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転生できたので自由に生きたい  作者: 霜月満月
第11章 学生最後の年
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309話 閑話 マリンの成人 後編

続いて後編です!

━そして、王城の一室で交わされた会話の内容は驚く程すぐに現実のものとなった。


辺境伯家一同が渋々マリンの成人パーティーの準備や招待状を出したりなどを大急ぎで行っていた最中、王城からそれは届いた。


マリンの冒険者ランク昇格申請書類である。


マリンはもちろん学生なので、学園に通いつつパーティーの準備の手伝いをしていた状況だった訳だが、シリウスやリオトから様々なことを聞いていた。


まず、私のランク昇格がSクラスにということで、例え複数国の王達の推薦といえど、他の貴族家や大臣達などを無視することはできないらしい。


━ということで。


私の冒険者ランク昇格の件を改めて議会の審議に上げたらしいのだが、『いくら救国の天使と名高い英雄でも、Sランクにする程の実力があるのか?』と一部で難色を示す者がちらほらいたらしい。

だが、陛下が『帝国でSランク指定されていたアンデットの浄化任務を指名依頼という形で達成し、当時ネクロマンサーと呼ばれ、各国で誘拐を繰り返して世界的に指名手配されていたルシアを捕らえた逸材だが、それでも実力不足か?』と問うと、誰も何も言えなくなったそうな。


そして、陛下はこの時気付いてしまった。


『あ。マリンにルシアを捕らえた報酬渡してない。事情聴取まで協力してくれたのに』 と。


まあ、それも本来は冒険者ギルドの依頼の中ではあるはずだが、ルシアの件は各国の悩みの種でもあったため、『国としても報酬を』と世界各国共通で取り決めがあった。


それもさらっとその場で言ったところ、さすがに難色を示す者は誰一人現れず、満場一致で私の昇格は許可されたらしい。


さて。


本来なら、ギルドマスターからも許可を得られなければ昇格などできないのだが、今のところ王国や帝国、教国の3国からの昇格申請。

それはもう、拒否権などあって無いようなものだろう。


まあ、ギルドマスターは当時、ルシアを捕らえるために早くマリンにSランクになって欲しいと言っていたし、そのルシアは既にマリンが捕らえ、事情聴取のために各国を回っている状況だ。

