表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生できたので自由に生きたい  作者: 霜月満月
第10章 学園行事
267/289

291話 卒業式前の来訪者

お待たせしました!

そして卒業式の2週間前。


5年生達は修学旅行(卒業旅行?)から帰ってきた。

その日、私達在校生は普通に授業はあったので、学園にいたし、5年生達が帰ってきたのも学園。

放課後ということもあり、生徒会室に行く前に私達や生徒会の在校生で出迎えたのだが‥‥


「マリン。来年、マリン達が行く時は教国以外に行くことを大いに進める。」


ベネトさんは馬車を降り、私を見つけた途端真っ直ぐこちらにきて私の両肩をガッと掴んでこう言ったのである。


『‥‥‥』


その場の全員、誰も言葉を発しなかった。

そこに。


「いや、ベネト。教皇陛下からマリン嬢は特に、是非ともって伝えてくれと言われたじゃないか。」

「え‥‥?く、クルト先輩‥‥?私には是非ともとか言われたんですか?」

「まあな‥‥」

「‥‥ベネトさん、クルト先輩。や、やっぱり教国から盛大な歓迎を‥‥?」


2人共苦笑い。


‥‥いや、他の先輩方も苦笑い。


「もしかして教国以外も‥‥?」

『はい‥‥』


先輩方の苦笑い混じりの返事に在校生一同も無言になる。


「た、楽しむことは‥‥?」

「一応、できた。‥‥かな。」


ベネトさんに同意する様に頷く先輩方。


「‥‥い、一応でも楽しめたなら良かったです。‥‥では、改めて。‥‥先輩方、おかえりなさい。」

「おう!ただいま。」


ベネトさんが軽く答えたあと、他の先輩方も今度は笑顔で答えてくれた。

その後、ベネトさんを始めとした元生徒会の人達以外はそれぞれ帰宅していった。


そして場所は変わって生徒会室。

私が会長席で書類を捌いている中、ベネトさん達はソファーに座って寛ぎながら話し始めた。


「マリン。お前の影響力半端ねぇぞ。」

「ど、どんな風に?」

「まず、街を歩くにしても制服でこの学園の生徒って気付かれてな、「天使様と同じ学園の方ですか!?」とか「天使様は一緒ではないのですか!?」とか聞かれるんだよ。」

『‥‥‥』

「最初はとりあえず同じ学園だが、一個下だから一緒にはいないって真面目に答えてたんだよ。」

「でも、少し歩くとまた似たような質問が来てな。俺達やベネトで代わる代わる答える羽目になっていって、途中でベネトが限界を迎えて無視する様になった。」

『‥‥‥』

「で、泊まった宿に教皇陛下自ら来てな。「民がご迷惑をお掛けして申し訳ありません。是非ともお詫びの品を受け取って頂ければと。」とか言って異常な量のお詫びを押し付けられそうになってな。」

『‥‥‥』

「だから俺達全員で「こんなに貰わなくてもマリンに愚痴ったりしない。滞在中ほっといてくれたらそれだけでいい。だからこのお詫びの品は全部いらない。持って帰ってくれ。」ってつき返した。」

「すると、教皇陛下から「天使殿、教国に来てくださいますか‥‥?」って聞かれてな。」

「俺が「来年、修学旅行で来なくても卒業したら世界を回るって言ってたから、必ず一回は来るはずだ。」って答えといた。」

「‥‥ベネトさん、クルト先輩、他の先輩方も。‥‥なんかすみません。」

「気にするな。マリンは悪くないんだからな。‥‥周りが異常なんだよ。」

「そうだぞ?‥‥それに、そもそもこの修学旅行を提案してくれたのがマリン嬢だ。教国も異常だったのは最初だけで、あとはほっといてくれたからな。翌日以降は普通に楽しめたし、学ぶこともあった。総じてマリン嬢には感謝の方が大きい。」

