28話 入学式とお客様?
そして入学式当日。
改めて、また制服を着る日が来ようとはね‥‥。
前世では既に社会人だったマリンは感慨深い思いをしながら前世も含めると久しぶりの制服に袖を通していた。
そして着替え終わったのを見計らったかのように扉がノックされ、私の返事を聞いてからシャーリーが部屋へ入ってきた。
「失礼します。マリン様。‥‥‥良くお似合いです!マリン様。」
「ありがとう。シャーリー。シャーリーが来てくれたってことは‥‥」
「はい。馬車のご用意ができましたのでお呼びに参りました。もうご準備は終わりましたか?」
「うん。大丈夫。もう出れるよ。行こ、シャーリー。」
「はい。」
玄関に行くと母様と父様がいて。
「あれ?父様と母様は一緒に行くんですよね?」
「ああ。‥‥クリスとアクアの2人なら先に行ったぞ。」
「え?そうなのですか?」
「ああ。そろそろ行くぞ。」
「? はい。」
みんな一緒でいいのでは?と思っていた私は頭に?を浮かべつつ両親と共に馬車に乗り、学園へと向かった。
学園へ到着すると当然のように入学式の会場である講堂の来賓席へ移動する両親と別れて私は新入生入り口へと向かった。
そこには既にリジアがいた為、一緒に案内された会場内の席へ着いた。
「リジア。改めて今日からよろしくね。」
「うん。こちらこそよろしくね。マリン。それで、マリン。新入生代表挨拶大丈夫そう?」
「うっ。一応‥‥覚悟はしてきた‥‥つもり。」
実際前世を含めて首席挨拶をしたことがなく、大勢の前で話すこと自体が苦手な為、覚悟が必要だった。
最終的に「なるようになれ!」と半ば無理矢理の覚悟だったが。
「まあ。マリンなら大丈夫じゃない?頑張ってね。」
「その根拠のない大丈夫はどこからくるのよ‥‥頑張るけど。」
2人が話している間も続々と新入生が席に着いていく。
すると、中には当然例のお披露目会にいた貴族の子息達もいて
「なあ、あの青い髪の子って例の王子の被害者の子じゃないか?」
「ああ。青い髪なんて同い年にはあの子だけだろうからな。確か辺境伯家の令嬢だったはずだ。」
「へ~。」
と背後から聞こえてきた声に内心苦笑いするマリンだった。
王子の被害者って‥‥。事実だけど。まあそういう認識ならまだ良かったかな。あれを見て仲がいいと思う人の方が少ないとは思ってたけどね。
そしてそんな声を聞きつつリジアと話して緊張を紛らわせていると入学式が始まった。壇上に上がった学園長の挨拶があり、次に生徒会一同も壇上に並んだ。
(え!?何で‥‥。)
驚いて声を出しそうになるのを堪える。
紹介された生徒会に姉様と兄様がいたからだが、問題は紹介された役職だ。兄様は3年生のため役員ではない。しかし姉様は「生徒会長」として紹介されていた。ちなみに他の役員にはリリ様とマリア様もいた。
あれ?合格発表の時も生徒会の「手伝い」って言ってたよね?兄様は手伝いだろうけど姉様は手伝いどころかトップじゃん!指示を出す側じゃん。
‥‥これは私を驚かそうとしたかな。父様達まで巻き込んで。
とか考えていると
「続きまして、新入生代表1年生首席。マリン・フォン・クローバー」
司会に呼ばれ、壇上に上がり会場を見渡すと両親が目に入り、続いてさっきまで自分が座っていた辺りを見るとリジアがにっこり笑ってるのが見えた。一呼吸して落ち着くと。
「はじめまして、本年一年生主席となりましたマリン・フォン・クローバーです。ここにいる生徒たちは多くの受験者から試験を勝ち残って入学した方々になります。私は貴族家の者ですが、教育には王族も貴族も平民もありません。それはこの王立学園の方針でもあります。これからの学園生活では家柄に囚われずに友人ができればなと思っております。そして、私を含め新入生はわからないことばかりだと思います。先生、先輩方、これから色々とお世話になると思いますのでよろしくお願いします。新入生代表、マリン・フォン・クローバー。」
