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転生できたので自由に生きたい  作者: 霜月満月
第11章 学生最後の年
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304話 それぞれの話

大変長らくお待たせしてしまい、申し訳ありません。

亀投稿は変わらないかと思いますが、地道にちみちみ書いていきたいと思いますので、これからも引き続きお付き合い頂ければと思います。

━そう。終わった。

はずだったのだが‥‥


「おかえりなさい、マリン。」

「た、ただいま戻りました。母様‥‥」


にっこりと笑顔ではある母様。

だが、目が笑ってない。━━めっちゃ怖い。


「マリン。陛下から早馬で連絡は受けてるから、事情は把握してるわ。─けどね、ここまで遅くなるのは令嬢としていかがなものかしら?」

「‥‥ですよね‥‥」

「一応、ラルクにも知らせたからね?元々、マリンが帰ってきたら知らせてくれって頼まれていたから。」

「あ‥‥そう‥なんですね‥‥?」


私が母様の様子を窺う様に答えると、母様はようやく黒い笑顔をやめてくれ、苦笑いになった。


「と、まあ、今のは令嬢としてって話だし、マリンとしても遅くなったのは仕方なかったこと。─それは分かってるから怒りはしないわ。」

「!! 良かった‥‥安心しました‥‥」


一気に力が抜けた。


「マリン。ラルクにはマリンから連絡してあげて。その方が安心するでしょうから。」

「はい。そうします。」


この会話のあと、早速と例の文字送信だけのなんちゃってスマホを母様から受け取り、父様に連絡した。


すると、夕食後。あとは寝るだけの頃。


「マリン。ラルクが直接話を聞きたいって言ってるわよ。」

「‥‥‥」


私はもう寝る気満々だったので、寝間着姿である。

さあ、寝るかとベッドに入ろうとしたら母様が部屋に来てのこの言葉。

だが━


「─って寝る気満々ね。なら明日にしましょうか。ラルクに粗方は報告したのよね?」

「‥‥はい。」

「ふふっ。なら私から『疲れてるみたいだから明日に』って言っておくわ。だから、気にせず寝なさい。」

「ありがとうございます!」


その後、お互いに「おやすみなさい」と言い合ってようやく私は眠りに落ちた。

今度は本当に長い1日がようやく終わった。


翌日。


この日も学園が休みとあって、私は朝食後すぐに母様と共に領地の屋敷へと向かった。

そして、父様に説明してから王都の屋敷に戻った。


昼食後。

私は相変わらず雪奈姉の日記の翻訳をしていたのだが‥‥


「マリン。私、これから大公家に行くけど、マリンも一緒に行く?」

「!! 行きます!」


母様が私の部屋に来て嬉しいお誘いをしてくれた。

大公家といえばヒスイ兄様夫妻の家。そして、フェリシアちゃん。

産まれたばかりの姪っ子にまた会える。と喜んで即答した。


すぐに準備をして母様とちゃんと馬車で大公家の屋敷に向かうと‥‥


「ふふっ。やっぱりマリンちゃんも来てくれたのね。」


出迎えてくれたヒスイ兄様やリリ姉様と挨拶を交わしたあとすぐ、リリ姉様はくすりと笑ってそう言った。

なので私も笑顔で答えた。


「それはもちろんです!フェリシアちゃんに会いたかったですし!」

「昨日はマリン、大変だったから余計によね。」

「です。」

「「え?」」

「あとでお話しますよ。それより─」

「ええ。フェリシア、抱っこしてあげて。」

「はい!喜んで!」


そうしてリリ姉様からフェリシアちゃんをそっと受け取ったのだが‥‥


「「「‥‥‥」」」


一切ぐずらないフェリシアちゃん。

ヒスイ兄様、リリ姉様、母様は私とフェリシアちゃんを交互に見て固まっていた。

私はこの日、初めてフェリシアちゃんを抱っこした筈なのに何故だ。ということかなと想像できたので━


「前世で友人の子供を抱っこさせてもらったことがあるだけですよ?」

「そ、そうか‥‥」「「そ、そう‥‥」」


そんな一幕のあと。


応接室に集まった私達。

昨日の私とシリウスの極秘視察の件を『くれぐれも内密に』と伝えてから話すと━


「‥‥私、当時相当危ない状況だったのね‥‥マリンちゃんが来てくれてなかったら、今頃他国にいるか‥‥もしかしたら生きてすらいなかったかもしれないのね‥‥」

「だな‥‥」


私とシリウスが昨日、最初に閉じ込められた建物があった場所。

それは数年前にリリ姉様やアイリス達が誘拐された時に連れて来られたのと同じ場所だった。

そして、私が助けに行かなかったらどうやって王都を出されることになっていたか。


当時の当事者の一人として知っておきたいかなと思って話した。


「でも今回のことで、当時や昨日の手口は使えない様になるかと。」

「そうだな。陛下やシリウスがその穴を放置する筈がないからな。」

「ですね。」


そして、その直後リリ姉様が呟いた。


「シリウス、ちゃんと王太子らしく民のことを考える様になったのね‥‥」

「姉としてどうだ?」

「もちろん、嬉しいですよ?マリンちゃんに手助けしてもらうために、しっかり手順を踏んでお義父様やお義母様に許可を得に辺境伯家にお邪魔して。─ちゃんと礼儀を尽くす様になってくれたんだと感慨深いですし。」