「!!‥‥それなら良かったです。」


と、話が一段落したところで。


「ところで、マリン。俺達がいない間、何もなかったか?」

「うん。何事もなく、平和だったよ。‥‥私としては先輩達がいないのが不思議な気分だっただけ。」

「自分が会長席に座ってることとか?」

「うん。そう。‥‥姉様やアクア兄様の時と同じでしばらくしたら慣れるかなとは思うけどね。」

「まあ、そうだな。‥‥で?副会長。会長代理としては順調か?」

「ふふっ。まあ、それは一応ね。」

「ならいい。‥‥来年度、しっかりやれよ。マリン。」

「はぁい。」

「‥‥‥あ。学園祭、楽しみにしてるな。」

『え?』


私の友人達以外は学園祭の話を知らないはずだが、とりあえず決まってもないのでスルーしてベネトさんに答えた。


「ふふっ。任せて!!やるとしても夏休み明けの‥‥剣術・魔法大会の後とかかな~って今のところ思ってる。」

「まあ、その辺りだろうな。‥‥殿下、シリウス達も。来年度もマリンの部下だからな。頑張れよ?」

『‥‥‥』


これには在校生全員が苦笑い。


「皇太子と王太子を使うなんて学生だからこそだよね~。」

「「‥‥‥」」

「惜しかったわね~?レグルス。私を抜ければ生徒会長になれたのにね~?」

「そ、そうだな‥‥」


ここからは和気あいあいとした話に変わり、私は手を動かしつつ、時々話に加わるのだった。



卒業式の数日前。

同じく生徒会室。


「マリン、リジア。シリウス達も。今日、帰る前に私の屋敷に来てくれないか?」

『え?』

「レグルスの屋敷?なにかあったの?」

「あった‥‥というよりあるはず‥‥ってところだな。」


とレグルスが苦笑いで溢すと、シリウスとリオトはピンと来たのか‥‥


「ま、まさかレグルス‥‥」

「ほ、本当にいらしたのですか‥‥?」

「ああ‥‥」

「「‥‥‥」」

「? なに?」

「マリン。行けば分かる。‥‥レグルス。俺達も行くよ。」

「ああ。」

『?』


ということで業務をきっちり終わらせてから友人一同で馬車に向かうと。


「あ。ベネトさん。」

「よ!マリン。みんなも。‥‥殿下、話したか?」

「ああ。みんな来てくれるって。」

「そうか。」

「ベネトさん、なにかあったの?」

「ああ。‥‥来てくれたら分かる。」

『??』


そして全員でレグルスとベネトさんが住む屋敷に向かった。

そのまま応接室までついて行くと、そこには4人いた。

その内の一人を見て、私は苛立ちを感じたのだった。


『‥‥‥』

「‥‥マリン。すまん。」

「ごめん、マリン。」

「‥‥父様とアクア兄様は巻き込まれただけでしょうからいいです。‥‥が。」


私は2人が謝る原因をじとんと見ながら、もう一人に声を掛けた。


「元帥様はまだ分かります。もうすぐベネトさんの卒業ですし、式に合わせていらしたんだと思います。」

「え、ええ。そうです。」


そしてようやく原因に言及する。


「皇帝陛下は何故いらっしゃるのでしょうか?」

「え?俺も卒業式を見ようかと。」

「はあ?」


自分でもびっくりするほど低い声が出た。

それに大半がビクッと肩を揺らした。

陛下はけろっとしたままもう一度言った。


「だから、俺も卒業式を見に来た。」

「‥‥父様、元帥様、レグルス。一旦敬語なくしていいでしょうか?」

「構わん。」「「ど、どうぞ。」」

「ありがとうございます。‥‥皇帝、自分の立場考えろって何度も言ったよね?あと、こうして私を呼びつけたってことは街を歩きたいとかぬかすんじゃないでしょうね?」

「お。よく分かったな。さすがマリン。」

「はあ?‥‥無理。」

「え?」