挨拶が終わり、一礼すると盛大な拍手となった。
私が役目を終えて戻るとリジアが笑顔で迎えてくれた。
「マリン。お疲れ様。良かったよ。緊張解けてたの?」
「ありがとう。リジア。実はね、壇上に上がった時が一番緊張してた。でもね、リジアの笑顔見て一呼吸置いたら不思議と落ち着けたんだ。」
「そうなの?私、役に立ってたんだね。」
「本当、リジアが居てくれて良かったよ。」
そして入学式が終わったあと、教室に向かうため講堂を後にした。
そしてリジアとSクラスの教室に入り指定されていた自分達の席に着いた。リジアと隣同士だったのでそのまま雑談をしているとチャイムが鳴り教師が入ってきた。その教師は魔法試験の教官をしていた人物だった。
「皆さん。席に着いて下さい。今日からこのクラスの担任になりました、レイヤ・フォン・イザールです。魔法試験を受けた方以外は初めましてですね。では入学式が終わったばかりですし、皆さんも自己紹介していきましょうか。じゃあまずは首席のマリンさんからお願いします。」
自分の席でそのまま立ちクラスメイトを見回してから。
「皆さん初めまして。マリン・フォン・クローバーです。一応貴族家の者ではありますが「マリン」と気軽に呼んでください。よろしくお願いします。」
一礼して座ると次のリジアが立って
「フリージア・フォン・アドニスです。一応貴族家の者であり首席のマリンとはいとこにあたりますが、私も気軽に愛称の「リジア」と呼んでください。よろしくお願いします。」
同じく一礼して座り、残りのクラスメイトも自己紹介が終わると
「全員自己紹介が終わりましたね。今日はここまでです。明日からは選択授業を決めたりするのでよく確認してください。」
それで今日は解散になったが、先生が教室を出る前に
「あ。マリンさん、フリージアさんはこの後、私に着いてきてください。」
「「え?」」
「2人にお話があるという方がいらしてます。」
「「? 分かりました。」」
リジアと2人で頭に?を浮かべていると、教室を出ようとしたクラスメイトから声が掛かった。
「えっと。マリンさん。お客様です。」
「え?私にお客様ですか?」
「はい。‥‥シリウス王子達です。」
「‥‥‥‥。」
何しに来たんだあの王子!
せっかく別々のクラスになったのに~!
‥‥みんな困るか‥‥。
仕方ない‥‥さっさと追い払わないとな。
渋々1つしかない教室の扉へ向かうと
「「マリン!」」
「良かった。まだ居たな。話しがあるん‥‥」
「【消音】。」
王子達が私の姿を確認するなり呼び捨てにしてきたので宣言通り声を出せなくした。
「「っ!」」
「シリウス王子、リゲル様。私、試験の日に申し上げましたよね?2人には呼び捨てにして欲しくないと。私に近付いて来ないでと。あと、次に同じように私の言葉を無視するなら問答無用で声を出せなくしますとも申し上げましたよね?もうお忘れですか?」
「「‥‥‥」」
私が、目が笑ってない笑顔を2人に向けながら言うと、2人は後退った。
「まさか、お2人は何故私が近付いてこないでと申し上げているかお分かりではないのですか?」
「「‥‥」」
首を横に降った。分かってないんかい!
「はぁ‥‥。教室の扉は1つなのです。こんな風に来られたら私を含め全員迷惑です。なのでハッキリ私がお2人をどう見てるのか申し上げますわ。」
「「っ!」」
おいおい‥‥何故ここでそんな期待した顔ができるのかな‥‥?この2人おめでたい頭してるのかな。まあちょうどいいから言ってあげよう。自分達がどれ程私に嫌われてるかを。
「では分かりやすいように私の好きな度合いを手を使って表現しますね。まず好きでも嫌いでもない普通がこれぐらい(お腹辺り)とします。好きな人を表すのが上だとして、まずリゲル様は大体脛辺りです。そして、シリウス王子は床ぐらいですね。」
「「‥‥」」
あ。固まった。驚いてるねぇ。そんなに衝撃かな?
