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転生できたので自由に生きたい  作者: 霜月満月
第11章 学生最後の年
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307話 後ろめたさを感じる隠し事

お待たせしました!

━さて。


シリウスの極秘視察に付き合ったり、アイド君が生まれたりなどがあった中。


私の悩みの最後の一つである、学園内の食堂の件。


その前に学生の生の声を聞いてみないかと先生達や学園長、統括責任者である公爵様。理事長である陛下。

そんな感じに相談させてもらい、許可も下りた。


ということで、早速箱作りから始めるべく先生達に材料調達を頼んだ。

そして、生徒会室に届く板等々。


もちろん、生徒会の業務も怠ることなく終わったあと。


「さあて。ちょっとでも進めないとね。」


と板を前にして笑顔を浮かべたつもりだったのだが、リジア曰く、笑顔ではなくにやりとしている様にしか見えなかったそうな。


一同が苦笑いになっていたのである。


そんなことはいい。


事前に先生に紹介してもらった専門家(大工さん等々)に教えてもらいつつ制作済みの設計図を基にまずは板を切断したりだ。

しっかり計測してさあ、切断といこうか。━というところでふと思い出した。


ここ、学園。

平民もいるが、大半が貴族の子息令嬢が集まる場所。

当然、そんなところに大工道具などの物騒な代物はない。

庭園の整備は私達生徒が引き続き大部分を担っているままだし、ご指導頂いてる庭師の方も工具などは必要な時だけ持参してくれるので、本当に工具や大工道具類含めて物騒なものはない。

あるとしたら模擬刀や木刀ぐらいだ。(武術科の授業用)


さて、どうしようか。


そう考えたのは数秒だった。


「ふふっ。」


思わず声が漏れてしまった私に引いた様子の一同。

でも無視した私は片手を軽く上げた。


「のこぎりがないなら、魔力刃で切ってしまえばいいのよ。─ね?」


『ね?』と視線を向けられた友人達は苦笑いで頷いた。


それからのマリンは早かった。

予め切断する位置に線を引いているので、スパスパ魔力刃で切っていく。


マリンとしては(かんな)掛けやあるなら防腐剤などを塗ったりしたかった。

だが、今のところ『試験的に』という期間限定で設置するとのことなので、そこまでこだわる必要はない。


現に、既に怪我などしないように表面を整えてくれている物が届き、それをマリンがスパスパ切ったので、問題はなさそう。

ちなみに、釘打ちするトンカチ的なものも当然ないので、凹凸を作って嵌め込めばいい様にしてある。

ということで、早速マリンはそのまま組み立て始め、あっという間に一個完成させた。


『‥‥‥』


一連の様子をただただ無言で見ていた友人達と後輩達。


偏に『辺境伯家という上級貴族の令嬢が何故こんなにすんなりできるのだろうか‥‥?』と後輩達は思っているからで、友人達はもう、マリンが何をできても驚かなくなっているので、単に『相変わらず器用だな~』ぐらいの感想なのだが。


とりあえず。


この日はこの一個を作っただけで解散としたが、翌日からは同じく業務終了後に生徒会全員で取り掛かった。


なので、あっという間に幾つか完成し、生徒達の目に止まりやすいところに転々と設置していった。


『「こうしてほしい」等の要望や希望。授業や日々の学園生活においての改善提案など、自由に書いて投稿してください。記名は必須ではありません。匿名でも無記名でも構いませんので、悪戯等はせず本音を書いて頂ければと思います。