「私は学生って言ってんでしょ?卒業式の前も後も普通に授業あるっての。同じ学園に通ってたくせに忘れた?」

「ああ~‥‥でも」

「休日の私の時間を取る気?ただでさえ雪奈姉の日記の翻訳に時間取られてるのに、まだ取る気?」

『‥‥‥』

「レグルスの卒業は来年なんだから、来年来ればいいものを

‥‥もう少し考えて行動してよ。本当に皇帝かと疑いたくなるわ!」

『‥‥‥』


最後だけ吐き捨てる様に言って差し上げた。


「父様と兄様まで巻き込んで‥‥陛下が動くだけで護衛の兵士さん達も増やさないとならないだろうし。‥‥宰相様、いつか心労で倒れるか、頭禿げるかもね。」

『‥‥‥』

「陛下。そっちは軽い気持ちで来たかもしれないけど、いい加減、周りの迷惑を考えて。」

「‥‥じゃあ、街歩きはできないと。」

「はあ?当たり前でしょ?皇帝が王都の街をふらっと歩くもんじゃない。」

「でも、剣術・魔法大会の時にマリンが貸してくれた魔道具があれば」

「貸・さ・な・い。」

「‥‥折角王国に堂々と来たんだぞ?久しぶりに歩き周りたかったんだが‥‥」

「知るか。そっちが勝手に来たんでしょ?‥‥あ。国王陛下に言って学園休ませてまで案内しろとかしたら、今度の夏休み、招待されても帝国に行かないから。」

『え!?』

「当然、剣術・魔法大会で見せた魔法も教えない。」

「え~‥‥」

「勝手に来といてなに?剣術・魔法大会で見せた魔法は来年レグルスが帰って来てから教わったら?‥‥ぷっ。息子に魔法を教えてもらうとか。そうなったら面白そうだからこっそり見に行こうかな‥‥」

『‥‥‥』


私と陛下しか話してなかったが、最後に駄目押しで目が笑ってない笑顔で言って差し上げた。


「私に言えば何でも叶えてもらえると思ってたなら甘いわ!仮に実力行使で言うこと聞かせようとしても、ここにいる全員で掛かっても無理って分かってるでしょう?ふふっ。だから諦めなさい?皇・帝。」


全員が唖然としていたが、言いたいことを言ってスッキリした私は踵を返して扉に向かって歩き出した。


「さて、父様、兄様。帰りましょう?ここにいたら陛下にまた利用されますよ?」

「「え?」」

「あ、ああ。そうだな。」

「リジアとシリウス達も。」

『え?』

「そ、そうね。」

「父上に伝言頼まれる前にってことだな。」

「そういうこと。‥‥レグルス、また明日ね~。」

「え?あ、ああ。」


そうしてレグルスが連れてきた全員とラルク、アクアがあっという間に応接室を出ていったあと、ハッとしたようにベネトも見送りをするべく応接室を出た。


「「「‥‥‥」」」

「残念でしたね、父上。」

「見事に負けましたね、兄さん。」

「ふっ。まあ、一旦はな。」

「「‥‥‥」」

「父上‥‥?」

「はぁ‥‥全く、兄さんは‥‥。殿下。皇帝が来るんです。当然、国王陛下にもお伝えしているのですよ。」

「あ‥‥ですよね‥‥」


数分後、ベネトが応接室に戻ってきた。


「マリン達、それぞれ帰って行きましたよ。」


と言ったあと、苦笑いのレグルスを見て‥‥


「殿下?どうした?」

「いや‥‥マリンに申し訳ないな‥‥と。」

「でもバッサリ断っ‥‥‥ああ‥‥国王陛下が知らないはずないか‥‥」

「ああ。‥‥父上がマリンに氷像にされないことを祈るばかりだな。」

「そうだな‥‥」

「「え!?」」


◇◇◇◇◇


そして、お隣の辺境伯家。


夕食時に食堂に集まり、食後にラルクとアクアから話を聞いていた。


「‥‥決定事項の様ですね‥‥」

「ああ。元々元帥殿は来る予定だったんだ。国王陛下から「ベネトの卒業式に来たらどうだ?」と招待されていたらしい。ただ‥‥簡潔に言うと「ベネトの卒業式に俺も行くことにしたからよろしく。」‥‥といった感じの書簡が突然届いてな。」

