38話 誘拐事件ー突入ー
私は騎士団の人達が来る前に制圧するべく動き出そうとした。が、その前に。
さて、まずは‥‥逃げられない様にしないとかな。
‥‥でもあの建物の中にいる人達だけで全員なのかな?
犯人はまだ他にもいるのかな?
でもこの建物、さほど広くないのに犯人らしき気配は20人
‥‥ぐらいか?
まだ増えるなら入らない‥‥地下があるか。
とりあえず制圧は‥‥様子見してからかな。
「【ロングサイト】」
リリ様は‥‥まだ無事だな。えっと‥‥檻の中かな。
他に人は‥‥捕まってる人達だけ‥‥って、アイリス!?
アイリスも捕まってたの!?
とりあえず助けに来たことは伝えに行くか。座標も大体分かったし。
ディスアピアだけ維持してゲートでリリ様のところに出て、改めてサーチで周囲を確認して問題ないと分かったところで、リリ様の口を押さえてから話し始めた。
「(リリ様。姿を隠してますが、マリンです。姉様に話を聞いてお助けに参りました。)」
「(!)」
「(突然口を押さえてすみません。声を出されると犯人にバレる可能性があったので。手を放しますが、声を出さないで下さい。)」
コクン
頷いてくれたので手を放す。
「(マリンちゃん?)」
「(まだいますよ。‥‥リリ様。犯人の人数、合計何人かはご存知ではないですよね?)」
「(ごめんね。分からないわ。)」
「(いえ。‥‥っ!リリ様犯人がきます。ちょっと私、黙ります。)」
すると間もなく犯人達が先輩を連れてきた。
先輩‥‥何捕まってんすか‥‥。
「チッ。目標と違うやつ連れてきやがって。使えねぇな。青髪のやつ連れてこいっつっただろ!」
「すいません!やつはなかなか強くてこいつしか連れてこれなかったんすよ!」
先輩といた青髪って‥‥兄様!?
へ~‥‥兄様を狙うとはいい度胸だわ‥‥
アイリスにリリ様に先輩まで‥‥
「チッ。しょうがねぇ。依頼された人数は集めたんだ。そろそろ出るぞ。‥‥お前はここに入ってろ!」
「うわっ!っと。‥‥あれ?リリアーナ様!?」
「ええ。」
「お前ら大人しくしてろよ!‥‥おい、行くぞ!」
「はい!」
犯人達が地下室から去るのを確認してから。
「(ここに入ってきて正解でした。リリ様。私は戻って上を制圧してきます。)」
「(待って、マリンちゃん。さすがに危ないわ!)」
「(大丈夫ですよ。リリ様にももう少しここで我慢して頂きますが‥‥。)」
「(そんな事はいいから無茶しないで!)」
「(それは申し訳ありませんが、それは聞けません。今私は怒りを押さえるのがやっとなんです。)」
「(マリンちゃん‥‥ごめんね、お願い。ここにいる人達を助けて。)」
「(勿論です。私の友人までいましたしね。‥‥では失礼します。)」
「(うん。気をつけて。)」
リリ様の最後の言葉に返事をせずにゲートで元の場所に戻ると、今度は辺りの雰囲気に似つかわしくない豪華な馬車が止まり、中から出てきた同じく豪華な格好の人と執事さんらしき人が建物の中に入っていった。
あの人が「依頼人」かな?
さて、と。やってやりますか!
姿を消したまま扉前に降りて振り返り。
「【土壁】。」
高さ3メートル幅1メートル四方の土壁を作った。
待てよ‥‥今正面から入ったらさっきの人達に会うことになるな‥‥2階建てだし、上にもいるみたいだし‥‥
上から行くか。そしたら全員拘束できるし。
ということで、再びフライで飛んで木枠の窓から中の様子を見ると、全員が忙しなく動き回っていた。
あ。そうだ!あれ試してみようかな。
「(【範囲指定】‥‥【麻痺】)」
『うわっ!』
お。成功かな?じゃあ行きますか!
誰も見てないのをいいことに窓を火弾で破壊して中に入ってからここでやっと雲隠を解除し、サーチのみ使ったまま話し掛けてみた。
「こんにちは。手荒い登場ですみません。後で復活してまた襲われても面倒なので拘束させて頂きますね。」
『!』
麻痺しているため声にならない声を上げていた。
拘束といってもロープの類いは持ってなかったので仕方なく魔法で拘束することにした。
えっと‥‥牢獄的なやつかなぁ。動かしながらがいいかな。う~ん。水でいいや。後で形変えたりできるだろうし。
「【水牢獄】。さて、みんな入ったかな?‥‥よし。大丈夫みたい。じゃあ次行きますか。」
と、そのまま移動しようとしたが。
「あ。このままじゃ通れないな‥‥水だから形は変えられるけど‥‥ん?ああ‥‥まあ窓壊したからね。向こうから来てくれるよね。」
ただ面倒だな。さっきの手は使えないか。じゃあもう手に麻痺効果乗せるか。
魔力刃の要領で魔力を両手に纏って、「【麻痺】」
これでいけるかな?
「━━━おい!今のお‥」
「お。成功した。すみません。ちょっと大人しくしててくださいね。‥‥ってまだ来るな。仕方ない。廊下で相手しながら進むかな。」
やってきた敵の横に移動して腕に触れると倒れた。
そして水を生み出して今麻痺させた人を水牢獄に合流させる。
そして「もうバレたからいいや。」と扉付近を今度は氷弾で破壊した。
そして廊下に出るとやっぱり犯人の一味が来た。
「お前!どこから入っ」
「すみません。」
と速攻で麻痺させて水牢獄へ。時に複数人纏めてきたりしたが、どんどん進みながら倒した。
階段を降りようとすると、1階から話し声が聞こえたので立ち止まって聞いてみると。
「私が頼んだ者は集められたんだろうな?」
「いえ。一人、アクアという少年だけ捕らえ損ないました。」
「何!?‥‥しょうがない。代わりに妹のマリンを拐ってこい。」
おや?呼ばれましたよ?では出てあげようじゃないですか。
「お呼びですか?」
『っ!』
「あら?今私の名前が出たと思いましたが‥‥。ところで私はあなたのことを存じ上げないのですが、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?。」
「‥‥コルド伯爵だ。」
「あら。本当に教えて頂けるとは思いませんでした。」
「マリン嬢。そなたは今の状況を分かっているのかな?」
「えっと‥‥複数の怖そうな方々に囲まれていることでしょうか?」
「ああ。そうだ。‥‥マリン嬢。何故そんなに落ち着いていられるんだ?怖くないのか?」
「そのお答えとしては、私が「2階」から降りてきたことでお分かり頂けるかと。」
『っ!』
私がまだ階段に浮かせていた水牢獄を見せるとその場の全員が驚いていた。
「ま、マリン嬢。それは‥‥そなたが?」
「ええ。そうですよ。‥‥‥それで、先程アクア兄様の代わりに私を拐えと聞こえたのですが?」
「うっ。そ、それは‥‥。」
「いえ。やっぱりいいです。‥‥さて、皆さんも水に入れて差し上げますね。冷たくて気持ちいいと思いますよ!」
『い、いや!待て!』
「嫌です。面倒なので、【範囲指定】‥‥【麻痺】。皆さん仲良くちょっと待っててくださいね。」
この場の全員麻痺で倒れているのを確認すると、伯爵もついでに水牢獄へ合流させた。
地上に他に仲間がいないことを確認し、リリ様達が捕まっている地下へと向かった。