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転生できたので自由に生きたい  作者: 霜月満月
第11章 学生最後の年
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301話 あぁ‥‥間違えたぁ‥‥

大変お待たせしました。

マリン劇場開幕です。

サブタイトルは読んで頂ければお分かり頂けると思います。

王家一家と話した3日後の週末。

私は朝食後、午前中から登城していた。


そして、場所は騎士団の訓練場。

集まっているのは私以外の私服警護要員の騎士と魔法師団の数名。

それと、私とシリウス。


「さて、皆様。これからシリウスの無茶振りに付き合うことになりますが、事前に気をつけて頂きたいことを王家から聞いてますか?」

『は!』

「伺っております。天使殿。」

「‥‥あの、天使もやめてくださいね?」

「あ。‥‥お呼びすべきは偽名でしたね。」

「ええ。‥でも平民街に着いてからでいいですよ。」

「はい。」


そして、改めて護衛達を見回すと。


「皆様。事前にお伝えした通り、基本的に私達に張り付いての護衛はしないでください。むしろ私達の正体に気付かれる要因になりかねませんので。」

「はい。視認できる程度に離れて護衛させて頂きます。我々は天使殿の武勇も、殿下の恩人だということも十分に存じ上げております。─我々にとって一番の安心材料は天使殿がご同行くださることですから。作戦の邪魔は致しません。」