ギルドマスターも急ぐ理由はなくなったはずだが、難色を示す理由もないだろうと、実質マリンのSランク昇格は決定したようなものだった。


それらを聞いたマリンは数秒の沈黙のあと‥‥


「ねぇ、シリウス、リオト。」

「なんだ?」「なんでしょうか?」

「なんでこう、みんな行動が早いんだろうね?─陛下って立場はさ、特に忙しいはずよね?暇なはずないよね?」

「まあ、もちろんそうなんだが、マリンの功績に対する報酬を纏めると妥当では?と感じたらしくてな。」

「なんだかんだあって忘れていた‥というのもマリン姉様に失礼ですが、それらも加味して‥ということらしいですよ。」

「それで、なるべく早くSランクにしてしまおうと思ったらしい。それならマリンの成人と合わせてめでたいことを発表しやすいだろうと。」

「は?‥‥え?陛下は私に自分の誕生日で『Sランクに昇格しました~!』って発表しろと!?」

「いや、そこの強制はしない‥‥とは思う。」

「されても無視するけどね。─自分の自慢とかやだし。」

「だよな‥‥」「ですよね‥‥」


そんな会話をしつつ、日々は過ぎ━

私は週末に冒険者ギルドに向かい、無事Sランクに昇格し、プラチナのギルドカードを手にした。


またギルドマスターと別室で話すことになったのだが、その時こんな会話をした。


『やっぱりマリンはSランクまで早かったわね~。』 と。


それに私が『先にルシアを捕まえちゃいましたけどね。』と答えると


『私はむしろ、ネクロマンサーを捕らえた時点で昇格させると思ってたぐらいよ?』


『え!?』


『その時点で誘拐されていた人達の件で各国から感謝されてたでしょ?ネクロマンサーは各国の脅威だったんだから。それを捕らえただけでも、相当でしょ?』


『ええっと‥‥』


『言ってなかったかしら?ネクロマンサーはSランク指名手配犯だったのよ?』


『つまり私は意図せず本来受けることすらできないランクの依頼を2件も達成してしまっていたと。』


『その通りよ。英雄さん。─むしろあなたが今日までAランクだったことの方が問題だわ。』


『そ、そうですか‥‥』


私は冒険者になった当初、週末ぐらいは依頼を受けようかなぐらいには思っていた。

だが、予想に反して色々やることができてしまったので、結局週末だろうが関係なく依頼を受けにすらギルドに行ってない。

むしろ盗賊を捕らえた時やルシアの件等の報酬受け取りか、今回の様に昇格する時しか行ってないぐらいである。


私の中では『卒業してからランク上げすればいいや』ぐらいにずっと思っていたのだ。


にも関わらず、私は在学中にSランクになってしまった。

なので、未だにSランクになったことに戸惑いが残っているのである。


なので、ギルドマスターにこんな曖昧な反応を返していた訳だが、ギルドマスター的には珍しいSランク冒険者という人材を確保できたと喜びの方が勝っていた様子だった。


━冒険者ギルドから帰ってきたあと。


直後に家族に囲まれてギルドカードのお披露目もしたし、翌日は友人一同にも乞われて見せた。


その全員の『おお~!』というある意味予想通りの感嘆の声を聞いた。


━そして。


ついにきてしまった。

私ことマリンの成人(15歳)の誕生日。


ちなみに。

まだ誕生日が来てなくとも、その年に同じく成人する者はもれなく招待できる。何故なら、誕生日パーティーとはいうが、実質明るい内にやるお茶会と然程変わらないからである。


でも、『成人祝い』なので、同い年から上のみ。

だから友人一同は招待できるが、リオトやルビアは招待できないのだ。


ということで、私は早めに昼食をとったあと、シャーリーを筆頭にメイドさん達に着替えを手伝ってもらってドレスアップすることになり、化粧も軽くだが施された。


ちなみにドレスは例の如く姉様とリリ姉様、ディアナ母様が協力していつの間にか用意していた。


いや、本当に姉様は真面目に仕事しているんだろうか‥‥?


そんなことを感じつつ、改めて姿見に自分を写してみると。


「‥‥我ながら着るものと化粧で変わるもんだな~‥‥」


と呟くと、シャーリーが若干怒り混じりで返してきた。


「マリン様。いい加減自覚してください!マリン様は幼少の頃はそれはそれは可愛らしい方で、今ではお美しくなられていらっしゃるのです!マリン様がその奥様譲りの美貌を生かそうとなさらないのを、悔しく思っているのですよ!?」