                     生徒会一同』


という張り紙と共に。


そして。


翌日の放課後。

マリン達はそれぞれ設置した目安箱の中身を確認してから、生徒会室へと向かった。

マリンと友人一同がバラけて確認して生徒会室で合流ということにしたのだが‥‥


「どうだった?」

「「「「なかった。」」」」

「だよね~‥‥ちなみに私が見たところもなかった。」

「まあ、昨日の今日では無いよな。昨日までなかったはずの物が設置されてる訳だからな。─例え生徒会からの物だとしても、まずは怪しむよな。」

「だよね~‥‥やっぱり、先生達に頼むかな。」

「怪しい物じゃないよ~って?」

「うん。」


結局、それが一番手っ取り早い周知方法かなと職員室に向かったマリンはすぐに話しをつけてきた。


そして、翌日。

早速先生達はそれぞれのクラスで話してくれたため、周知はされたはずだが、様子見なのか数枚しか入ってなかった。


それも、マリンが予想した通り『もっと行事を増やしてほしい』とかだった。


「‥‥これは慎重な人が多いのか‥‥それとも、現状に満足していて書くことがないだけなのか‥‥どっちかな‥‥?」

『さあ‥‥?』

「まあ、陛下から期間の縛りで日数の提示はされてなかったからまだ様子見してもいいとは思うけど‥‥」

「ええ。一応俺達なりの期間の設定はしておくべきでしょうね。─会長、どうしますか?」

「‥‥シリウスの敬語に違和感が半端ない。」

『‥‥‥』

「会長と呼ぶなら敬語かなと思ったんだが‥‥?」

「今更~?」

「まあ、ちょっとした遊び心?」

「いや、そんな絶妙なところでの遊び心いいから。違和感しかないから、会長呼び以外はいつも通りで。」

「‥‥了解。─で?どうする?」

「ん~‥‥現状が生徒会業務に全く影響ないから、とりあえず一月ぐらいにする?─仮にこれから急激に増える様なことがあれば期間を短くしたりすればいいし。」

「まあ、そうだな。─そうするか。父上もこの期間限定の間の結果次第で常設するか否か決めると仰ってたしな。」

「だね。─みんなはどう?」


生徒会室に集まってる一同に問いかけると、全員賛同してくれた為、期間は一先ず一月とした。


━そして、シリウスとの極秘視察やフレイ兄様の息子アイド君が生まれたあと。


目安箱設置から約1ヶ月程経過した頃。


目安箱の中身の量はというと‥‥


『‥‥‥』


生徒会室に一応ある来客用ソファー席。

そこにあるローテーブルに紙で一山。


ちなみに、中身を改めた結果最も多かった要望はというと‥


『学園行事を増やしてほしい』


これはやっぱり。という感じだ。

続けて


『授業内容の見直しを』


これは具体的に書いてくれてる人がいた。


例えば、魔法科の授業。

下級生は特に的当て9割生徒同士の模擬戦1割ぐらいでやるので、『物足りない』ということ。

要は私達がやってるみたいにしたいということらしい。


ただ、この割合なのも理由はもちろんある。


もう一度言うが、ここは貴族の子息令嬢の方が多い学園。

間違っても事故だろうがなんだろうが、怪我人を出す訳にはいかない。

特に女子。仮に一生消えない傷とか残ったら、卒業後の婚姻に影響する。


それに加えて、もちろん保健の先生は治癒魔法を使える方だが、一人で大勢診るなど不可能。仮に生徒の中にいようと、私程使いこなせてないならいてもさほど変わらない。

なので、模擬戦をして怪我人が続出する様なことになったらそれこそ問題なのである。


だったら治癒魔法を使える人材を増やせばと思うが、意外とそう多くない。


治癒は生命神様の加護がないと使えないからである。

なので、光魔法は使えるけど治癒はできないという人ばかりなのだ。


と、こんな事情があるため、大変心苦しいが、この魔法科の授業内容変更は他の要望と共に先生達や陛下、公爵様には報告として上げるが、採用されることはないと思われる。


まあ、とりあえず。


一月設置してみても特に生徒会業務を圧迫したとかはなかったので、引き続き設置したままでもいいんじゃないかと思う。その旨と投稿内容を纏めたものを提出する。