「ただし、我々にとってはお2人の安全が最優先事項です。いざという時は動きますよ。」

「はい。それで構いませんよ。」


そこで、隣に立つシリウスに向き直ると。


「さて、シリウス。」

「ああ。」


先に渡しておいたペンダント型の魔道具の起動を促すと、すぐに起動した。私も同じく起動すると、シリウスも含めて髪と瞳の色が変わった。


━もちろん、ペンダントはマリンが幻影を付与した物で、ペンダント型なのは服の中に隠せる様にだ。━


それをお互いに確認する。


「シリウス。髪は分かるけど、瞳の色は?変わってる?」

「ああ。しっかり変わってる。‥俺はどうだ?」

「うん。ちゃんと変わってるよ。」


青い髪と琥珀の瞳のマリンは髪も瞳も茶色に。

銀髪と青い瞳のシリウスは焦げ茶色の髪と薄紫の瞳に。


「‥‥なんか不思議な感じ‥‥」

「だな‥‥」


そうボソッと呟いたあと、2人は再び騎士と魔法師団の護衛達に向き直った。


「変装後はこんな感じです。スラムに入る少し前から演技を始めますので‥‥」


とここで一旦区切ったマリンに視線が集まる。

それを感じた上で念押しの様に告げた。


「くれぐれも。‥くれぐれも。‥私とシリウスが両想いになったとか勘違いしないでくださいね?」

『‥‥‥』


一同が無言になる中、シリウスが仕方なく口を開いた。


「マリン。‥‥全員が分かっていることを強調しないでくれるか‥‥?こうして言ってる俺が一番虚しいっていうか、悲しくなるから‥‥」

「あ。‥‥ごめん。」

「いや‥‥」


なんとも言えない空気が漂ってしまったところで、マリンが無理やり本題に戻した。


「えっと‥‥と、とりあえず。先に出る方々はこの姿を覚えておいてくださいね。」

『は!』


そう。

この一連の流れは護衛を分けて配置するためである。


先にスラムの入り口や中に程よく待機してもらい、シリウスとマリンがスラムに到着した段階で距離を空けたまま護衛につくためだ。

もちろん、スラムに向かう間は別の護衛がつく。


そして、服装や髪と瞳の色も変えたシリウスとマリンを正確に把握していないと護衛なんぞできないからこうして先に見せたのである。


「それと、護衛の皆様全員に先に申し上げます。平民街からスラムに入ることになりますので、私達はわざと人混みに紛れ込みます。見失わない様に頑張ってくださいね。」

『‥‥‥』


「‥‥わざと人混みに紛れ込むなんて皆さんからすれば面倒でしょうが、ある意味シリウスのためですからね?」

「え?」

「‥‥な、ん、で、シリウスが『え?』とか言ってるのかしら~?」

「いや、純粋になんでかな‥と。」


仕方ないので呆れ混じりながらも教えてあげることにした。


「髪や瞳の色を変えようと、その無駄に綺麗な顔を人混みに紛れさせるためよ。」

「は?‥‥それはマリンの方だろ?」

「は?なに言ってるの?‥‥ってもういいや。切りがない。

‥‥とりあえず、私達全員の顔をなるべく覚えられない様に人混みに紛れ込む様にします。」

『りょ、了解しました‥‥』


そうして、事前の打ち合わせを終えたあと、先回りする騎士達が出発していった。

そこで、一旦シリウスとマリンは魔道具を解除して髪と瞳の色を元の色彩に戻した。


「さて、シリウス。私達も準備して行くよ。」

「ああ。」


まだ2人共いつも通りの私服なので、これから着替える。


そして。


私達2人が簡素な服に着替えたところで出発です。


「では、父上、母上、リオト。行って参ります。」

「ああ。気をつけてな。」

「無事帰って来るのよ?」

「頑張ってください!兄上。」


王族親子の様子を見てくすりと笑っていると。


「マリン。シリウスを頼むな。もちろん、マリンも無事帰って来るんだぞ?」

「はい。お任せください。」


そうして簡単に挨拶したあと、これまた簡素な馬車に私達は乗り込んだ。

その後、ゆっくり馬車は出発し、まずは平民街を目指す。


「シリウス。次に馬車を降りた瞬間から演技開始ね。私のこと、マリンって呼ばないでよ?」

「ああ。だが、仮名がリンって安易過ぎないか?」

「なんで?むしろ呼びやすいでしょ?」

「‥‥数回に一回はマリンって呼びそうな気がする‥‥」

「それは無視するから。」

「お、おう。‥‥俺のシリルもだな。マリンは最初を除いただけじゃないか。」

「まあそうだけどね。‥‥あ。なんならしー君って呼んであげようか?」

「!!」


冗談混じりに言ってみたら驚かれた。


「な、なに?」

「いや、なんか可愛い響きだな‥‥って。」

「‥‥‥反応が面白かったから、今日だけちょいちょい呼んであげるよ。」

「面白がらないでくれるか‥‥?」

「ちょっとした遊び心を持ちつつじゃないと、シリウスが落ち着かないでしょ?こうしてこっそり視察するなんて初めてだろうし。」

「ああ。まあ、確かに初めてなんだが‥‥」

「ん?」

「マリンは落ち着いてるな。」

「それはまあ、なにが起ころうと対処できる自負があるからね。」

「マリンはそうだよな‥‥」

「シリウス。今日はシリウスのためにみんな協力してくれてるんだからね?本来の目的、忘れないでよ?」

「ああ。分かってる。」

「ならよし。」


そうして話しつつ、魔道具も起動させて髪と瞳の色を変えたところで平民街の入り口付近に着いたらしく、扉が開けられて2人共出ると。


「さて、騎士や魔法師団の皆様。ここからは離れて護衛をお願いしますね。」

『はい。』


そして、平民街に入り、まずはお昼を食べに店に入った。


「さて、リン。なに食べる?」

「ん~ちょっと考えさせて。」

「ああ。」


私達は普通に昼食を食べつつ、平民街の空気に慣れることから。ということで、昼前に城を出たのである。

私にはそんなこと必要ないが、これもシリウスのためだ。


「シリル。いい経験でしょ?」

「ああ。リンが一緒なら大抵のことは許してもらえる。ありがたい限りだ。」

「ふふっ。」


そして昼食を食べ終え、お金をシリウスが払ってくれたところで店を出た私達。


「さて、シリル。散歩しつつ行こうか?」

「ああ。」


そうして、シリウスと2人でお昼時の街を歩き始めた。

のだが‥‥


「人多いね‥‥」

「だな‥‥」

「でも、こうして行き交う人達のために頑張るんだからね?シリル。」

「分かってるよ。」

「ふふっ。‥ならよし。」


話しながら歩いていると、やっぱり人混みに流されそうになるもので‥‥


「リン。」


私を呼びつつ手をとられたので見上げると、面白いぐらいにシリウスの顔が真っ赤になっていた。


「嫌かもしれないが、離れるよりいいだろ?」


(なるほど。手を繋いで歩くと。)


