様が行くということでしょうか?」
「そうなるな。‥‥行くか。」
「「「「はい。」」」」
「じゃあアクア、俺の分まで説明頼むな。」
「ああ。またな。」
「ああ。」
という訳で私を含めた5人は馬車で王城へ向かった。
そして、王城に到着すると、なんと騎士団長が待っていた。
「あれ?騎士団長?どうされたんですか?」
「マリンさんをお待ちしていました。‥‥マリア様方もご一緒でしたか。後程お呼びするつもりでしたので助かります。では陛下がお待ちですので、こちらへどうぞ。」
「はい。」
そして、騎士団長に連れられ客間に通された。
既に陛下は王妃様、リリ様、宰相さんと一緒に待っていたようだ。
「お待たせしてすみません。そしてお久しぶりです。陛下。」
「ああ。久しいな。まあ気にするな。皆、とりあえず座るといい。」
『失礼します。』
私達全員が座るのを確認したあと。
「早速だが、まずマリン。リリアーナを助けてくれたこと、親として感謝する。ありがとう。」
と、王妃様と一緒に頭を下げた。私が何かいう前に2人共頭を上げたあと、
「‥‥それでマリン。家族と一緒に来たということはもう一通り話しているのだろう?私達にも一部始終話してくれるか?」
「はい。その為に参りましたので。」
陛下達にも父様達と同じように話した。ただ父様達には「依頼人」として話していたが、陛下達には「コルド伯爵」と名前を上げて話した。
「コルド伯爵か‥‥マリンが捕らえた者の中にいたのでそうだろうとは思ったが‥‥。マリンは伯爵と実行犯の会話を聞いたのだろう?目的とかは聞いたか?」
「いえ。誘拐された人の中に兄様の友人がいらっしゃったのですが、本来は兄様を誘拐するつもりだったと。そして伯爵は兄様が駄目なら私を誘拐してこいと命令していたことだけですね。」
「マリンは無理でしょ‥‥。」
「姉様‥‥。陛下、伯爵は初対面でしたし、私のこともさほどご存知なかったんだと思います。」
「だろうな。‥‥ん?いつ伯爵の名前聞いたのだ?」
「ああ。それはですね。先程申し上げた話で私の名前が出たところで「お呼びですか?」と姿を見せてちゃんと「お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」と申し上げましたら意外とあっさり名乗って下さいました。」
「ちょっと待てマリン。それはさっき聞いてないぞ。今の言い方だと実行犯と主犯の前に堂々と出たみたいだが‥‥。」
「はい。出ました。あっさり名乗って下さった理由もそこみたいです。怖そうな顔の方々が私を囲んだので、伯爵が「今の状況分かってるのか?」と」
『‥‥‥』
「まあ立ち聞きしたその時点で主犯と実行犯の首領だと分かっていたので、襲われる前に一斉に麻痺して頂きましたけどね。」
「マリン‥‥リリを助けてって言っといてなんだけど、どこからそんな度胸が出てくるのよ‥‥。」
「姉様。度胸じゃありませんよ。私は内心すごく怒っていただけです。」
「え?怒ってた?」
「はい。リリ様、カイト先輩も他の誘拐された方々も勿論ですが、私はアイリスを‥‥私の友人まで誘拐していたのが許せなかったんです。助け出した時‥‥アイリスは泣いてました。気がついたら牢屋の中だったと。あんな怖い思いさせた犯人達に報復をしそうになるのを必死で抑えていたぐらいです。」
「‥‥そうだな。マリンはそういう子だったな。自分以外の人のことばかり優先する。‥‥よく抑えたな。今の年齢で殺人の経験なんてしなくていい。」
と言いながら父様は私の頭を優しく撫でてくれていた。
「そうだな。マリン、伯爵や実行犯達だがな。リリアーナを、この国の王女を誘拐した時点で死刑は確定しているが、何が目的で誘拐したかキッチリ吐かせる。怒りは分かるが私達に任せてくれるか?」