その言葉に手伝ってくれた他のメイドさん達も口々に同意を示してきたため、私は思わずたじろいだ。


「な、なんかごめんなさい‥‥」

「一先ず、ご家族にそのお美しい姿を見せに参りましょう!マリン様。」

「!! は、はい。」


なんかこう、シャーリーから圧を感じた私は思わず頷いていた。


そして、応接室に集まっているという家族の元に向かうと━


ええ。それはもう、絶賛されましたよ。


ちなみに。

ヒスイ兄様家族だけでなく、朝私が領地の屋敷に向かって、しれっとフレイ兄様家族も連れて来ている。

姉様もいるし、セレス母様は珍しく父様達と一緒に馬車で来ている。


フレイ兄様家族はパーティーに参加しないけども。


一通り家族が感想を言い合ったあと、父様は座っていたソファーから立ち上がった。


「さて、マリン。」

「‥‥はい。」


返事を返した私の様子を見た父様は言葉を最小限にしてくれた。


「‥‥一先ず今日だけは令嬢らしく。を心掛けてくれ。」

「‥‥‥‥はい‥‥」


分かるだろう。私は着替えた時点でやる気をなくしている。

着慣れないドレスを時間を掛けて着る羽目になるし、辺境伯令嬢として恥ずかしくない振る舞いをしないとだし‥‥と正直憂鬱でしかない。


せめてもの救いは、卒業パーティーとかで着る様なしっかりした物ではなく、それより軽めのドレスだということ。そして、我が家の庭園での開催であることだ。


王城の大広間とか本気で『冗談はやめてくれ』レベルで嫌だったので、本当に我が家開催で良かったと心から思った。


**


その後、友人一同を含めて招待客達を玄関口で出迎え、案内をメイドさん達などに任せて‥‥と一通り我が家の庭園に集まったところで。


フレイ兄様以外の兄妹や私は揃って庭園に入場した。

父様達は先に庭園にいて、招待客の相手をしてくれていた。

そこにはリリ姉様もいて、フェリシアちゃんはフレイ兄様夫妻と連れて来た乳母に任せている。


そして、私達兄妹がわざわざ『入場』したのは、ものすごく嫌だったが、もちろんの主役だからである。

私一人ではなく、ヒスイ兄様達も巻き添えになったことは私としては『やった!』である。


一人で登場とか、自分の誕生日だろうと私には拷問なのである。


━と、ものすごく不本意な内心を一切表に出すことなく私達兄妹は自分達の席に到着すると、当たり前だが、挨拶から始めた。


「改めまして、マリン・フォン・クローバーと申します。

皆様、本日は急なご招待にも関わらず、お越し頂き誠にありがとうございます。─本日、成人を迎えたのは私マリンですが、この成人パーティーについて家族と話す上で兄達がこのパーティーを催していないとのことでしたので、今更ではありますが兄達も私同様にお祝い頂けたらと存じます。─さて、長話は私の性に合いませんので、ご挨拶はこの辺りで。皆様、本日はどうかごゆるりとお楽しみ頂ければと思います。」


そう言ってちゃんとカーテシーで礼をとってから頭を上げると、拍手が上がったので、とりあえず笑顔を浮かべておいた。


そして、私達兄妹が座ると、今度は父様が立ち上がり━


「さて、私の子供達はあと一人フレイがいますが、今は皆様ご存知の通り、妻と生まれたばかりの息子がいますので、領地におります。参加できないことを本人に代わり、お詫びを申し上げます。」