「ふふっ。そうね。─殿下は王太子らしくなったなと私達も感じたわ。」

「あ。だから父様も母様もシリウスを殿下呼びで敬語で話してたんですか?」

「そうよ。─礼儀を尽くしてくれるなら、こちらも返すべきでしょ?」

「そうですね。」


そんな話をして、フェリシアちゃんの可愛さに癒されて。

昨日とは一転して穏やかな休日を過ごせた。


翌日。


学園の教室に着くと━


友人一同勢揃いで。『おはよう』とお互いに挨拶を交わしたあと、リゲルが口を開いた。


「マリン。聞いたぞ?一昨日、また人助けしたらしいな?」


シリウスとのスラム視察は極秘扱いのため、そこまでは口にしなかったが‥‥

私は苦笑いで答えた。


「うん、まあ、成り行きでね。」


すると、レグルスも会話に入ってきた。


「成り行きでも被害者の中に我が国の民もいたと聞いてる。ありがとな、マリン。─(シリウスも)。」

「ふふっ。どういたしまして。」「(ああ。)」

「多分‥いや、確実に夏休みに帝国に行ったら父上に褒美を聞かれるだろうから、考えておいてくれ。」

「え?‥‥レグルス。私、昔シリウス達を助けた時から国王陛下に同じく褒美は何がいいかを何度か聞かれたけど、全く思いつかなくて父様に丸投げしたんだけど‥‥」

「え?‥‥じゃあ、また丸投げするのか?」

「しようかな~って思ってる。」

『‥‥‥』


一同が無言になったところで先生が来て授業開始となった。


放課後。─ちなみに生徒会業務も終了後。

私達がそれぞれ帰ろうと馬車停めに向かうと━


「王太子殿下、リオト殿下。並びにリゲル様、ルビア様。皇太子殿下やマリン様を含めた皆様。陛下より皆様にお話があるとのことでご案内に参りました。このまま皆様は屋敷ではなく、王城へとお越し頂きたく存じます。」

『‥‥‥』

「確認だが、メリア。父上の用件は一昨日の件か?」

「はい。陛下からはその様に伺っております。」

「なるほど。─父上はマリンやレグルス、ベネトさんには確実に来てほしいところだろうが‥‥リゲル、ルビア、リジアも気になってるよな?」

「「もちろん。」」「もちろんですわ!」

「じゃあ、やっぱり全員か。─このまま皆来てくれるか?」


私を含めた全員が頷くと、陛下に派遣されてきたメリアさんはホッとした様子を見せたあと、シリウスとリオトが乗る馬車の護衛に加わった。

そして、レグルスを迎えに来ていたベネトさんはもちろん、レグルスと一緒の馬車に乗り、私達もそれぞれ自分の家の馬車に乗り込んで城へと向かった。


━そして、集まったのはいつもの一室。


今回は国王夫妻だけが待っていた。

内容が内容だけに、事前に今回の件を知っている面子だけとしたのだろう。


それぞれ挨拶を交わしたあと、全員がソファーに座ったところで陛下が口を開いた。


「まずは皇太子とベネト。貴国の民も被害者の中にいたことを改めて知らせておく。─身元が判明した者から順次母国へと騎士や魔法師団の者達で送り届けているから、まだ残っている可能性もあるがな。」

「「はい。」」

「偶然とはいえ、マリンやシリウスが救い出してくれたのです。─民が無事ならばそれで構いませんし、犯人はセレナイト連邦国の者なのでしょう?この国も今回は被害者です。」

「そう言ってくれると助かる。」


やはり、リゲルもだが、レグルスやベネトさんも事前に知らされていたらしい。


「ある程度は昨日、文書にて報告してくださったでしょう?─今日は改めてマリンやシリウスからも話が聞けると思って良かったでしょうか?」

「ああ。そのつもりで全員に来てもらった。─リゲル達は今回のことに直接は関係ないが、まさか学園でシリウスやマリンが話すはずもないだろう。それでも気になってるだろうとな。」

