32話 魔法開発と召喚魔法
学園長と話した翌日。
この日は週末ということで、いつもなら姉様と兄様を連れて領地の魔物の森に魔法の練習に行くのだが、今日は2人共やめとく。と辞退した為、私は1人で来ている。
しかも1人をいいことに普段より奥の方に来ている。そして1人ということは考えていた魔法を試せる。
ということで、まずサーチで周囲の確認をするとわりと大きな反応があった。
えっとこの気配は‥‥何だろ?
試してみるか。視覚を遠くに飛ばすイメージかな‥‥?
視覚って英語で何だっけ?‥‥あぁ~こんな時に元社会人の弊害が~!!英語使わない職場だったから弊害が~!!
ん?英語じゃなくてもいいのか。この世界に英語なんてないんだし。
えぇっと‥‥あぁもう!これでいいや!
「【ロングサイト】」
ん?おぉ?成功か‥‥?
サーチと連動‥‥出来てる‥‥っぽい?
‥‥あ。熊だ。‥‥あぁお昼寝中かな?魔物化してないし、結構奥の方にいるから討伐しなくてもいいかな。
でも確認だけはしないとね。成功かどうか分からないし。
そしてフライを使って目標の上空で止まると、そこにはロングサイトで見たままの光景があった。
おっ!やっぱり成功だった!
しかし気持ちよさそうに寝てるな‥‥。
邪魔しちゃ悪いし、もう少し飛んでから降りよっと。
そして改めて地面に降りてもう一度同じ事を繰り返してみるとやっぱり慣れてないからか変な感じがした。
う~ん。これ便利だけど慣れるまでは目を瞑って集中しないと気持ち悪いな。というよりまず目が疲れる‥‥。
しれっと学園で練習しようかと思ったけど無理だな。頭痛くなりそう。練習するなら寝る前だな。王都の外に集中すれば何かいるでしょ。
‥‥あっ。ヤバい目標決めずに使うんじゃなかった。
目‥‥疲れた‥‥。ここで寝たら自殺行為だな。
「【ゲート】」
魔法を全部解除して片目ずつ擦りながら目的の場所へと向かった。
〔マリン様?〕
「雪~魔法の開発してたら目が疲れた~仮眠取らせて~。」
〔ふふっ。はい。どうぞ。〕
また雪を枕にすると
「あぁ~この安定感と毛並みの気持ちよさ‥‥さすが‥‥ゆ‥‥き‥‥。」
(あら?もう寝てしまうなんて、どういう使い方をするとこんなに疲れるのかしら?‥‥魔力量は元々凄いけれど、さほど減ってはないわね‥‥。それにしても魔法の開発‥‥?起きたら教えてくれるかしら?)
ーそして2時間後
「‥‥ん‥‥雪?」
〔お目覚めですか?〕
「‥‥うっ‥‥ん!‥‥はぁ~よく寝た!」
両手も背中も伸ばして一息つく。
〔疲れはとれましたか?〕
「うん!めっちゃスッキリ!普通にベッドで寝るよりスッキリするよ。‥‥ん?私、どれぐらい寝た?」
〔今日は2時間ぐらいですね。〕
「2時間か‥‥微妙だな‥‥帰るには早いかな。う~ん。あ。雪、折角だからちょっと話す?」
〔私で良ければ、喜んで。〕
「やった!雪は私に何か聞きたい事とかある?」
〔聞きたい事ですか‥‥。ではまず先程までの魔法の開発というのは?〕
「ん?ああ。まず探査の魔法のサーチは元々使えてたの。で、目標の‥‥例えば遠くの魔物を視覚を飛ばして見れたりしないかなって思ってそれを試してたの。」
〔‥‥凄い発想ですね‥‥!成功したのですか?〕
「うん。成功はしたよ。でも慣れるまでは苦労しそう。さっき試してて凄い目が疲れたんだよ‥‥。」
〔それで先程のご様子でしたか‥‥。魔力量はさほど減ってはいない様子なのにと不思議だったのです。〕
「あぁ~まあそうだよね。私もそう思った。」
その後も雪と雑談をしてから私は王都に戻った。
そして数日後。
今日の魔法科の授業だが、なんと召喚魔法を試すそうだ。
魔法師団から臨時の講師が来て早速自己紹介してくれたのだが‥‥
「はじめまして。俺はフリード・グラジオだ。よろしく!」
チャラい‥‥。
今、目の前にいる茶髪に薄紫の目で20代後半ぐらいの男性に対する、私が心の中で呟いた第一印象でした。
「みんな一通り召喚魔法については座学で学んでるな?」
『はい。』
「よし!あ。確か今回はSクラスの生徒だったな。首席も魔法試験だったはずだし‥‥首席!手上げてくれるか?」
げっ!何で!?