特に王子、むしろ嫌われることしかしてないのにあの自信はどこから来てたのかな?
「お分かり頂けましたか?言葉を選ばすに申し上げるなら私はお2人が嫌いです。だから近付かないで欲しいと申し上げていたのです。今まではハッキリ申し上げますと、傷付くかと思い、遠回しに伝えていたつもりだったのです‥‥。ですが、今日のように教室の前に待ち伏せされると迷惑です。お2人は王子に公爵家の嫡男様です。学園では家柄は関係ありませんが、文句の言い辛さはあるのです。お2人はご自身の立場と影響を考えて行動して頂きたいです。」
「「‥‥‥」」
う~ん。衝撃が抜けてないか?
「お2人共。聞いてらっしゃいますか?」
コクン。
頷いた。聞いてはいたな。
「では私の申し上げたことも全てご理解頂けましたか?」
コクン。
ん?何か言おうとしてる?どうしようかな。
「念のために確認しますが、もう私の許可なく呼び捨てしませんか?」
コクン。
う~ん。どうせ解除しないとだし‥‥。
「はぁ‥‥‥。【消音解除】」
「っ!‥‥マリン嬢すまなかった‥‥。」
「俺も。マリン嬢に見直してもらえるまで近付かないと今度こそ約束しよう。」
「本当ですか?また同じ事がありましたら次は麻痺して頂きますよ?今回の様に問答無用で。」
「「分かった。」」
「あと、シリウス王子、リゲル様。今、他にもするべき事がありますよね?」
「っ‥‥Sクラスにいるみんな。迷惑を掛けた。すまなかった。」
「俺も。すまなかった。」
おぉ!2人が謝ったうえに頭を下げた。
奇跡を見た気分だ~!
「い、いえ。そんな!頭を上げて下さい。殿下!」
とさすがにクラスメイトが慌てて言った。
「お2人共、気づいて頂けて良かったです。ところでお2人は私に話は何だったのですか?」
「いや。やめておく。大人しく帰るよ。‥‥行こう。リゲル。」
「ああ。」
おぉ!大人しく帰ってくれたよ!もう少し早くこうすれば良かったかな‥‥。
「みなさん。お待たせしました。王子達はお帰りになられましたのでもう大丈夫ですよ。」
振り返ってクラスメイトに告げると、みんなも驚いた顔をしていた。なんとレイヤ先生も。
『すごい‥‥。』
ハモった。クラスのみんなの声が見事に。
「え?」
「マリンさん‥‥凄いですね。王子達に正面から堂々と意見していて‥‥。」
「ああ。凄い。」
「でも‥‥あんな風に王子達に意見して大丈夫なのですか?」
「はい。大丈夫ですよ。リリアーナ王女殿下やマリア様、陛下や王妃様も私の味方になって下さってますので。」
『え!?』
クラスメイトからの心配に正直に答えるとまたハモった。
「え!?国王陛下に王妃様?王女殿下にマリア様?い、いつお会いに!?」
「リリアーナ王女殿下とマリア様。そしてシリウス王子とリゲル様をお助けした時です。」
『あ~!』
「なるほど‥‥察するに初対面からいきなりマリンさんを呼び捨てにされたとかですね?」
「はい。正解です‥‥。」
「あの。クラスメイト同士話すのはいいことですが、続きは明日にしてもらえますか?マリンさん達を待ってる方がいますので。」
「あ。申し訳ありません。先生‥‥では皆さんまた明日。」
『また明日。』
「大変お待たせしてすみません。先生。リジアも行こ。」
そして先生に連れられ、着いた先は学園長室だった。
「レイヤです。マリンさん、フリージアさんをお連れしました。」
「どうぞ。」
マジか‥‥。前世でも縁のない場所だったのに‥‥あ、でも入ったことはあるか。年末の大掃除とかに入っただけじゃなかったかな?でも入学早々に来る羽目になるとは‥‥。
と内心で思いながら先生に続いて入り、室内を見回すと。
「え?父様、母様?兄様と姉様も?‥‥リリ様にマリア様?
‥‥‥えっ!」
他にはこの部屋の主である学園長と何故か公爵様がいた。