「「はい。」」「もちろんですわ。」


━ということで、私とシリウスはどういう経緯で誘拐後、奴隷にされかけた人達を救出することになったのかを友人一同に話した。


『‥‥‥』


一同無言ということは私達が話した内容を脳内で整理しているのだろう。


やがて。


「‥‥シリウス。まずは一言だけ。」

「お、おう、なんだ?リジア。」

「マリンを連れて行って正解だったわね。大いにマリンに感謝しなさいよ?」

『‥‥‥』「‥‥だな。」


内心は違うかもしれないが、その場の全員が苦笑いを浮かべた。

そして、その場の空気を一切気にせずに話を変えたのはやっぱりマリンだった。


「そういえば、陛下。」

「ん?なんだ?」

「壁の穴、塞いだんですか?」

「いや、まだだ。─今回のことがあって、今騎士達に一斉点検してもらっている。我々が気付いてないだけで他にもあるかもしれないからな。」

「なるほど。それもそうですね。─あと、陛下。私、昨日大公家にお邪魔してきまして。数年前の誘拐事件の被害者の一人として知っておきたいかなと思って、今回のことをリリ姉様やヒスイ兄様にも『くれぐれも内密に』と伝えた上で話してしまったのですが‥‥」

「む?─まあ、リリやヒスイなら構わんだろ。ディアナにもかいつまんで知らせてあるし、マリンからラルクにも話したんだろ?」

「はい。実際に視察に行ったら報告する様に言われてましたので、父様にも昨日お話しました。」


実際に父様から『報告する様に』と言われていたのは母様だが、なんちゃってスマホの存在は言えないし、昨日直接父様に報告しに行ったのは事実なので、嘘はついてない。


「全員口が硬いと信じられる者達だ。だから、構わんよ。

─シリウスもだろ?」

「はい。」


それを聞いて私はほっとしたのだが‥‥


「では、陛下。ここで聞いた内容は父上には話さない方がいいでしょうか?」

「ああ。エドならばとは思うが、そこまで詳細は告げずともいいだろう。」

「‥‥分かりました。─ルビアもいいな?父上にも母上にもシリウスとマリンから聞いた話はしなくていい。」

「分かりましたわ。兄様。」

「よし。」


(おお‥‥リゲルが『お兄ちゃん』らしいことを‥‥)


そう思っていたことに目敏く気付いたらしい。


「マリン?俺は間違いなく、ルビアの実の兄だからな?」

「っ!‥し、知ってるよ?もちろん。」

「その反応‥‥やっぱり失礼なこと考えてた様だな‥‥?」


私はそれに答えず、無言でリゲルから視線を反らした。


そして。

陛下もこの微妙な空気を気にすることなく、本題に入った。


「マリン。今回は極秘扱いの視察でのことだ。だが、マリンとシリウスの功績であることは事実。大々的に公表はし辛いが、褒美は渡したいと思う。─被害者の中には我が国の民もいたからな。」

「陛下?私が褒美は何がいいとか答えると思いますか?」

『‥‥‥』


すると、陛下はガクッと項垂れてしまった。


「‥‥まだ物欲がないのか‥‥マリンは‥‥」

「はい。」


しっかり頷いて答えて差し上げた。

━まあ、陛下は項垂れてるままだから見てなかったけど。


「だが、ラルクはこの場にいないぞ?」

「はい。ですから、夏休み前に父様が王都に来た時に話してください。」

『‥‥‥』

「やっぱり丸投げするのか‥‥いっそ、マリンに女性初の爵位を‥」

「絶っ対に嫌ですし、いりません!」


今のは陛下の言葉を遮るとして不敬に値するのだが、私はそんなの全く怖くないので、容赦なく食い気味に拒否した。

爵位なんぞもらっても面倒だし、正直私にとっては足枷でしかない。何より『女性初の』とか無駄に目立つことなんぞしたくない。


それは陛下も感じていたのか、ようやく頭を上げてくださったが、苦笑いを浮かべていた。


「だよな‥‥まあ、期待はしてなかったがな。言ってみただけだ。」

「なら良かったです!」

『‥‥‥』


陛下は一つため息を吐いたあと━


「ラルクが王都に正式に来た時に話すとするか‥‥」

「はい。よろしくお願いします!」

「ああ。─ちなみにシリウス。分かってるだろうが、お前には褒美はないからな?」

「ええ。分かってますよ、父上。─今回のことは長年スラムの改善を望みながら結果、放置してしまっていただけではなく、王都を囲む城壁の点検を怠っていた我々王家の怠慢の結果です。─極秘とはいえ視察に行ってなかったらと思うと背筋が凍る思いです。─王太子として、同じことが起きない様、これからも精進して参ります。」

『!!!』


全員が一瞬驚きを現したが、国王夫妻だけは嬉しそうに顔を綻ばせた。


「‥‥シリウスは本当に良い方に変わってくれましたね、あなた。」

「ああ。そうだな。」


そう呟きながら。


本当なら本編の時間を進めようかと思っていたのですが、作者的に入れたくなったので今回の話を入れ込みました。

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