「ふふっ。‥嫌じゃないから、繋いでていいよ。」

「‥‥‥‥そうか。」


ぼそっと返したシリウスは耳まで赤かった。


その後は無言で歩き続け、スラムの手前まで来たところで人混みの波から逃れることができた。


「はぁ‥‥さすが王都‥‥人の多さが凄いね‥‥」

「ああ‥‥姉上を助けてくれた時は‥‥?」

「ん?‥あの時は歩いてる場合じゃないから、一気に空から行ったよ?」

「‥‥さすが‥‥」

「さて、シリル。ここからが本番だよ。」

「ああ。分かってる。」

「もう向かって大丈夫そう?」

「ああ。」

「ん。じゃあ、行くよ。」


そして、私達はどうせならと手を繋いだままスラムの中に入っていった。


(皆様。私の演技開始です。『マリンらしくない』は重々承知の上なので、誤解なき様に。)


チラッと先行していた護衛の方々それぞれに視線だけ向けて念を送る様にそう思いつつだ。


「し、しー君。な、なに?ここ。‥本当にここ通るの?」

「あ、ああ。大丈夫だぞ?近道だって父さんが言ってたからな。」

「ほんとに~?」


(なに動揺してんのよ!?)

(仕方ないだろ!?)

※口には出してません。目線での会話です。


そうして、私は手を繋いだままどころか、シリウスの腕に両手を絡ませて掴まる様にして歩き続けた。

2人共、バレない程度に視線を動かしてスラムの様子を観察しつつだ。


「えっと‥リン?嬉しいけど、歩き辛いなと思うんだが‥」

「しー君は私が怖がってるのにそんなこと言うの?」

「うっ‥‥」

「‥‥手、離さないでいてくれる?」

「!! もちろん。」

「‥‥分かった‥‥頑張る‥‥」


そう言ってシリウスの腕に絡めていた手を離し、普通に手を繋いで並んで歩き始めたのだが‥‥


(はっっず!!なにこれ、自分でやっておきながら恥ずかし過ぎるんだけど!!)


と内心悶えつつ、表面上は演技を続けた。

私にとってある意味拷問である。キャラ設定を完全に間違えた。


そうしてしばらく歩き続け‥‥


「‥‥あれ?」

「どうしたの?」

「‥‥‥ごめん、リン。迷ったっぽい。」

「は!?」


もちろんわざとです。


「えっと‥‥どこで間違えたんだ‥‥?」


と周囲の景色を見ながら考える演技をするシリウス。

私もシリウスも地図は頭に入ってるので、問題はない。

ただし、スラムの地図は細かな路地が載ってないものしかなかったので、路地に入らなければ問題ないということなのだが。


「ね~シリル。早く行かないと、シリルのおじいちゃん待ってるよ?」

「分かってる。‥‥思い出すからちょっと待ってくれ。」

「はぁい‥‥」


(よし。これで存分に周囲を観察できる。)


片方が周囲の景色を見ながら悩み、片方もその間暇なので周囲を警戒しつつ見る。

これで2人共キョロキョロしてもおかしくない状況にできた。

なので。


「そこの2人。‥見ない顔だが、そこでなにしてる?」


サブタイトルは本編でも書いたマリンの心の声です。


ちなみに、このマリンの演技辺りですが、作者は本気で迷いました。

このまま投稿していいものか‥‥?と。

最終的にこれはこれで面白いかなとそのままいくことにしました。

そして、続きます。(笑)

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