とは言えないので素直に手をあげた。
「お!君か。名前は?」
「マリン・フォン・クローバーです。」
「クローバー?もしかして兄貴がいたりするか?」
「はい。兄が3人と姉が1人います。‥‥もしかしてアクア兄様ですか?」
「お!やっぱりアクアの妹か。去年も同じように召喚魔法の臨時講師してな。しかし兄妹揃って首席入学とはな。」
「そうなのですね!」
「あの‥‥フリードさん。授業中ですよ?」
と話してると流石にレイヤ先生から苦情がきた。
「ああ、すまん。じゃあ召喚魔法を使えるように魔方陣を書いた紙を渡すから並んでくれ。」
そして全員に行き渡ると‥‥
「じゃあ一人ずつ召喚してみようか。」
『はい。』
「あっ。マリンは最後な。」
「え?」
なんで?しかも呼び捨てだし。まあいいけど。チャラいけど面倒見良さそうな人みたいだし。
そして私以外の全員が試し終ると。
「じゃあ最後にマリン。魔力込めすぎるなよ。」
「え?はぁ‥‥。分かりました‥‥?」
ん?込めすぎるなってじゃあ基準を教えてよ。って思うけどまあとりあえず、やってみますか。
込めすぎるなか‥‥どれぐらいだろ?召喚獣はランダムだったはずだから魔力量で出てくる召喚獣は左右されなかったよね?あれ?込めすぎ関係なくない?‥‥今はいいか。
‥‥‥まあ多分これくらいの魔力量でいいかな?
と、魔方陣に魔力を程々にゆっくり込めると魔方陣が光り、召喚獣が出てきたのだが、それを見た私は
ヤバい!!早々に帰ってもらわないと!
と、内心慌てているのを必死で隠しながら普通を装って
「か」
『か?』
「亀さんだ~!おっきいね‥‥。」
『‥‥‥。』
そう亀。でもただの亀じゃない。「デカい亀」。
この亀さん多分「玄武」でしょ‥‥まずい‥‥
みんな私の背後にいてしかも少し離れてる。でも亀は目の前。即ち小声なら私の声は届かない!はず。
「(あの、あなたに触れたら念話できる?)」
〔(はい。)〕
「(分かった。あなたは魔方陣から出られないはずだから私が近付くね。顔に触っていい?)」
〔(はい。)〕
そして亀の(多分)頬辺りに触って念話で語り掛けた。
《えっと、多分だけど気付いてるよね?》
《はい。御使い様ですね?》
《うん。だけど私は誰にも知らせてないの。だからさっき何も言わないでくれて助かった。》
《いえ。御使い様を見た時に喋らない方がいいかと思いましたので。》
《うん。助かった。ちなみに確認だけど、あなた「玄武」よね?》
《はい。》
《でも流石に今契約するのはまずいからできないの。》
《はい。承知しております。白虎は契約出来ているようですが、こうも人間がいると面倒がおありでしょうし。御使い様がいらっしゃるのをお待ちしております。》
《うん。呼び出しておいてごめんね。》
《いいえ。構いません。ああ、それと御使い様は純粋で綺麗な魔力をしていらっしゃいますので、召喚魔法を何回試そうと白虎以外の四神の誰かが必ず出てくるかと思いますので、私が帰った後は人前で試さない方がよろしいかと。》
《そうなの!?》
《ええ。》
《分かった。教えてくれてありがとう。》
《いいえ。では私は失礼致します。》
《うん。またね。》
と言って私が手を話すと玄武は帰っていった。
さて、と私が振り返ると何故かみんな尻餅をついていた。
「あの‥‥皆さん大丈夫ですか?」
「いや、マリン。むしろお前は何故平気なんだ!」
玄武が帰ったらフリード先生が早速とばかりに立ち上がって詰め寄られた。
「え?何故と言われましても‥‥。」
「俺達はあの亀から出ていた魔力による圧を受けてこうなったのにマリンは何も感じなかったか?」
「え?魔力の圧ですか?‥‥‥何も。」
「マジかよ‥‥で、どうだったんだ?契約できたのか?」
「いえ。私は主の器じゃないとか色々言って帰ってしまったので契約できませんでした。」
勿論嘘ですが。私、ちゃんと繕えてるかな‥‥。
「まあできなかったならしょうがないさ。」
おっ。あっさり引いてくれた。
「そうですね。残念ですが‥‥。あ、そういえば何故私に魔力を込めすぎるなと忠告されたのですか?」
「ああ~。それはな、去年アクアが魔力込めすぎたみたいでな。しかも一気にだ。で、魔方陣の紙が破れた。」
「‥‥‥‥」
「うん。言いたいことは分かるぞ。俺も思った。なにしてんだってな。そのアクアの妹なら忠告しといた方がいいかと思ってな。」
「なるほど‥‥。」
と話していると授業終了のチャイムが鳴った。
「ん?終わりか。あ、マリン。気が向いたら魔法師団に遊びに来ていいぞ。アクアとマリンなら歓迎するぞ。」
「え?学生が遊びに行くところじゃないですよね?」
「‥‥流石兄妹だな。去年のアクアと同じ反応かよ‥‥でもふらっと来ていいからな。」
「はぁ。分かりました。行くかは分かりませんが。」
「ああ。それでいいよ。じゃあな。」
「はい。」
うん。第一印象はチャラいなと思ったけど、印象変わった。近所の面倒見のいいお兄ちゃんって感じだな。チャラさは相変わらず感じるけど。
と思いつつ私もお昼を食べるべくリジアと一緒に移動した。