その結果が陛下や公爵様から出るまでは一旦、目安箱は回収する。


今後も継続して設置するか否かは陛下方次第だ。


◇◇◇


フレイ兄様の息子が生まれたと、リゲル達とようやく嬉しさを共有できたあとのとある日。


学園から帰って、夕食後の席にシャーリーから私宛てだという手紙を渡された。


「「‥‥‥」」


私の横からディアナ母様も手元を見ていたのだが、その差出人に2人して苦笑いを浮かべた。

差出人は‥‥


「アリア‥‥」「アリア様‥‥」


そう。リゲル達のお母様でリコリス公爵夫人であり、ディアナ母様の友人。

手紙の内容を見なくてもなんとなく想像できてしまう。


「と、とりあえず、読むべきですよね‥‥?」

「そ、そうね‥‥」


ということで、中身をディアナ母様と一緒に読んでみると、やはり予想通りで‥‥


『初孫のアイド君に会いたいから連れていって。』


ざっくり要約するとこんな内容だった。


確かに、夏休みに会えるのはリゲルとルビアだけ。公爵夫妻は毎年帝国行きに同行しないので、その時に会うことは叶わないのである。

どうしてもアイド君に会いたいなら、自分達で領地の辺境伯邸に向かうか、少し成長したあとでフレイ兄様夫妻が王都に連れてくるしかない。‥‥本来なら。


そう。『本来なら』だ。


例外が私のゲートである。

ということで、『連れていって。』だ。


「「‥‥‥」」

「母様。」

「ん?」

「連れていって差し上げるべき‥‥ですよね‥‥?」

「‥‥そうね~‥アリア達が知らなくても出産に立ち会わせてあげられなかった負い目も感じるしね‥‥」

「ですね~‥‥─となると、公爵様も‥ですかね?」

「でしょうね‥‥」

「リゲルとルビアは『夏休みに会えるから』ってことで私に頼まなかっただけで、公爵夫妻が行くとなると‥」

「ええ。マリンの予想通りに2人は考えてくれたでしょうけど‥‥便乗すると私も思うわ。私なら便乗するもの。」

「ですよね‥‥いつにしますか?」

「先にフレイ達に聞いてみましょうか。私達が突然帰るのはいつものことで許してくれるだろうけど、お客様が一緒なら話は別だものね。」

「ですね。」


ということで、私はフレイ兄様達への確認を母様に任せることにして、この日は休んだ。


翌朝。


朝食後、私が学園に行くべく立ち上がると、母様も玄関口に向かう私を追いかけながら話しかけてきた。


「マリン。昨日、フレイからすぐに返事が来たわよ。」

「え?─それで、いかがでした?」

「ふふっ。家族全員に確認したけど、誰も反対しなかったそうよ。─私達と同じことを考えたみたい。」

「ふふっ。そうでしたか。─それで、いつに?」

「アリア達がいいなら、今週末でもいいとのことよ。」

「了解です。では、学園でリゲルに伝えますね。」

「ええ。お願いね。」

「はい。では、行って参ります。」

「ふふっ。いってらっしゃい。」


歩きながら話していたため、ちょうど玄関口に着いており、そのままお互いに声を掛け合ったところで私は玄関を通り、既に待機していた馬車に乗った。


学園に着き、教室に向かうと、ちょうど友人達が集まっていた。

ただ、アイリスは私のゲートとか諸々を知らないので、この場では話すことはなく、お互いに挨拶したあとは関係ない雑談をしたりした。


生徒会業務も終わったあと、後輩達は帰っていき、生徒会室には友人一同やリオトとルビアだけ残った。

すると、早速リゲルが確認する様に聞いてきた。


「マリン。昨日、母上から手紙来てなかったか?」

「来てたよ~。─それで、すぐにフレイ兄様達に聞きに行ってきた。」


本当は母様がスマホ擬きで確認してくれたのだが、友人一同にすら話してないので、『私が確認しに向かった』ということにしないとなのだ。


「なんかごめん、マリン。─それで、どうだった?」

「ふふっ。いいよ、これぐらい。─アリア様方が用事がなければ今週末でもいいって。」

「分かった。早速母上に伝えるよ。─母上がマリンに手紙書く時、『日時指定とか私からするべきではないわよね‥‥』とか『‥マリンさんに合わせることになるはずだから、週末よね?』とか呟いて週末に用事があっても空ける様に侍女や執事に言ってたから大丈夫だろ。」