「いや、そんな勝手に決められても‥‥」

「ああ。俺も読んだあと、「またか‥‥またベアルに付き合わされるのか‥‥」と呟いていた。」

「その後俺とフレイ兄様も読ませてもらったんだが‥‥マリン。俺達がまず言った感想、分かるか?」

「‥‥私が怒りそう。‥‥とかですか?父様以外だと、私が一番の被害者ですし。」

「正解だ。‥‥更にな、「同じ書簡を国王陛下にも送ってるから俺を追い返そうとかするなよ?」といった感じのことも書かれていた。」

「‥‥では、国王陛下を通して街歩きさせろと?」

「言われるだろうな‥‥」

『‥‥‥』


「‥‥それをお隣さんは直接、シリウスとリオトは国王陛下にそれぞれ聞いてますよね?」

「確実にな。」

「‥‥氷像にしてやろうかな‥‥」

『え?』

「あ。さっきゲートで強制帰国させたらよかったかな‥‥」

「マリン。残念ながら強制帰国は駄目だ。」

「え?‥‥ああ~王都の検問通ってますもんね‥‥」

「そういうことだ。」

「‥‥‥諦めて休日に案内せざるを得ないと。」

「そうなるんだろうな‥‥」


私と父様の諦め顔に苦笑いを浮かべるしかない、アクア兄様とディアナ母様だった。



翌日。

またしても生徒会室。


「「悪い、マリン。」」「すみません、マリン姉様。」

「レグルス、シリウス、リオト。それはもしかしなくても皇帝陛下の話よね?」

「「ああ‥‥」」「はい‥‥」

「私も父様とアクア兄様に聞いた。‥‥シリウス、リオト。もしかして王城に私を連れてこいとか言われた?」

「まあな。」

「‥‥多分、父様やアクア兄様、皇帝陛下と元帥様達も一緒に待ち構えてるんだろうな‥‥」

『‥‥‥』

「で、今日?」

「ああ。いいか?」

「まあ、いいけど‥‥」


ということで業務を終えて、王城のいつもの一室に着きノックして許可を得てから中に入ると。


「やっぱりいた‥‥」


と私が呟くと、友人達は同意を示し、父様達は苦笑い、皇帝陛下だけ楽しそうだった。


「よ!昨日ぶりだな。マリン。」

「‥‥‥‥‥父様、元帥様、レグルス。」

「「ん?」」「はい?」

「この人、氷像にしていいですか?」

「マリン。気持ちは分かるが、王城では駄目だ。だが、荒野に連れて行くならちょっとぐらいならいいぞ。」

「ええ。それなら私も異存はないですね。」

「そうですね。‥‥マリン。父上を実力行使で抑えられるのはマリンだけだからな。むしろやってくれ。但し、死なない程度で頼む。」

「分かった。‥‥あとでしっかり氷付けにして差し上げますね?皇帝陛下。」

「‥‥全く嬉しくないんだが‥‥?」

「腹立つって言ってるのに、なんで喜ぶ様なことしないといけないんですか?」

「‥‥‥」


「マリン。そろそろ私も話していいか?」

「はい。すみません、陛下。」

「いや、実際ベアルが悪いから構わん。」

「‥‥味方がいねぇ‥‥」


ボソッと呟いた皇帝陛下に全員で『当然だ』と返したらようやく、楽しそうだったのが苦笑いに変わった。


「さて、マリン。呼んだ理由は言わなくても分かってるみたいだし、早速。‥‥1日だけベアルに付き合ってやってくれ。王都内から出すなよ?出すなら荒野のみだ。あと、闘技場を貸してやるから、最後にベアルを叩きのめしてやれ。」

「!! いいんですか!?」

『え!?』

「ああ。氷像にするならその時にしてくれ。あと、氷像にしたなら呼んでくれ。私も見たい。」

「いいですよ!!その時はゲートでお連れしますね。」

「ああ。」


帝国の皇帝を氷付け。氷像。

本来、国際問題に発展しかねないことなのだが、この場の誰も反対しない。

皇帝の弟も息子も甥も。


その状況に「俺、皇帝だよな‥‥?」と呟き、「マリンと戦えるのは楽しみだが、氷像は嫌だな‥‥」と複雑な気分になるベアルだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