「はい。その為に麻痺させただけにしたんです。お願いします。」
「ああ。任せろ。‥‥クリス、アクア。2人も話を聞かせてくれ。マリアもな。」
「「「はい。」」」
3人もそれぞれ話し終えると。
「3人もありがとな。犯人の処遇や事情聴取が終わったらまた知らせる。‥‥のだが、マリン。今回のことはそなたの功績だ。国の宝であるリリアーナや誘拐された人達、騎士達全てが無傷で事を終結させた功績は大きい。その報酬だが‥‥」
「何も欲しいものはありません。私は女の子なので叙爵もできないでしょう?まあいりませんけど。」
「食いぎみで‥‥本当に欲のない子だな。またラルクと相談で決めろと?」
「はい。‥‥という訳でお願いしますね。父様。」
「はあ‥‥。分かった。」
「マリンはもう少し欲を持っていいと思うがな。叙爵できないから‥‥どうするかな‥‥。」
あ。陛下、悩みだしちゃった。
「‥‥あ。マリン。この後、ラルクと話があるからそなた達は先に帰っても大丈夫だぞ。」
「そうですか?では失礼します。」
『失礼します。』
そして私、姉様、兄様、リリ様、マリア様、騎士団長は客室を後にして馬車へと向かった。
「クリス、マリア。心配掛けてごめんね。」
「いいのよ。無事だったんだし。怪我もないみたいだし、安心した。」
「私も同じ。でも今日はクリスが真っ先にマリンちゃんを頼った理由が改めて良く分かったわ。」
「でしょでしょ!」
「私も牢屋の中からマリンちゃんの姿を見た瞬間安心したわ。ああ‥‥もう大丈夫だ。って。」
「ええ。私も犯人達と誘拐された人達を連れて戻った騎士達が誰も欠けることなく、しかも無傷で戻ってきたのには驚きました。マリンさん、部下が無傷で戻ってこれたのはあなたのおかげだと報告を受けています。騎士団長として、お礼申し上げます。」
「いいえ。私は私ができる限りのことをしただけですよ。」
「それでもです。‥‥あ。到着しましたね。では皆様、本日はお越し頂き、ありがとうございました。」
「いいえ。ではリリ様、マリア様、騎士団長。失礼しますね。」
そして私と兄様、姉様は先に馬車で屋敷に戻った。
屋敷に戻ると母様が出迎えてくれた。
「クリス、アクア、マリン。お帰りなさい。そしてお疲れ様。」
「「「ただいま戻りました。」」」
「特にマリン。一番の功労者ね。今日はゆっくり休みなさい。」
「はい。そうします。」
「クリス様、アクア様、マリン様。お帰りなさいませ。ただいま夕食のご準備をさせて頂いてます。ご準備が整いましたらお呼びしますのでゆっくりお休み下さい。」
「分かった。ありがとう、シャーリー。」
そう。いつの間にか夕方を過ぎていた。
そして私は自室に戻り、汗を流したり着替えたりした後、ちょっと休憩のつもりでベッドに横になったらいつの間にか寝ていて、次に目が覚めたのは翌朝だった。
◇◇◇◇◇
「失礼します。奥様。」
「あら?マリンは?」
「マリン様はお休みになられてました。」
「そう‥‥疲れてたんでしょ。起こすのも可哀想だから寝かせておいていいわ。」
「畏まりました。」
「確かに今日はよく頑張ってくれたんだ。休ませてあげよう。」
「‥‥考えてみるとマリンからの話を聞く限り、ずっと何かしら魔法を使い続けてたのよね?マリンの魔力、どれだけあるのかしら?」
「「「‥‥‥」」」
「姉様。今更ですよ。今までマリンが魔力切れで倒れたところ、見たことありますか?」
「‥‥そうね。私も見たことないわ。」
私が寝てる間、家族はこんな会話をしていたそうだ。
シャーリーが翌朝教えてくれたんだが‥‥。
私の魔力‥‥私自身が最近見てないから分からない。
理由は怖いから。自分がどんどん人外化していくのが。
ますますステータス見せる訳にはいかなくなっていくなぁ。
と思いながら今日も朝食をとりに部屋を出た。