「まあ、そうなるよね。‥現に私のゲート頼りだし。」

『‥‥‥』

「ま、まあ、そういうことだから、公爵家としては今週末でも大丈夫だ。」

「分かった。‥‥って公爵様は?」

「ん?もちろん、一緒に行く気でいるから『週末を空けておいてくれ』と同じく執事に言ってたぞ?」

「確認だけど、リゲルとルビアも来るんだよね?」

「「もちろん(ですわ!)」」

「了解。─じゃあ最終確認ね。公爵一家を今週末うちの領地の屋敷にご案内ってことで、決定でいい?」

「ああ。」「はい!」

「分かった。フレイ兄様達にも伝えとくよ。」

「頼むな。」

「うん。」


そうして話は終わり、屋敷に帰った私は早速母様に伝えた。


「ふふっ。じゃあ、私からフレイ達に知らせておくわね。」

「はい。お願いします。」


◇◇◇


そして、約束の週末━


昼過ぎ頃、公爵一家が我が家に来た。

一先ず屋敷内に案内し、一通り挨拶も終わったあと━


満面の笑顔を浮かべるアリア様に母様が一言。


「アリア。顔緩み過ぎよ。」

「え?」

「初孫が嬉しいのは分かるけど、公爵夫人の名折れを体現するかの如く顔が緩んでるわ。」

『‥‥‥』


さっとアリア様が公爵様を見ると、苦笑い。

続けてリゲルとルビアを見たが‥‥同じく苦笑い。


それで察したらしく、その場の一同に背を向けて深呼吸を始めた。


やがて━


「こ、今度は大丈夫そう?」

『‥‥‥』

「まあ、さっきよりは‥という感じだけど、これならマリアが幻滅することもないでしょ。」

『‥‥‥』


(そこだったんだ‥‥)


私達辺境伯家や公爵家だけなのに、何故『公爵夫人の名折れ』とか言い出したんだろ?と不思議だった。


ただ、リゲルやルビアが苦笑いで終わってる時点で、マリア姉様もアリア様の表情が緩みきってても今更幻滅しないのでは‥‥?とも思う。─言わないけど。


そして、母様に促された私はその場でゲートを開き、既に領地在住の家族が集まっているマリア姉様が休む一室に案内した。

もちろん、扉をノックして許可を得てから開いたのだが‥‥


「!! 母様!」

「マリア!」


マリア姉様の姿を確認した瞬間、アリア様はマリア姉様に駆け寄った。

━挨拶すっ飛ばして。


アリア様がマリア姉様にすごい勢いで労いの言葉を掛けている間に他の一同は両家でしっかり挨拶を交わしていた。


そして、アリア様もマリア姉様と話し続けていたけど、公爵様とマリア姉様に『さすがに』と促されてやっと気付いたらしく、父様達にも挨拶していた。


そうして、やっと公爵一家もアイド君とご対面。


「か、可愛いわ‥‥!!男の子でもやっぱり孫となると可愛いわ!!」


再び緩むアリア様の表情。

これは仕方ないかと思いつつディアナ母様に視線を向けると、呆れというか、諦めというか。

とりあえず文句は言わないことにしたらしい。


そして、もちろんきたこの質問。


「ねぇ、マリア。アイドって名前、由来あるの?」

「え!?」『‥‥‥』


戸惑うマリア姉様と明後日の方を見る辺境伯家一同。

ただ。一応、対策は考えてある。

なので、フレイ兄様の服の袖をくいっと引くと、見上げた私と視線が合い、はっと思い出した様でアリア様に向けて答えた。


「マリンが考えてくれたんです。」

「「「「え?」」」」

「俺とマリアで話して、マリンに頼んでおいたんです。兄様のところのフェリシアもマリンが考えてくれていたので、差別は良くないとアイドという名前を考えてくれていたんですよ。」

「え?いつの間に?」

「それこそ、先月のフェリシアの名付けの由来とかも俺達はその場で聞いていたので、俺達の子供も。と。男女どちらが生まれても大丈夫な様に両方考えてくれていました。」


合ってるのは私が考えたところだけ。

あとは嘘っぱち。

男女両方は考えてない。何せ生まれてから考えたから男の子の名前だけ考えればよかったから。


「あら、そうなの?─マリンさん。アイドって名前の由来はあるの?」

「はい。もちろんです。」


そうして、家族に話したのと同じ内容で話すと━


「アイドクレース‥‥なるほど‥‥」


と呟くアリア様にちょっと付け加える様に続けた。


「ほら、私達兄弟の名前にも宝石の名前があるでしょう?」

「え?‥‥ああ、ヒスイさんね。」

「はい。あと、私とアクア兄様でアクアマリンもです。」

「あら、そういえばそうね。」

「だから、宝石由来の名前もなんか、縁を感じていいかなと思いまして。」

「ふふっ。そうね。─ちゃんと考えてくれたのね。ありがとう、マリンさん。」

「ふふっ。いえいえ。私にとっても甥っ子ですから。」

「それもそうね。」


そうして、和やかなままなんとか公爵家とアイド君の初対面を終えた。


またさほど時間経過がなくてすみません。

次こそは進む。‥‥はず。‥です。

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