これには庭園にいる全員が『もちろん分かっている』という風に頷いていたので、問題ないだろう。


「では、これからの時間、皆様には心行くまでお楽しみ頂ければと存じます。」


という父様の言葉で自由時間に突入である。


本来は余興など、なにかしらするのかもしれないが、私達は何もする気はない。

それを理解している友人一同が私達の席に一番に来た。


「その、マリン。私、やっぱり場違いじゃ‥‥」


『友人一同』なので、リジアやシリウス達だけではなく、アイリスやベネトさんも来てくれている。


「なに言ってるの?アイリスも私の友達で同い年。十分参加資格があるの。立場とか気にしなくていいから。怖いならリジアとずっといたら大丈夫でしょ?」

「うっ‥‥そ、そうだけど‥‥」


そんなアイリスはやっぱり最初は『私、そんなパーティーとかに着て行く様なものないよ!?』と参加をごねられた。

なので、私やリジアの屋敷に来てもらい、『どれがいい?』とアイリスに選んでもらい、サイズ調整や尻尾穴を開けるなどしてから『これ着て来てね』と渡した。


そこで無言になったアイリスに渡したのは、選んでもらったリジアが持っていたドレスで、調整済みのものだった。


そう。アイリスに拒否権は与えなかった。

こうして貴族家の屋敷に入るなど、私達友人家以外はなかなか叶わない。『何事も経験だよ!』と唯一の平民であるアイリスにも参加してもらった。


ということで、私の友人一同は王太子や皇太子から平民まで幅広くいる。

もちろん、アイリスは兄様達と初めて会うので、自己紹介からしていた。


そして、友人一同が動いたことにより、他の招待客達も動き出し‥‥


私達兄妹グループと、シリウス・レグルス・ベネトさんグループにそれぞれ人が集中することになった。

それを一息つきながら見ていたリジア、リゲル、アイリスは『大変だったね』とパーティー終了後、他人事の様に告げてきた。


シリウス、レグルス、ベネトさんにはお互いに『お疲れ』と言い合った。


そうして、無事私の成人パーティーは終わった。

ほんの数時間とはいえ、淑女の仮面を被り続けるのは本当に疲れた。

私達兄妹に挨拶や様々な話━━主に姉様、アクア兄様、私に対して『婚約者にどうか?』という内容━━を振られる度に上手く流すのに苦労した。


私達兄妹に挨拶が終わった人達からシリウス達に挨拶などしに行き、その後はそれぞれでの社交に移る。

中には私達兄妹に挨拶する順番を待つ間に、先にシリウス達に挨拶に行く人達ももちろんいたため、私達は休む暇がなかったのである。


まあ、それらをリジア達に聞いたのは先程も言った様に、パーティーが終わった後だったけども。


アイリスはパーティーが終わったその瞬間、やっぱり場違いだと落ち着かなかった様で、速攻で帰っていった。

招待客達もそれぞれ見送ったあと、残ってくれていたアイリス以外の友人一同と共に、庭園に戻った。


そこにフレイ兄様家族も合流し、父様達と共に私達を労ってくれた。


そして、家族や友人一同のみということで、私はようやく力を抜くことができた。


「ああ~‥‥」


と声を溢しつつ、私は椅子の背凭れに凭れて晴天の空を見上げた。

それを見たリジアがくすりと笑いつつ━


「改めて、お疲れ様。マリン。」

「うん‥‥ありがとう~‥‥」

「疲れた?」

「もちろんだよぉ‥‥淑女教育受けてたって、前世は平民だったからね~‥‥淑女の仮面被るの疲れる‥‥」


もちろん、この会話を家族も一緒に聞いている。


「マリン、改めて言おう。─よく頑張ったな。」

「ありがとうございます、父様。」

「ヒスイ達も。─不思議な気分だったろ?」

「ええ。俺なんか9年前ですからね。」

「私は4年前なので‥‥‥ってやっぱり不思議な気分でしたね。」

「俺は2年前なので、そこまでは。って感じです。」


ヒスイ兄様、姉様、アクア兄様の順に答えると、フレイ兄様も━


「俺は今回参加しなかったから、もうすることはないでしょうね。」

「フレイ兄様だけ‥‥」


と私が態勢を戻してじとんと見ると、フレイ兄様は苦笑いを浮かべた。


「仕方ないだろ?」

「‥‥そうですね‥‥」


一つため息を溢した私は再び空を見上げた。


「とりあえず、晴れて良かったですよね~」

「だなぁ‥‥」


側でシリウスが答えたのを聞きつつ座り直した。


「ねぇ、シリウス。」

「ん?」

「これで少しは満足したかな?陛下。」

『‥‥‥』


私の一言に無言になった一同。

そんな中、苦笑いを浮かべたシリウスが答えた。


「さすがに満足してくださっただろ。─俺から見ても、今日のマリンは立派な淑女だった。」


それにリゲルやレグルスも続いた。


「ああ。確かに立派な淑女にしか見えなかったな。」

「私もそう思ったよ。─マリン。今のドレス姿も綺麗だし、今日だけで何度も惚れ直した。」

「は!?‥‥え?い、いきなりなに!?」

「お。動揺してくれた。」

「は!?」

「「レグルス‥‥」」


そんな私達の会話にリリ姉様とマリア姉様が加わった。


「惜しいわね~シリウス。今の言葉を先に言えたら、マリンちゃんを動揺させられたのに‥‥」

「それはリゲルもよ、リリ。」

「そうね。─なかなかマリンちゃんとの距離感が変わらないわね~」

「そうね~‥‥マリンちゃんは誰を選ぶのか、楽しみよね?リリ。」

「ふふっ。その興味は5年前から変わらないわね。」

「ふふっ。そうね。」

「もう!リリ姉様、マリア姉様。そこで楽しまないでください!」

「「無理よ。」」


とにこやかに返してきた義姉2人に戸惑う私。


「え!?」


そんな会話をしつつ、少しの間まったりと紅茶を飲みながら休息をとったあと、友人一同もそれぞれ帰っていった。

まあ、レグルスとベネトさんはお隣さんなんだけど。


とりあえず。


これで一先ず義務は果たしましたよ!陛下!


この作品の中での貴族の社交の設定が‥‥

作者的な設定で『こんな感じで考えてます。』という内容を『裏』の設定回に追記しました。

ついでに周辺国もざっくりとですが、追記しました。

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